同一の建物・同一の時刻を舞台に、地下の基礎から最上層の屋上までを「深度」という概念で切り分け、空間がどのように現在の密度を変化させているかを描いたスピンオフです。
基礎層では、時間は経過としてではなく「負荷」として存在し、中層では、人の滞在を前提とした均質な空気の中で、距離が時間の差異を代行する構造が現れます。
階段やエレベーターといった垂直移動の装置は、同時性を引き延ばし、圧縮し、いったん無効化する層として配置され、居住層では、呼吸や心拍と結びついた個別の現在が滞留しています。
最上層に至って、外界との境界は最も薄くなり、夜明け前の光と風が、ほとんど減衰せずに現在へと侵入してきます。
・同一の一秒が、場所によって異なる密度を持つこと
・時間が流れではなく、空間の深度として分配されていること
・建物という構造体が、同時性を立体的に保持していること
最終章では、「同一地点・同一時刻でありながら、異なる深度の現在が重なっている」という状態が、出来事ではなく、明度や圧、風の性質として静かに収束しています。
夜明け直前という、ごく短い一瞬を、建物全体が層ごとに異なる厚みで抱え込んでいます。そんな構造そのものを提示するスピンオフになっています。