スピンオフ①を公開しました。
この話には、人物の名前も、出来事としての転換点もほとんどありません。
描かれているのは、夜が終わる前に、すでに少しずつ組み替えられている世界の状態です。
気圧、温度、音、光、どれも劇的には変わらないけれど、確実に同じではいられなくなっていきます。
その「変わり始めている最中」だけを、できるだけ平坦な視線で辿っています。
本編で描かれてきた誰かの夜と、このスピンオフで描かれる都市全体の夜は、直接には交わりません。
同じ時間の層を、同じ速度で通過しています。
何も起こらない、と感じられるかもしれません。
ただ、その「起こらなさ」そのものが、次の時間を準備している状態でもあります。
出来事の手前、名づけの手前、朝と呼ばれる前の、まだ均一な明るさの中で、世界が同じ夜を別の場所で歩いています。
そんな感覚が残れば、この話は意図した位置にあります。
本編の夜とは少し違う高さから、確かに同じ夜として、読んでいただけたら嬉しいです。