「もうすぐ七夕……か」
オレンジ色の歯科検診通知を
長方形へ———
「久しぶりに……」
筆ペンを手に取る。
わずかな墨の香に、海馬が半紙のように滑る———
(あぁ……そういえば……)
……ルカと、
出会ったばかりの頃———
「君は———『さんずい』もまともに書けないのかッ!」
澱みない、漆黒ヴォイスに右手が震える。
人差し指で、
「さ、さんずいって……この点々みてーなやつか?」
「ふん、君のその変体少女文字には辟易とする……」
(変態少女!?)
「うむ、こうなったらやむを得ない」
「ま、まさか!あんた……美文字も注入できんの!?」
私の心は鴇羽色の波状飛行———
「はん?君は……」
「やはり頭がファンタジーに蝕まれている」
「ええええ」
声帯がダイナミックソアリング———
「運筆は練習あるのみだ 私が教える」
この日から、
書道調教が始まった———
「何度言えば分かる!!等間隔だ!余白の美だ!」
「ひいいいい」
「はねる前のタメが重要だと言ってるだろッ」
(こんなの全然———ためになんねぇぇぇ!)
<数ヶ月後>
「ル、ルカ 書けたよ……」
半紙を見せつける。
「うむ、軸がブレている やり直せ」
(がーん)
墨の香を飲み込み、
「んなこと言ったて!!あんただって字がミミズじゃん」
濡羽色のハイハット!
「はん?……これは筆記体だ それと!!」
ルカの顔面がクラッシュシンバル。
「『あんた』は看過できない!受け取れ———Sloop Script Bold One」
「ひえええええ!」
———やっぱり注入《インストール》できんじゃねーかぁぁぁ!!
「......アンナよ」
声にハッとする。
「何をしている?まさか……今更、神頼みか」
「ち、違うよ!これは———」
「決意表明!!」
電
撃
の
一
番
星
———書道
これだけは、
血と知の契約ではない。
血の滲む
努力の結果だ———
……たぶんね。
