絵はイメルダ=ローレ=スプロット。
浮遊大陸ティルナノグで出るはずだった魔女っぽい賢者。でも予定変更してディアドコイ戦争編に移ったため、まだ出て来てないという。
『レプティリアンとの過去の遭遇』
「おいおい! レプティリアンの支配が気に入らないからって一撃で星滅ぼすことないだろ! それ卑怯! それ卑怯! 神より強い強さを持つの卑怯! さっきから電磁波兵器で頭ハッキングしようとしてるのにできないのも卑怯! 霊波動卑怯! 俺様の攻撃防ぐの卑怯! ノーガードで洗脳攻撃食らってくれないの卑怯! 人間が俺より強いの摂理がおかしい! 人間はとろけたチーズみたいに俺たちが力込めたら絶叫して裂けて死んでくれないと摂理がおかしい!」
「…………摂理ときましたか。こりゃあの霊気量雑魚のルシファー並の傲慢だな。まだルシファーはバチカンと南極を結ぶ地下トンネルで反復横跳びしているのか?」
火明星に帰ろうとしたミハエルだが足を止める。いや霊波動で飛んでるから足は動かしてはいないが。
レプティリアンとその配下であろう人間が道をふさいでいた。
が、力でどうこうしようという雰囲気ではない。地球を増えすぎたレプティリアンごと消し去ろうとするミハエル、フィオラ、サリサに泣き落としで止めようという雰囲気が言わずと知れた。
「卑怯で話をするならてめえらが一番卑怯だろ! 死んだ後の行き先まで操りやがって。輪廻転生まで操作してイントロン目覚めないよう細工して苦痛の人生赤ちゃんから何度も何回も送らせるほうが卑怯じゃないのか! 人間の染色体48あったのを46に減らして。お前らレプティリアンが。80万年前に。しかもお前らの戦争って、支配者層が自国民に対してしかけてるじゃないか。スローガンだけとってつけたものでさ。戦争の目的は領土の征服とかじゃなく支配構造を保つことに重視されている。お前らの戦争というのは国家の犯罪であり、国家が国民に人殺しを強制させるものだ。だから、まず糾弾されるべきは、お前らレプティリアンとレプが操っている時の権力者だ。で兵士として使えそうなものは異世界転生でムーンショットでルシファー遺伝子分け与えて他の星侵略だ。太陽系じゃない火明星《ほあかりぼし》まで来たぞ迷惑な! ま、その迷惑のおかげで地球攻撃しようって気が起こったんだがな。悪魔に占領しつくされた星。もう地球人では逆転無理だろうからトカゲ星人はわたしが殺す! 核ミサイルくらい霊気で防げるし、放射能は霊気を貫通できない。呪禁《じゅごん》で防げる。輪廻した人は、一定数は戦争で体ぐちゃぐちゃにはじけ飛んで死ぬし! そんなに人間の遺伝子のイントロン覚醒するの怖いか。イントロン目覚めれば地球人だってわたしくらいになれるもんな」
レプティリアンにはきつい態度で挑むミハエル。いつもの穏やかな態度は鳴りを潜めている。
「怖いに決まってんだろ! アンタほどにはならないと思うが…………大天使ミカエル。地球人全員が怒って1撃で地球エネルギー波で破壊って可能性もあるんだから」
「だからってミノタウロスの皿に人間放り出して味わうこたぁあねぇだろ。
あとわたしそれ嫌いなのにわたしを旧約聖書の登場人物と混ぜたな。聖書嫌いだっつーに。お前は殺すぞ。キリスト教では、魂は存在しても生まれ変わりは拒否している。ここ怪しいんだよな。なぜ隠す? わたしはただのおっぱい大好き貴族だ」
「いや、すみませんて! でもあんたその霊気……いやすみません! もういわないっす! でもうまいこと言うねえ。ミノタウロスの皿って」
ミハエルにパーに開いた左手を向けられて素早く謝るレプティリアン。
「ミカエルさま! どうか落ち着いてください! これは一般の商取引と同じなのです!」
レプティリアンに引っ付いていた人間の霊が口をはさんでくる。デブだ。ウェスト120cmはある。人の苦しみを食べた体つきだ。
「…………人を苦しい人生に追いやって殺して死後の行き先まで操作して何度も地球の人生で苦しめることが? 見知らぬ誰かで苦しみで愉悦部するのが? 商取引? どこが? あぁ!?」
「落ち着いて聞いてください! もう国家はないんです! バカをだまくらかす用に一応日本とかわけてあるだけで、国家の意味なんてないんです。地球はレプティリアンの統一世界帝国なのです、地球は!! 第三次世界大戦でスピーチもしました! もうレプティリアンの天国だと!」
「…………」
ミハエルはゴミを見るような目でそのデブを睨み続ける。左手にエネルギー波を溜めながら。
「手を結んで何が悪いんですか! 正義とかやさしさとか全然腹膨れませんよ! スマイル0ドル! スマイル0ドル! 心優しいのが何ドルになるというのです! この世は奪いあいでしょう! どんなきれいごとを言ってもそれが真実! レプティリアンに協力すればちゃんと見返りもくれるんですよ! 漫画だって絵のうまい奴差し置いてデビューさせてくれる! 芸能界だって悪魔のサインした瞬間からプッシュしてくれる! みんなそうしてデビューしてるんだ! 悪魔と契約のサインしてメジャーになってるんだ! 収入だって増える! きつきつの収入であえいでるの、バカな真面目野郎だけだ! こんなに生活を豊かにしてくれる悪魔を忌み嫌い聖なる何かなんてないのにそれを求めて清廉潔白気取ってる頭のおかしいアホ!」
「ふっ。それ最後にレプティリアンがお前の魂食べるけどな。27CLUB」
「そんなまさか!」
「悪魔を忌み嫌い聖なる何かなんてないのにそれを求めて清廉潔白気取ってる頭のおかしいアホ! ってわたしなんだけど。死にたいの? 魂の状態で死んだらどうなるか教えてあげようか。霊波動だからね。魂だからすり抜けられるなんて思わない方がいい」
「…………」
レプティリアンは無言だ。デブは表情が凍りついている。
「誰だって楽にくらしたい! それは分かっていただけるでしょう! 寄らば大樹の陰! 女なら枕だってするでしょう! 俺が女なら贅沢な暮らしのためにしていた!」
「他人を蹴落として出世を掴む。そんな楽の掴み方、そんな場面もあったらしいな日本で。今そいつら地獄だが。わたしが黒竜光波で地獄に送ったんだが。今。ここで。自分さえよければいい! 人はそれを悪魔の心と呼ぶんだよ! 悪魔は契約を出し抜ける瞬間を狙っているもんなあ! なあトカゲ! 自主的に、いや誘導してでもYES3回いわせればお前の勝ちだもんなあ!
3回! YES!」
ミハエルがレプティリアンに勢いよく言う。
ミハエルが右手で印を結ぶ。それが合図だった。
ドォォォォオオオォォォォン!
ドォォオオオオオォォォォン!
「二人とも、ナーイス!」
とミハエルがレプティリアンとデブの後ろに回り込んでいた2人に叫ぶ。
サリサがデブを魂ごと殺し。
フィオラがレプティリアンの魂をエネルギー波で消し去った。
「あなたが囮として優秀だったのよ」
サリサがホワイトライガーの耳をピクンピクンさせつつ、微笑みをミハエルに返す。
「かっこよかったよ」
フィオラが黒竜のしっぽをゆらゆらふりつつ、ミハエルを褒める。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「……という感じで、レプティリアンは最後まで往生際が悪かったな」
現在に戻って、ミハエルが苦笑いを浮かべた。
「往生際が悪いどころじゃないわよ」
フィオラが翼をパタパタと動かしながら答えた。
「『人間はとろけたチーズみたいに俺たちが力込めたら絶叫して裂けて死んでくれないと摂理がおかしい』って何よ、摂理って」
「摂理ですか」
エウメネスが苦笑いした。
「随分と都合のいい摂理だねえ」
「都合がいいどころの話じゃない」
サリサがホワイトライガーの耳を不機嫌そうに動かした。
「自分たちが優位に立っているのが当たり前だと思ってる」
「傲慢の極みだな」
ヌアザが銀の腕を組んだ。
「我らも神として多少の傲慢さはあるが、あそこまでではない」
「あそこまでの傲慢さは見たことがない」
トトメス三世が感嘆した。
「エジプトの神々でもあれほどではありませんでした」
『確かに酷いな』
ミドガルズオルムが呆れた声を出した。
『自分の都合で摂理を決めつけるとは』
「でもあの協力者の人間も酷かったな」
オリュンピアスが顔をしかめた。
「『正義とかやさしさとか全然腹膨れませんよ』って」
「唯物論の極みだね」
エウメネスが羊皮紙に何か書き込みながら言った。
「精神的な価値を一切認めない」
「認めないどころか」
天馬蒼依が憤慨した。
「バカにしてたじゃない!『清廉潔白気取ってる頭のおかしいアホ』って」
「ああいうヤツがいるから」
ヘラクレスが重々しく言った。
「悪が蔓延るのかもしれない」
「悪への加担者だからな」
ミハエルが答えた。
「レプティリアンが直接手を下さなくても、そういう人間が勝手に悪を広めてくれる」
「勝手に悪を広める……」
ユーナが暗い表情を浮かべた。
「恐ろしい話ですね」
「恐ろしいけれど現実よ」
フィオラが翼をそっと畳んだ。
「利益のためなら魂でも売る人間は確実にいる」
「魂を売る人間」
ブラックヴァルキリー・カーラが翼をひらめかせた。
「私もヴァルキリー時代に何度も見てきた」
「どのような?」
ガートルード=キャボットが興味を示した。
「戦場で仲間を裏切って敵に寝返る兵士」
カーラが説明した。
「金や地位と引き換えに」
「仲間を裏切って……」
アン=ローレンが顔をしかめた。
「それは確かに魂を売る行為ですね」
「でもあの協力者の言い分も」
プトレマイオスが考え込んだ。
「ある意味では理解できなくもない」
「理解できる?」
サリサが鋭い視線を向けた。
「貧しい生活から抜け出したいという気持ちは」
プトレマイオスが慎重に答えた。
「人間として自然なものでしょう」
「そりゃあ、自然といえばそうだけれど」
ミハエルが厳しい口調で言った。
「他人を犠牲にしてまで自分だけが豊かになろうとするのは感じ悪いっしょー」
「確かにそうですね」
プトレマイオスが頷いた。
「手段を選ばないのは問題です」
「手段を選ばない……」
ナルメルが考え込んだ。
「政治の世界でもよく見る光景ですね」
「政治の世界では特に多いかもしれない」
カッサンドロスが同意した。
「権力欲がそうさせるのでしょう」
「でもあの協力者は」
天馬蒼依が憤慨した口調で言った。
「『女なら枕だってするでしょう!』って、女性をバカにしてるよ!」
「確かに酷い発言だ」
ヘラクレスが眉をひそめた。
「女性に対する敬意が全くない」
「敬意がないどころか」
空夢風音が抗議した。
「商品扱いしている」
「商品扱い……」
東雲波澄が悲しそうな表情を浮かべた。
「そういう考えの人がいるから、女が苦しむのね」
「まぁなー」
ミハエルが頷いた。
「だからこそ、あんなデブはやせさせねーとなー。殺したけど。サリサとフィオラが」
「根絶」
水鏡冬華が刀に手をかけながら言った。
「確かに必要かもしれませんね」
「でも根絶するのは難しいよー」
桜雪さゆが困ったような顔をした。
「そういう考えの人は意外と多いもん」
「多いからこそ」
フィオラが厳しい表情を浮かべた。
「システム全体を変える必要がある」
「システム全体を変える」
エウメネスが考え込んだ。
「それは革命に近い話になりますね」
「革命が必要なら革命をするまでさ」
ミハエルが力強く言った。
「腐ったシステムを温存する理由はない」
「でも革命は多くの犠牲を伴います」
オリュンピアスが心配そうに言った。
「犠牲を恐れていたら何も変わらない」
サリサが断言した。
「現状維持の方がもっと多くの犠牲者を出すわよ」
「現状維持の犠牲者……」
ユーナが考え込んだ。
「確かにそうかもしれませんね」
『興味深い議論だな』
ヨルムンガンドが感心した。
『正義を実現するための手段について』
「手段について」
ヘラクレスが重々しく言った。
「どこまで許されるのか、難しい問題です」
「難しいけれど」
ミハエルが答えた。
「答えは出さなければならない」
「答えを出す……」
天馬蒼依が真剣な表情を浮かべた。
「どうやって?」
「まず事実を正確に把握することだ」
ミハエルが説明した。
「レプティリアンがどれだけ人類を苦しめてきたかを」
「事実の把握」
エウメネスが頷いた。
「それは確かに重要ですね」
「そして」
フィオラが続けた。
「その事実を基に判断を下す」
