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木花咲耶姫の視点

絵はサリサ。一番健康的でいやらしさ、エロさがない健康的な子。
プレビュー↓


『木花咲耶姫の視点』
「あなたたち、ごっこ遊びですよ? ヒーローごっこ」
 木花咲耶姫の言葉は冷静だったが、その内容は辛辣だった。
「なぜヒーローなのにガザの戦乱を政治家をヒーローの力で皆殺しにして戦争自体を止めなかったのですか? ガザの戦乱で子どもたちは泣いています。ケガもして」
 茶髪の少年は言葉に詰まった。
「それは……そんなことをしたら……独裁じゃねぇか!!……俺は独裁者になりてえんじゃねえ、ヒーローになるんだ!!」
「なぜ操られている政治家を皆殺しにしない?」
 木花咲耶姫は容赦なく続けた。
「なぜ移民政策をヒーローの力で皆殺しにしてでも止めない?」
「そんなことをしたら……」
 黒髪の少女が震え声で答えた。
「私たちが悪になってしまいます」
「悪になってしまう?」
 木花咲耶姫が首をかしげた。
「人々を苦しめる政策を放置する方が悪ではありませんか?」
「でも法律が……」
 ベージュ髪の少女が言いかけた。
「法律?」
 木花咲耶姫の声がさらに冷たくなった。
「その法律を作ったのは誰ですか? 悪が法律を作ったら、あなたたちヒーローは操り放題ですね? コロコロコロ……」
 コロコロと上品な笑いを漏らす十二単の木花咲耶姫。
 ヒーローたちは答えられなかった。
「あなたたちは結局、現状維持を望んでいるだけです」
 木花咲耶姫が断言した。
「本当に人々を救う気があるなら、システム自体を変えるべき」
「システムを変えるって……」
 緑髪の青年が困惑した。
「それはもう革命では……」
「革命の何が悪いのですか? カダフィという良い人もいましたが……」
 木花咲耶姫が反問した。
「腐った体制を維持することの方がよほど罪深い!」
「待てよ! カダフィってTVで大悪魔って言われてたぜ! いい人!? 寝ぼけてんじゃねえ!」
「ふっ、お笑いですね」
「なにがだ! 十二単野郎!」
「マスコミに洗脳されてるから笑ってあげたのですよ」
「あと人間じゃないから殺してもいいって思ってそうな顔ですね?」
 木花咲耶姫の声がさらに冷たくなった。
「随分と都合のいい理屈ですね」
「でも怪物たちは人を食べるんです!」
 ベージュ髪の少女が弁解した。
「人を食べる存在は殺してもいい、でも熊猟銃で仕留めたらうるさく騒ぎますねえ。ヒーローはあれどうにかしないんですか?」
 木花咲耶姫が指摘した。
「では、人を苦しめる政治家はどうでしょうか?」
「政治家は……」
 緑髪の青年が答えに窮した。
「政治家は人間だから殺してはいけない」
 木花咲耶姫が皮肉を込めて言った。
「つまり、形が人間に似ていれば何をしても許される免罪符、と」


(中略)


「マスコミが『独裁者』と呼ぶ人物が」
 木花咲耶姫が皮肉を込めて言った。
「実は国民から最も愛されていた、ということも珍しくありません」
「独裁者って言葉も疑わしいのか……」
 茶髪の少年が呟いた。
「言葉の定義を操作して」
 木花咲耶姫が説明した。
「印象を操作するのも彼らの手法です。これは移民じゃないよー、技能実習生だよー、季節労働者だよー、だから移民じゃないって訳がわからないですよ?
 移民じゃないよと言いながら移民を受け入れる、アホな日本国民はこんなので騙せちゃう。詭弁
 人材不足への対応の答えだけが一人歩きして大日本帝国とやってる過ちは変わらん。日本は。
 外国の人も受け入れるなら受け入れるで、
外国人就労者を雇っている企業の実態監視や密入国者を受け入れていないかのチェック、
雇った人員の管理とそのものたちが『なにかをやらかしたとき』の罰則、
そして企業の責任のとり方に関する法律。
 このへんの整備が必須です。
 しかし移民党や経団連はこういう悪徳経営者の味方だからやらない、ココが最大の問題なのです。
 で、帰るはずの奴らが帰らなくなるのも欧米の移民問題。現状で失踪者大量に出してるのに。
 政治家の「やってること」だけを見て判断しましょうね。言葉は聞かないようにウソだらけだから」
「印象操作……」
 黒髪の少女が暗い顔をした。
「本当のヒーローになりたいなら」
 木花咲耶姫が最後に言った。
「表面的な『悪』ではなく、根本的な『悪』と戦ってください」
「根本的な悪……」
 ヒーローたちが重々しく呟いた。
「そして覚悟してください」
 木花咲耶姫の声が厳しくなった。
「本当の敵と戦うということは、今までとは比較にならないほど敵が誰かを判断するのが困難だということを」
「困難……」
 ベージュ髪の少女が震えた。
「でも」
 緑髪の青年が決意を込めて言った。
「それが本当の正義なら……」
「覚悟はできた」
 茶髪の少年も拳を握った。
「本当の悪と戦ってやる」
「本当に?」
 木花咲耶姫が確認した。
「マスコミに叩かれることも覚悟していますか?」
「マスコミに叩かれる?」
 黒髪の少女が不安そうに聞いた。
「本当の正義を行えば」
 木花咲耶姫が説明した。
「必ずマスコミ全体から攻撃されます。カダフィのように」
「なぜだ?」
 茶髪の少年が疑問を投げかけた。
「マスコミも『システム』の一部だからです。TV局自体が汚いものの詰め合わせって思い知っているのではありませんか?
 ヒーローは根深い芸能界の性被害は見てみぬふりですか?
 それでヒーローなのですか?
 テレビ業界全体のコンプライアンス体制の問題として、社会的な批判と注目を集めているのにスルーですか?」
 木花咲耶姫が答えた。
「マスコミも……」
 ヒーローたちが絶望的な表情を浮かべた。
「絶望することはありません」
 木花咲耶姫が励ました。
「真実は必ず明らかになります」
「真実は明らかになる……」
 緑髪の青年が希望を込めて言った。
「ただし」
 木花咲耶姫が警告した。
「時間がかかることも覚悟してください」
「時間がかかっても」
 茶髪の少年が力強く言った。
「やってやる」
「その意気です」
 木花咲耶姫が微笑んだ。
「でも、今回の地球破壊については……」
「理解した」
 黒髪の少女が静かに言った。
「私たちが知らなかった真実があったのね」
「知らなかったでは済まされない」
 ベージュ髪の少女が自分を戒めるように言った。
「でも学んだ」
 緑髪の青年が前向きに言った。
「これからは違う」
「そうですね」
 木花咲耶姫が頷いた。
「学ぶことができれば、まだ希望はあります」
 そして木花咲耶姫は時間を燃やす炎を集束させた。
「でも、地球という汚れた星への制裁は必要です」
 木花咲耶姫が冷酷に宣告した。
「時間ごと燃やします」
「あなたたちは症状だけを治療して、病気の原因を放置している医者のようなものです」
 木花咲耶姫の比喩は鋭かった。
「世界は善意だけでは動きません」
 木花咲耶姫が続けた。
「時には残酷な決断が必要になる」
「残酷な決断を下すくらいなら」
 緑髪の青年が静かに言った。
「僕たちはヒーローを辞めた方がいいのかもしれません」
 その言葉に、他のヒーローたちも考え込んだ。
「そうかもしれませんね」
 木花咲耶姫が同意した。
「中途半端なヒーローより、普通の人として誠実に生きる方が価値があります」


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


「なるほど」
 エウメネスが感心した。
「確かに根本的な解決になっていないね、ヒーローは」
「そういうことだ」
 フィオラが頷いた。
「対症療法でしかない」
「でもシステム自体を変えるのは難しいでしょう」
 ユーナが言った。
「難しいからこそ」
 ミハエルが答えた。
「我々は極端な手段を選んだのかもしれない」
「極端な手段」
 ナルメルが考え込んだ。
「確かに、時には必要なのかもしれませんね」
『興味深い議論だな』
 ヨルムンガンドが感心した声を出した。
『正義の定義について考えさせられる』
「正義の定義」
 ヘラクレスが呟いた。
「私も十二の功業を成し遂げたが、今思えば表面的だったかもしれない」
「表面的?」
 アン・ローレンが驚いた。
「怪物を倒すことに集中して」
 ヘラクレスが説明した。
「なぜその怪物が生まれたのか、深く考えなかった」



「……という感じで、木花咲耶姫はヒーローたちに現実を教えたわけだ」
 ミハエルが現在に戻って説明を終えた。
「凄まじい議論だったな」
 ヌアザが感嘆した。
「木花咲耶姫の博識には驚かされる」
「さくやひめ様は日本の神だから」
 サリサが説明した。
「人間世界の政治にも詳しいのよ」
「政治に詳しい神……」
 エウメネスが興味深そうに呟いた。
「興味深いですね」
「木花咲耶姫の言う通りだわ」
 フィオラが頷いた。
「中途半端な善意ほど害になるものはない」
「中途半端な善意」
 ヌアザが考え込んだ。
「確かに、我らも同じような経験がある」
「どのような?」
 エウメネスが興味を示した。
「ミレー族が来た時」
 ヌアザが答えた。
「我らは『寛容』を示そうとして、結果的に滅ぼされた」
「寛容を示そうとして?」
 オリュンピアスが首をかしげた。
「三度の要求に応じてしまったのだ」
 ヌアザが苦々しい顔をした。
「神としての威厳を保つべきだった」


「でもヒーローたちはどうなったの?」
 天馬蒼依が心配そうに聞いた。
「多分生きてるわよ、あの後も」
 フィオラが答えた。
「真実を知って、考えを改めてた」
「考えを改めた……」
 カーラが翼をそっと動かした。
「それは成長と言えるな」
「でも時間ごと燃やされたのでしょう?」
 ユーナが確認した。
「ああ、木花咲耶姫の判断でな」
 ミハエルが頷いた。
「地球という『システム』ごと燃やすことにした」
「システムごと消去……」
 オリュンピアスが考え込んだ。
「確かに根本的な解決法ですね」
『興味深い話だった』
 ヨルムンガンドが感心した。
『正義と悪の境界が曖昧になる話だな』
「境界が曖昧」
 プトレマイオスが頷いた。
「現実はそういうものかもしれませんね」
「でも」
 ヘラクレスが口を開いた。
「真実を求める姿勢は大切だということが分かりました」

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