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なぜ殺す!?なぜ戦う!?なぜそっとしておいてくれないんだ!? プレビュー

絵は狸にいいように遊ばれて激おこぷんぷんまるな空夢風音。

プレビュー↓



「君は地球からの転生者ではないのだろう。ならば、この星の理くらいは理解しているはずだが……?」
ミハエルは、巨人の放つ鉄の雨を浴びながら、心底不思議そうに首をかしげた。


「呪禁師は、思った所に攻撃を防ぐ陣を構成する。水鏡冬華や母 竜神闇霎、木花咲耶姫の場合は『いろはにほへとちりぬるを』の文字が一つずつ鎖のように螺旋を描き、わたしや、天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊、天津日高日子波限建鵜草葺不合命の場合は『ひふみよいむなやこともちろらね』が一文字ずつ鎖となって身を守る」
ミハエルは、まるで出来の悪い生徒に講義をする教師のような口調で続けた。


「この念の防御は特殊でね。念がこもっていない攻撃は、どれだけ物理的な攻撃力が高かろうが一切通さないのだ。
 つまり、念を込めにくい攻撃手段――要するに、君が今必死に撃っている銃弾や、重火器、果ては核ミサイルですら、この滅功念鎖陣(めっこうねんさじん)の前では完全に無力化される。
 あの忌まわしき戦争でニコラ・テスラの技術が本人の意思じゃなく実用化されたという、星そのものをも斬り裂くプラズマ兵器ですらもだ。
 念がこもっていない限り、呪禁の壁は突破できない。
 逆に言えば、この滅功念鎖陣の前では核ミサイルよりも、怒り狂った生き物の素手の拳の方が遥かに脅威となりうる。念が籠っているからな。
 わかるか? 物理法則を完全に超越した術であるため、呪禁師は物理現象に対しては完全に無敵なのだよ。
 歴史上、原爆の爆心地にいてなお無傷だった人間がいたという記録があるが、その種明かしがこれだ。君たちが信仰する科学とやらは、この星ではあまりに非力だということを、おさらいしてね。
 火明星(ほあかりぼし)では、念の通わぬ攻撃など、児戯に等しい。わたし相手でなくても一般人でも一般動物でもだ。野生動物でも! だから銃や弓はそこまで発達しないんだよ」


 ミハエルは一息つくと、墜落してもなお巨大なバルカンを撃ち続けるアメイモンに向け、再び黒竜光波を放った。ただし、今度はコックピットを狙わず、ただその騒々しい武装だけを沈黙させる。

「なぜ殺す!?なぜ戦う!?なぜそっとしておいてくれないんだ!?」
コックピットから、クリスの絶叫が響き渡る。その悲痛な叫びに、ミハエルの眉が僅かにひそめられた。手のひらを前に向けた。


「なんだか、さっきから妙な違和感があったのだが……君たちアスタルロサでは、ヴァーレンスは悪魔の親玉か何かのように教えられているのか?
 まるで地球における、何でもかんでも日本が悪い、とでも言いたげなあの滑稽な論調にそっくりだ。
 侵略者そっちだろうがアホ! アスタルロサがヴァーレンスに侵略計画立ててるから、わたしが出て来てるんだろうが。
 順序逆。お尻と頭逆にして教えられてるんだぎゃー、アンタラ? いいかげんにしてちょーよ。お尻に顔ついてる異星人かよ。
 ……アスタルロサの教育委員会にだけは、今、心底殺意が湧いた。まずそこから潰すとしようか」

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