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ミケーネ王国はサントハイムみたいに忽然と消えた。

 空夢風音のフィギュア。
 当然ディープフェイク。でも脚、というか太ももこのくらい太い方が男としては安心する。いや、もうちょっと痩せててもいいかな。でもこれくらいの方が病気知らずって感じで安心する。ガリガリの子を見ると心配になる。
 女からしてみれば、痩せなきゃって思うんでしょうけどね。

 題名ですが、ミケーネ王国はサントハイムみたいに忽然と消えた。
 これドラクエ4作った人、大分歴史詳しいぞ?
 と思った。シナリオだから堀井雄二さんか。
 ドラゴンクエスト3もそうだったもんね。中東に位置するアッサラームであのぼったくり商店。ともだち!! あれ実際にエジプト旅行に行ったらああいう目にあうもん。
 ドラクエ6の世界設定は好き。夢のある設定で。
プレビュー↓



「団長、長丁場の会議、大変お疲れ様でした」
 その穏やかな静寂を破ったのは、クロード=ガンヴァレンの落ち着いた声だった。彼の隣には、心配そうな、しかしそれ以上に敬意に満ちた眼差しを向けるサミュエル=ローズが立っている。二人はミハエルの私設騎士団の中でも特に忠誠心厚い部下であり、主君の労をねぎらうために、タイミングを見計らっていたようだった。クロードの青い瞳は真摯な光をたたえ、サミュエルは何度も小さく頷いている。

「ああ、君たちもお疲れ様。ずっと控えていてくれたんだろう」
 ミハエルは彼らに優しく微笑み返すと、手にしていたワイングラスを軽く掲げてみせた。しかし、彼の言葉が終わるか終わらないかのうちに、別の、もっと活力に満ちた声が割り込んできた。

「ミハエルさん! すごーい、政治的な話とかもちゃんとできる人だったんですねー! わたし、全然分からなかったけど、なんかすごかったです!」
 まるで嵐のように現れたのは、ミニ巫女装束がトレードマークの天馬蒼依だった。彼女の後ろには、まるで当然のようにいつもの仲間たちが続いている。純白のヒーラー装備に身を包んだガートルード=キャボット、オレンジ色の服と白いジャケットが印象的な銀髪の魔法剣士アン=ローレン、そして全身を青でコーディネートした魔法使いのユーナ=ショーペンハウアー。いつも騒動を巻き起こす彼女たちハチャメチャ四人組は、今日ばかりは揃いも揃って、感心と驚嘆がごちゃ混ぜになったような尊敬の眼差しでミハエルを見つめていた。蒼依の言葉には一切の裏がなく、彼女が感じたままの、子供のような率直な感動が込められている。
 その素直すぎる賞賛に、ミハエルは一瞬きょとんとした後、面白そうに口の端を吊り上げた。彼はゆっくりと椅子に深く腰掛け、足を組むと、からかうような響きを声に含ませた。
「お前ら……わたしをただの冗談おっぱいパンツ見たい魔神だと思っていたな? まあ、別にそれでもいいんだけどさー」
 ミハエルはそう言ってのんびりと答えると、手中のグラスに残っていた深紅のワインを一口含んだ。古代のファラオや伝説の英雄たちを相手に繰り広げた舌戦の疲れを溶かすかのように、芳醇な香りが彼の口内に広がる。その姿には、公爵としての威厳も、不死身の皇帝としての威圧感もなく、ただ気の置けない仲間たちとの夜を楽しむ、一人の男のくつろいだ空気が漂っていた。会議が終わった後の、寝る前特有の和やかで温かい時間が、ゆっくりと会議室を満たしていくのだった。




「お、会議もう終わりだけどきみたちに尋ねたい事あったんだ」
 ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒがワイングラスを机に置きながら、エウメネスとユリウス・カエサルに向き直った。彼の表情には先ほどまでの和やかさとは違う、何か重要なことを考え抜いてきた者特有の真剣さが宿っていた。
「何だい、ミハエル」
 エウメネスが印章を懐にしまいながら答えた。彼の鋭い目は、ミハエルが単なる雑談ではないことを察していることを示している。
「歴史に関することかな?」
 ユリウス・カエサルもまた、戦略家特有の直感で、これから始まる議論の重要性を感じ取っていた。
 ミハエルは立ち上がり、会議室の窓辺へと歩いた。夜空には無数の星が瞬いており、その光は彼の金髪に神秘的な輝きを与えていた。
「フェニキア人たちは民主主義の生みの親でもあるんだよ」
 その言葉は、まるで爆弾が投下されたかのように会議室の空気を一変させた。
「民主主義の……生みの親?」
 エウメネスが驚きを隠せない声で繰り返した。
「それは一体どういう意味だい?」
 ミハエルは振り返ると、彼らの反応を確認してから話を続けた。
「民主主義のデモクラシーという言葉には、悲しい響きがある。
 この言葉のもとになったギリシア語の『デーモス』という言葉には、元来『別れ』という意味があった」
 トトメス3世が興味深そうに身を乗り出した。
「『別れ』が民主主義を意味するように……?」
「そうだ。なぜ民主主義が、『別れの政治』なのか? なぜ『別れ』という言葉が、民主主義そのものを意味するようになったのか?」
 ミハエルの問いかけに、会議室にいた全員が深い思索に沈んだ。
「一般に、古代ギリシャで人類最初の民主主義が誕生したのは紀元前9世紀頃。でよかったよね? エウメネスくん、シーザーくん」
「ああ、その通りだ」
 エウメネスが頷いた。
「しかし、その誕生の経緯については確かに謎が多い」
 カエサルも同意するように頷く。
「ローマの記録でも、その辺りの詳細は曖昧なものが多い」
「うむ。その誕生の経緯自体が21世紀でもあまりハッキリしない。本当ははっきりしているのかも知れないが、とにかく『あまりはっきりとは』21世紀の学校でも教えられてはいない」
 ミハエルは再び窓の方を見つめた。
「古代ギリシャには暗黒の200年といって歴史に大きな断絶の時期がある。よね? エウメネスくん、シーザーくん」
「確かに」
 エウメネスが考え深げに答えた。
「私が学んだ歴史でも、その時期については資料が極めて少ない」
「それより前の時代の史料は多く残ってる。それより後の時代の史料も多く残ってる。なのに、その間だけはなぜか異常に史料が乏しい」
 ミハエルの指摘に、初代ファラオのナルメルが新しく得た力で作った青い光を見つめながら言った。
「意図的に隠蔽された可能性もあるということか?」
「その通りだ。てかわたしはそう見てる」
 ミハエルが振り返った。
「古代ギリシャが王制から民主制に移行したのは、実はこの暗黒の時期。人類初の民主制がどういう経緯で誕生したのかは、歴史の闇に包まれてる」
 クレオパトラが美しい眉をひそめた。
「私の時代でも、その辺りの記録は曖昧でした。まるで誰かが意図的に消したかのように」
「史料がなぜか『消失』しているこの暗黒時代を過ぎると、それ以前にギリシアを支配していたミケーネ王国という『領域国家』はどこかへ姿を消してしまって、どこからともなく現われた数百の『都市国家』が、いつのまにか、ギリシア全土に成立している」
 プトレマイオスが身震いをした。
「それは……恐ろしい話だ」
「驚くのは、そのほとんどが、民主制だってこと」
 ミハエルの言葉に、会議室内がざわめいた。
 サリサ=アドレット=ティーガーが尻尾を振りながら質問した。
「つまり、一夜にして王制が消えて民主制に変わったということ?」
「そういうことだ。狐に化かされたみたいにな!
 領域国家としてのミケーネが、数百のポリスに『分割』されたのはなぜだ?
 王家の人たちがどこかのお転婆な姫のゲームの王様たちみたいに神隠しにあったように異空間にでも消されたような挙動をしたのは何故だ、いつのまにか民衆たちが支配している異常事態はどうしてなのか? この間、いったいどんな事が起こったのか?」
 エウメネスが慎重に口を開いた。
「まさか……外部からの介入があったということでしょうか?」
「それも考えられる。ひょっとすると民主制というのは、もともと植民地統治の一形態だったのではないか?」
 ミハエルの仮説に、カエサルが戦略家としての鋭い洞察を示した。
「確かに、統一された強固な王権よりも、分裂した多数の都市国家の方が外部から支配しやすい」
「そゆこと」
 ミハエルが頷いた。
「『別れ』の政治。分裂させて統治せよ、という古典的な支配手法だ」
 水鏡冬華が静かに言った。
「日本でも戦国時代、外来勢力が国を分裂させて弱体化を図ろうとした事例があるわよ。幕末…………」
「どう思う? マケドニア一の頭脳のエウメネスくんとローマ帝国第一の頭脳のユリウス=カエサルくん」
 二人の偉大な知識人は、この重大な仮説について深く考え込んだ。
「もしそれが真実なら」
 エウメネスがゆっくりと口を開いた。
「一部の人間が『理想的な政治制度』だと考えてきた民主制も、実は支配のための道具だったということになる」
「恐ろしい洞察だ」
 カエサルが額に手を当てた。
「ローマ共和制も、似たような経緯で成立した可能性がある」
「フェニキア人の商業ネットワークは地中海全域に広がっていた」
 ミハエルが続けた。
「彼らにとって、強固な王権を持つ大国は貿易の障害でしかない。小さく分裂した都市国家群の方が、商売しやすい」
 フィオラ=アマオカミがルビー色の瞳を細めた。
「つまり、『民主主義』という美しい理念の裏に、商業的支配の意図が隠されているということね」
 十二単を着た妖怪雪女の突然変異の桜雪さゆがアイスクリームのスプーンを止めた。
「でも、民主主義って本当に悪いものなの? みんなで決めるのっていいことじゃない?」
「理念そのものは素晴らしく聞こえるから厄介なんだよ」
 ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒが優しく答えた。
「問題は、その理念が悪用される可能性があることだ。『みんなで決める』と言いながら、『実際には特定の勢力が影で操っている』かもしれない。
 ソクラテスが民主主義の結果毒殺されたようにな!」
 オリュンピアスが息子のことを思い出すような表情で言った。
「アレクサンドロスは、そのような分裂した世界を統一しようとしたのかもしれん」
「そうかもしれない」
 エウメネスが印章を握りしめた。
「彼の『世界帝国』の理念は、そうした分裂統治に対する反撃だった可能性が高い」
 東雲波澄が心配そうに言った。
「でも、それなら21世紀の民主主義国家も……?」
「多くがフェニキア系の影響下にある可能性は高い」
 ミハエルが厳しい表情で答えた。
「特に金融、通貨発行権を握られている国々は、表面的には民主主義でも、実質的には彼らの支配下にある」
 ユリウス・カエサルが戦略家としての経験から言った。
「確かに、分裂した議会政治は、統一された意志決定を困難にする。その混乱に乗じて、影の勢力が利益を得ることは容易だ」
 カッサンドロスが隅で震え声で呟いた。
「私が……私がアレクサンドロスを……もしかして、彼らの意図に踊らされていたのか?」
 会議室に重い沈黙が流れた。
 レティチュ=ド=エーロが忍者らしく素早く発言した。
「でも、それがわかったら対策も立てられまーすよ!」
「その通りだ」
 ミハエルが希望を込めて答えた。
「真実を知ることが、対抗の第一歩だ。だからこそ君たちに聞いてみたかった」
 空夢風音が控えめに手を上げた。
「あの、高校出て3年の素人考えですが……本当の意味での民主主義を作ることは可能でしょうか?」
「可能だ」
 ミハエルが力強く答えた。

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