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ナルメル

 絵はブラックヴァルキリー・カーラ。エジプトでお風呂中。今投稿予約してる部分の作中ではどうどうと大浴場でヌードですが、絵でそうしちゃうと1発アウトなのでタオルつけました。
 プレビュー↓



 さて。ナルメル君、お話を始めようか。トレミーちゃん、プトレマイオスちゃん。よく聞いておけよ。
 エネルギー波を引っ込めて夜空の下でミハエルが話す。
 エウメネスが仰天顔でいるのが見える。
 

「社会を破壊するにはどーすればよいか?​
 エジプト統一のファラオなら簡単だろう?」
 ミハエルがトピックを提案する。
「​芸術を醜くする」
 まずミハエルが答える。
「ポルノを無料にする」
 ナルメルが答える。
「神をギャグキャラにする」
 ミハエルが答える。
「食べ物に毒を盛る。アレクサンダー暗殺の時のように」
 ナルメルが答える。
「父親をオプションにする(女尊男卑だな。女だけの島企画みたいな惨状になる)」
 ミハエルが答える。
「政治家だけを意図的に金持ちにする(賄賂ほかほか裏金ぴゅんぴゅん)」
 ナルメルが答える。
「お金を無価値にする(むやみなインフレ)」
 ミハエルが答える。
「男女を競争させる(「いきすぎた」片方の性優遇。男性の就職枠を狭めても女性優遇の結果女が喜んでいる隙に男は飢えて死ぬ。=社会は弱る)」
 ナルメルが答える。
『子どもに親を、先祖を憎ませる』(愛の否定)
 ミハエルが答える。
「さて! エジプトの今の王! プトレマイオスくん! トレミーちゃんは社会をよくするにはどうすればいいと思う?」
 ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒ、ナルメル、みぞおちを抑えたトトメス3世がプトレマイオスを一斉に見る。


 夜のアレクサンドリア宮殿の廃墟から、青い光が静かに消えていった。月明かりが落ち着いた場面を照らす中、ミハエルの怒りの波動が引いていく。壁の破片が床に散乱し、屋根の一部が崩れ落ちて夜空が見える状態になっている。
 プトレマイオスは瓦礫の中に立ちすくみ、三人の圧倒的な存在感に押しつぶされそうになっていた。
 一人は世界を青いエネルギー波一つで消し去ることができる次元間の旅人。二人はエジプトの黎明と絶頂を象徴する伝説的なファラオ。
「社会を……よくする……」
 プトレマイオスの声は乾いた砂のようにかすれていた。
 彼は喉の奥を鳴らし、エジプト総督としての威厳を取り戻そうと努めた。心臓が早鐘を打っている。この瞬間、彼の政治的野心や王としての計算は、より根源的な問いの前に消え去っていた。
「私が思うに……」
 彼は慎重に言葉を選んだ。
「社会を良くするには、まず真実を知ることだ。嘘の上に築かれた支配は、時が経てば必ず崩れる」
 彼の視線はカッサンドロスを一瞬だけ捉えた。アレクサンドロス大王毒殺の真実を知った今、彼の中で新しい思いが芽生えていた。
「そして、法の前の平等こそが、民の信頼を勝ち取る」
 プトレマイオスは力強さを増していく声で続けた。
「富める者も貧しき者も、同じ法の下で裁かれるべきだ」
 ナルメルはわずかに頷き、トトメス3世は苦痛にもかかわらず、尊敬の眼差しをプトレマイオスに向けた。
 エウメネスは心の中で計算していた。この奇妙な問答の目的は何なのか。ミハエルとナルメルの社会崩壊のレシピは恐ろしいほど的確だった。
(その対極にある「良き社会」とは……)
 フィオラ=アマオカミは見つめるだけだった。長い長い時を生きた竜として、彼女は幾度となく文明の興亡を目撃してきた。
 社会を破壊する方法よりも、残酷なのは、それが繰り返し実行されてきた歴史だった。

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