絵はブラックヴァルキリー・カーラ、
ネトゲでよくギルド名でありがちな「猫」「温泉」「宿」の要素を入れて絵にしたらこうなった、という感じです。
鳥と言えば水浴び。
プレビュー↓
今でいうAKB48? そんなようなアイドルがクラテロスです。マケドニア戦士の間で。「クラテロスさんがそっちのチームなら俺寝返る~」とかあったらしいです。
「そして波澄、よく生きていてくれた。おはよ」
ミハエルは、11人の妻の一人、東雲波澄に肩に手を置く。
「はい。やっと合流出来たわ……」
「ま、命の心配はしてなかったけどな。きみ霊気高いし、出雲族で呪禁かなり使える方だし、式神使いでもあるし、きみは。冬華についで呪禁うまいもんなあ。剣も使えるし」
「ちょっとは心配してくれてもいぃーんじゃない?」
東雲波澄は怒った顔でミハエルをねめあげる。
「エウメネス、また会ったな」
クラテロスが話しかける。
「クラテロス……」
「オレはお前普通じゃないって思ってたんだ。お前非番の時にも言ったろ? お前が外で本読んでる時に」
「あぁ、覚えてる。非番で、ぼくが機嫌悪かったときね」
とエウメネス。
会議室の空気が変わった。クラテロスの予想外の登場に、一同の視線が彼に集まる。一度は死んだと思われていた将軍の復活。その事実がもたらす影響を、誰もが計算し始めていた。
エウメネスは心臓が早鐘を打つのを感じた。
(自分と戦ったはずのクラテロスが生きているなんて。しかも敵意を持つ様子もなく、まるで旧友に会ったかのような態度で)
この思いがけない再会が何を意味するのか、彼の頭は急速に計算を始めていた。
「お前さぁ」
クラテロスが椅子に腰を下ろしながら続けた。
「あの時弘法みたいな本を読んでたよな? なんだっけ、ペルシャの」
「プラトンだよ」
エウメネスは引きつった笑みを浮かべた。
「ギリシャの哲学者だ。ペルシャじゃなくて」
「あぁそれそれ」
クラテロスは人差し指を立てて言った。
「あの時オレは思ったんだ。戦場で命懸けで戦ってる最中に、本なんか読んでるやつは普通じゃないって」
東雲波澄はミハエルから離れ、部屋の隅にある水差しから水を注ぎ始めた。彼女の手つきは優雅だが、その動きには緊張感が漂っている。彼女はクラテロスとエウメネスの会話を注意深く聞きながら、何かを探るように二人の表情を観察していた。
「戦場で本を読む暇があったら、戦術の練習をしろってマケドニア人なら言うよな」
エウメネスはクラテロスの真意を探るように言った。
水鏡冬華は警戒心を隠さず、クラテロスを観察していた。彼女の鋭い目が相手の些細な動きも見逃さない。あの戦いで確かにクラテロスは致命傷を負ったはず。それなのに彼がこうして目の前にいる。
(これは時空の歪みの影響なのか、それとも別の力が働いているのか)
「お前、便利だよな」
クラテロスは笑みを浮かべた。
「字が綺麗で、記憶力良くて。アレクサンドロスも気に入ってた。だから、俺もお前の死体偽装作戦、手伝ってやろうと思ってな。
俺はアレクサンダーに嫌われてたけどな。大王のペルシャかぶれ注意しまくったから。フィリッポス2世とも俺仲悪くて出世コースなしになるわで、なんなのかね。これ」
エウメネスの目が驚きで見開かれた。彼の内心は混乱していた。
(いつの間にクラテロスは計画を知っていたのか? 彼は敵なのか味方なのか? それとも別の目的があるのか?)
「何を言ってるんだ?」
エウメネスは警戒を隠さずに尋ねた。
「何のために手伝うんだ?」
桜雪さゆは氷のコマを指先で回しながら、楽しそうに二人の会話を聞いていた。彼女の目は好奇心で輝いている。
「理由?」
クラテロスは肩をすくめた。
「アンティゴノスのあの老いぼれ、俺は昔から気に入らなかったんだよ。あいつが何故お前を追い詰めるか知ってるか?」
「ぼくがマケドニア人じゃないから?」
エウメネスは半ば自嘲気味に言った。
「いや違う」
クラテロスがにやりと笑った。
