というわけで、今夜も推理小説でございます。
でも今回名前伏せてない事で、一部で後藤メムノン言われているメムノンが犯人ということはなくなりました。
絵は、ナルメルが怯える中でトトメス3世とパンクラチオンしてボコボコにする前のサリサ=アドレット=ティーガー。
プレビュー↓
フィオラ=アマオカミはその羊皮紙を慎重に受け取り、目を細めて古代ギリシャ語の文書に目を走らせる。彼女の赤い瞳が文字を追うごとに、驚きの色が増していく。
水鏡冬華も羊皮紙に身を乗り出し、二人で黙って読み進める。
「まさか……XXXXXXXが…………バイケイソウ……サリサみたいなホワイトライガーならどんな毒も無効化できるし、わたしや冬華みたいな竜ならともかく人じゃ死ぬわね…………」
フィオラの声は小さく震えていた。彼女の黒竜のしっぽが左右に神経質に動き、この情報の重大さを物語っている。世界で最も有名なXXXの一人が、自らの弟子を毒殺する共犯者だったとは。
「XXXXXXの処刑が原因……」
水鏡冬華はため息をつき、顔を上げた。彼女の目にはショックと共に、何かを理解したような光も宿っていた。
「歴史はわたしたちが知っているより、ずっと複雑なのね」
カッサンドロスはサリサの背後から恐る恐る顔を覗かせた。彼の顔色は蒼白で、額に冷や汗が浮かんでいる。彼はフィオラと水鏡冬華の反応を見て、さらに身を縮めた。自分が持参した証言者と証拠が、この場の緊張をより高めるだけだと理解していた。
「オリンピックさんに会わせるのは今すぐがいい? それとも明日?」
サリサがフィオラに尋ねた。彼女のホワイトタイガーの尻尾がカッサンドロスの首の周りでゆるく踊るように動いている。まるで遊ぶような、しかし同時に威嚇するような動きだった。
「正直なところ……」
フィオラは羊皮紙から視線を離さずに言った。
「今すぐオリュンピアスに会わせるのは危険かもしれないわ。彼女は理性飛ぶでしょ。息子のことになると。
この情報を知ったら、カッサンドロスを八つ裂きにする可能性もある」
桜雪さゆは十二単の袖を揺らし、黙って聞いていたが、ようやく口を開いた。
「でもねぇ、オリンピックさんは真実を知る権利があるよ。
それに、もしこれが本当なら、XXXXXXXの評価も変わるかもよ? 世界中の世界史の教科書書き直しだねぇ」
彼女の声には無邪気な楽しさが含まれているが、その言葉は重い意味を持っていた。
水鏡冬華は首を振った。
「歴史が変わるわけじゃないわ。ただ、私たちが知っている物語が変わるだけ。XXXXXXXの行為は既に起こったこと。それが表に出るか出ないか、の違いよ」
(中略)
「ちょっとその羊皮紙返して。いい頭脳が今いること忘れてた。ミハエル達と一緒にいるエウメネスに今から島に行ってこれXXXXXXXの事見せて判断仰ぐわ」
サリサ=アドレット=ティーガーがそういう。
「エウメネスも一緒なのか……お前ら」
とカッサンドロスが言う。
(もうこの程度はバラしても問題ない。この流れになったのなら)
フィオラ=アマオカミはそう思った。
「じゃあ、わたしらはトレミーちゃんにカッさんの部屋用意してもらいに行くんだねー」
桜雪さゆがそういう。
「ペルシャのメムノンがさ。XXXXXXXについて『XXXXXXXは立派な人間じゃないぜ。俺はそう思う』って言ってたって歴史書に記されてるんだけど。ドンピシャだねえ! 知ってたのかな? メムノン。XXXXXXXの事。もう病気で死んでて本人に確認取れないけどさ。メムノン」
と桜雪さゆが付け足す。
フィオラ=アマオカミはカッサンドロスを警戒するように見つめた。羊皮紙を手に取り、慎重にサリサに返す。竜の角が月明かりに照らされ、わずかに輝いている。
「エウメネスに見せるのはいいわね。彼なら本当の歴史家だから、この文書の信頼性を確かめられるはず」
フィオラの赤い瞳がカッサンドロスに向けられる。彼女のしっぽがゆっくりと左右に揺れ、内なる思考を反映している。
XXXXXXXが関わっていたという事実は、古代史において衝撃的な発見だった。偉大な哲学者の評価を根本から覆しかねない情報だ。
「マケドニア人じゃないからこそ、エウメネスは公平な判断ができるかもしれないわね」
水鏡冬華は腕を組み、思案顔で言った。彼女の巫女装束が夜風でわずかに揺れる。
「XXXXXXの弟子が現れたこと自体が不思議だわ。アレクサンドロス大王の時代に処刑されたはずなのに。その証言と文書が本物なら、歴史は書き換えられる必要があるかもしれない」
カッサンドロスは震えながら立っている。かつての王としての威厳は完全に崩れ去り、着ているものは王様でも今は単なる囚人のように見える。彼の目には恐怖と諦めが混じりあっていた。
(中略)
夜。アンティキティラ島。
ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒと、フレデリック=ローレンス(フレッド)とアリウス=シュレーゲルとエウメネスはアンティキティラ島の機械を袋にしまってお風呂にはもう入って寝る準備をしていた。
そこにサリサ=アドレット=ティーガーが夜空からやってくる。
「こんばんはー、霊気辿ってやってきたよーん。
そっちも今日はワクワクすることあったみたいだけど、こっちにも仰天することあったよ。
エウメネスに判断して欲しいの、これ。あんた東征中アレクサンダーのすぐ隣にいたんでしょ? これ見てよ」
と、サリサ=アドレット=ティーガーがXXXXXXの弟子の羊皮紙をエウメネスに渡す。
「アレクサンダー毒殺の陰謀者XXXXXXXだよ。もしもに備えて自分の死後になった場合の計画まで立てて暗殺した。わたしも聞いた時固まるくらい驚いたけどね」
とサリサ=アドレット=ティーガー。
『はぁ!?』
島に男3人の声が響き渡る。ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒと、フレデリック=ローレンス(フレッド)とアリウス=シュレーゲルは大声をあげて仰天した表情で固まる。
エウメネスは言葉すら発する事が出来なかった。
「メムノンが言ってた通りだったのか」
エウメネスはその言葉を漏らした。アレクサンダー大王の東征の序盤最大の敵だった※メムノン。その彼の言葉がエウメネスの耳をくすぐる。
「今カッさんアレクサンドリアでお休み中だけど、いつオリンピックさんに会わせればいいかなってアドバイスをエウメネスに聞きに来たの」
エウメネスは羊皮紙を受け取り、その内容に見入った。指先が微かに震え、呼吸が浅くなる。文字を追うほどに彼の表情には複雑な感情が浮かび上がってきた—―驚き、怒り、そして何より深い悲しみが。
「これは……XXXXXXの筆跡に似ている」
エウメネスの声は静かだったが、そこには重みがあった。
彼はアレクサンドロス大王の書記官として、王の最も近くで仕えてきた人物だ。その彼が言葉を失うほどの衝撃。
ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒは近寄り、エウメネスの肩越しに羊皮紙を覗き込んだ。その瞳には驚きとともに鋭い光が宿っていた。
「本当にXXXXXXXが……」
エウメネスは深く息を吸い、視線を上げた。彼の目には決意の色が浮かんでいた。
「メムノンは昔、『XXXXXXXは立派な人間ではない』と言っていた。当時は単なる敵国の将軍の挑発だと思っていたが……今思えば、彼は何かを知っていたのかもしれない」
