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トレミーちゃん

 絵はサリサ=アドレット=ティーガー。目の色が左右逆。
 プトレマイオスのあだ名ver. はトレミー。
 fgoやってる人は馴染みあるのかな。わたしfgoやったことないけど。



「おおおおおあああああああああああきええええええええええい! ち○ぽ いえーいいえいいえい!」
 と警備兵が掛け声を上げ桜雪さゆを一刀両断するように剣を振る。
 そうすると、剣が桜雪さゆに触れる前に剣が蒸発した!!
「ありがと」
 それだけ言って桜雪さゆはルンルン気分で部屋を舞いまわる。
 だが警備兵は止まらなかった。
「おおおおおあああああああああああきええええええええええい! ち○ぽ! 天パの鼻でかあすほーるを強襲!!」
 ぐさっ!
「おおおおおおお゛っ!?」
 プトレマイオスが悲鳴を上げてお尻を抱えながらジャンプを繰り返す!
 カンチョーされたらそうもなろう。
「貴様っ無礼な! 顔を見せい!」
 プトレマイオスがわめく。
「顔、はい。こんな顔」
 で出てきたのは、ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒだった!
 意外性もある、冬華、フィオラたちのリーダーだ。
 いつの間にやら、エウメネス軍とは別行動をとっていたらしい。
「アレクサンドロス……」
 オリュンピアスがミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒの顔を見るや熱に浮かされたように息子の名前を口にした。
「そんな似てないと思うんですけど。あと蛇信者とは馬が合わなさそう。わたし竜だし」
 ミハエルが愚痴る。
 ミハエルの登場に、宮殿内の空気が一変した。
 彼の姿を見たオリュンピアスの反応は、まるで幽霊でも見たかのようだった。
 プトレマイオスは混乱と怒りで顔を赤くし、まだお尻の痛みに耐えながら立ち直ろうとしている。
「いつから来ていた!?」
「2300年後の未来からきていた! しかも地球とは違う星から!」
 プトレマイオスは歯を食いしばって尋ねた。彼の目は憤怒に燃えていた。ミハエルはまともに答える気がない。
 エジプトの支配者としての威厳が傷つけられたという怒りと、突然の侵入者に対する当惑が入り混じっている。
 こんな屈辱を受けるとは。しかも公爵と名乗るこの男は、どこから現れたのか?
 ミハエルは優雅に一礼すると、微笑みを浮かべた。
「最初からいたぞ。気づかれなかったのは、わたしの密偵としての訓練のたまものかなー」
 桜雪さゆは十二単の長い袖を揺らし、くすくすと笑った。彼女の不気味な笑い声が宮殿内に響き渡る。
「人間なんて簡単に騙せるのよ。特に天パの鼻でかさんなんて」
 オリュンピアスは震える手でミハエルの顔に触れようとした。その目には涙が浮かんでいる。
「アレクサンドロス……まるで生き写しだ……」
「いや、べつに似てないんですけど。アンタからはわたしの母と同じ力強さは感じるけどな」
 ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒは困惑した表情で言い、オリュンピアスから少し距離を置いた。
「それよりも、いい話があるぞトレミーくん。エウメネスの件について」
 ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒは、プトレマイオスに言う。
 プトレマイオスの目が鋭く光った。彼は痛みを堪えてまっすぐに立ち、威厳を取り戻そうとした。
「エウメネスが生きているというのは本当か?」
 ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒは頷いた。
「ああ、そして彼の運命は歴史の分岐点になる可能性がある。フィオラたちは彼を東の島、日本に逃がす計画を立てている」
「フィオラとは?」
 プトレマイオスが尋ねる。
「黒竜フィオラ=アマオカミ。量子化の能力を持つ竜の因子を宿した女だ」
 ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒは説明した。
「彼女とその仲間たちは、歴史の流れを守ろうとしている」
 オリュンピアスは我に返り、ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒから離れた。
「だが、さゆはこう言っておる。歴史を変えるのも面白いと」
 ミハエルはわずかに眉をひそめた。
「さゆの気まぐれは予測不能だ。だからこそ、わたしたちは彼女の力を……方向づける必要がある」
 桜雪さゆは氷の結晶を指先で踊らせながら、
「あら、わたしのことを話してるの?」
 と言った。
「君のおっぱいが小さいって伝言受けてんのさ、君の親友の水鏡冬華から!」
「あの半竜ぶっとば~~~す! 息子さん、いいよね!?」
「わたしに許可撮ってどーすんのよ……」
 水鏡冬華のことを半竜と呼ぶ桜雪さゆ。水鏡冬華はさゆのことを春女、アホ女と呼ぶ。水鏡冬華がある幕末の事件で家族を丸ごと失った時に竜神闇霎(くらおかみ)から血を分け与えられて、半分竜神だからである。桜雪さゆと水鏡冬華は幕末から100年を軽く超える腐れ縁である。
 ちなみに桜雪さゆは、ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒのことを「息子さん」と呼ぶ。これはミハエルが竜神闇霎の実の息子だからそう呼んでいるのである。戦闘においては、実力は水鏡冬華と桜雪さゆは同等である。と桜雪さゆ自身がそう言っているが、勝つのはさゆの方が多い。


 プトレマイオスは痛みを堪えながら、混乱した表情でミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒと桜雪さゆのやり取りを見つめていた。
 彼の知るディアドコイ戦争の混沌とは違う種類の狂気がここにはあった。
(竜神の息子? 半竜?)
 彼はこれらの言葉の意味を理解できずにいた。
「いい加減にしろ!」
 プトレマイオスはおケツが痛い事も相まって、怒りを込めた声で叫んだ。
「一体何の目的でここに来た? エウメネスが生きているというのなら、それはマケドニアの権力構造に大きな影響を与える。カッサンドロスとの関係も……」
 ミハエルは落ち着いた様子で手を上げた。
「焦るな、トレミーちゃん。エウメネスの件と北マケドニアの異変は、君の立場を有利にする可能性もあるぞ」
 オリュンピアスは我に返り、ミハエルから距離を取りながらも、彼の言葉に耳を傾けていた。
「つまり、プトレマイオスよ、わたしたちの共通の敵、カッサンドロスを打ち倒す絶好の機会なのだ」
 プトレマイオスの頭の中では、複雑な計算が始まっていた。
 カッサンドロスはディアドコイの中でも特に危険な存在だった。なぜかアレクサンダー大王の血筋全体を憎んでいる彼がマケドニアの権力を完全に掌握すれば、エジプトのプトレマイオスの立場も脅かされる可能性がある。
 しかし、オリュンピアスと手を組むのもリスクが高かった。
「あのー、政治の話はいいけど」
 桜雪さゆは退屈そうに指先で小さな氷の鳥を作りながら言った。
「わたし、そろそろ北マケドニアに行きたいな。フィオラのヤツが何してるか見てみたいし」
 ミハエルは眉をひそめた。
「まだその時ではないぜ。さゆ。まずは鼻でか天パのトレミーくんとの協力関係を築く必要がある」
「でもフィオラを邪魔しに行くって約束したじゃない」
 桜雪さゆが不満そうに言う。
「あの黒竜の顔がガックリするところ見たいのよ」
 オリュンピアスはこの会話から重要な情報を得ていた。このフィオラという黒竜とさゆの間には何らかの確執があるようだ。そしてさゆはフィオラの計画を妨害したがっている。これは利用できるかもしれない。
「プトレマイオスよ」
 オリュンピアスが静かに言った。
「カッサンドロスが混乱している今こそ、アレクサンドロスの血筋を守るチャンスだ。わしとエジプトの同盟を結ばぬか?」
 プトレマイオスは警戒心を解かないまま、ゆっくりと頷いた。
「話を聞こう。ただし、オリュンピアス、あなたの過去の……やり方には賛同できかねる」
「過去はもういい」
 オリュンピアスは手を振った。
「今は未来だ」
 ミハエルは満足げな表情を浮かべた。
「良い判断だ。では、具体的な計画を立てよう。まず、エウメネスを……」
「ちょっと待って」
 桜雪さゆが割り込んだ。
「わたしたちの取引はどうなるの? わたしが手伝うかわりに、フィオラの邪魔をするって話だったでしょ?」
 オリュンピアスはさゆに向き直り、
「その約束は守る」
 と言った。
「だがまずは同盟関係を築くのだ。その後で北マケドニアへ向かおう」
 プトレマイオスは宮殿の窓から外を眺めた。エジプトの太陽が砂漠を照らす光景は、いつも彼に落ち着きを与えてくれた。
 しかし今日は心が乱れている。
 おケツも痛い。なによりプトレマイオスはおケツが乱れている。今は。

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