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時間が燃えた プレビュー

 絵はひょんなことからできた新キャラ。でも出るか出てもちょい役かって感じ。ミハエルの黒騎士団に入りたくて、水鏡冬華に弟子入りして霊波動に目覚めたがっている夢夢(ゆめゆめ)さなえ。
 水鏡冬華は面倒。パスねー。とつれない態度。今の天馬蒼依や空夢風音より遥かに弱い。
 8月28日更新予定の一部↓


「フィオラ、さゆの時間燃やしキャンセルは無駄だよ。木花咲耶姫と同じ炎だ、神も時間ごと対象を燃やす。さゆが燃やした範囲だけ21世紀になってるんじゃないかな。旧ユーゴ、ギリシャの上の方と北マケドニアになってるんじゃない? 時間燃えすぎて?」
 ミハエルが呆れた(桜雪さゆに呆れている、当然)顔で言う。

 フィオラの翼は宙に広がり、輝く竜の紋章が彼女の背中に浮かび上がった。彼女の目からは赤い光が放たれ、量子化の力で時間の流れそのものに干渉しようとしている。
 しかしミハエルの言葉に、その動きが一瞬止まった。目が点である。フィオラ=アマオカミの。
「さゆの炎で時間まで燃えた? 北マケドニア? 二十一世紀? 21世紀の北マケドニアが紀元前4世紀に舞い降りたって言うの!? 舞い降りてどーすんの!?」
 フィオラの表情が凍りついた。彼女の心臓が早鐘を打つ。妖怪の力、特に桜雪さゆの火炎千本桜の恐ろしさを改めて実感する。
 時間そのものを燃やして消し去るという概念に、竜の因子を持つフィオラでさえ震えを感じた。
「それじゃあ修復不可能っていうこと?」
 ミハエルは羊皮紙の上に描かれた複雑な記号を指さしながら頷いた。
「わたしがこの前生き返りの呪文使った罰として胸と右腕と右足爆破してきた木花咲耶姫の炎と同じだからな。神の炎に巻き込まれた領域は、時間軸の修復より再構築のほうが現実的じゃないの?」
 水鏡冬華は水晶の鏡を傾け、その表面に映る像をじっと見つめた。
「自然修復に任せるという選択肢もあるわよ。翡翠焔の炎で焼かれた領域は、時間の流れが最も自然な形で埋まっていくことも……」
「自然修復?」
 エウメネスは冬華の言葉に飛びついた。
「それはどういう意味だ?」
 フォイニクスが質問を重ねる。
「つまり、歴史の流れには自己修復能力があんのよ」
 水鏡冬華は静かに説明した。
「大きな変動があっても、全体の流れが重要な分岐点では元の軌道に戻ろうとする働きがあるわ。これはロータスの法則と呼ばれるもの」
 フィオラ=アマオカミは翼をたたみ、考え込む様子で腕を組んだ。竜の鱗が光を反射し、彼女の姿を幻想的に彩る。
「ミハエル、オリュンピアスは本当に無事なの? 彼女が生きていれば、カッサンドロスの動きを抑制できるかもしれないわ」
 ミハエルはさらに詳しく調査するため、霊波動を集中させた。彼の額に汗が浮かぶ。
「不思議なことに、オリュンピアスは確かに生存している。さゆの炎まともに浴びたってわけじゃないだろうに。まるで原爆直撃で生き延びた特定の日本人みたいだ。
 彼女のような強烈な個性のある霊気は隠せないな。
 どうやらエジプトへ逃げ延びたようだな」
 サリサ=アドレット=ティーガーは髪をかき上げた。
「ヘーッ、あの蛇女はしたたかだねぇ。火炎千本桜の中でも生き延びるなんて、さすがアレキサンダー大王の母ちゃんよ」

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