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妖怪に奴隷にしてやるぜなんていうとこうなります

8/26日分の更新から抜粋。


「おっ、色使いすごい綺麗な奴隷じゃねーか。ねーちゃんいくら? エロ奴隷として俺が買ってやるよ! 嬉しいだろ?」
 桜雪さゆにそう話しかけてきたマケドニア人がいた。
「えーっどうしよっかなー」
 桜雪さゆは考えるふりをする。
「人が人を区分するなんて神を舐め腐ってる。木花咲耶姫さまに逆らってる。
 分類の危険性。人をカテゴリーに分けることは、性別、人種、民族などで個人を判断し、個々の資質を見えなくするのよ。
 特に、性別や人種は、レッテル貼りが強固になりがち。
 だから富士山が噴火した時みたいに、わたしはお前ら区別せず人間は全員燃やすね下界の肉人形! 神を気取るなエンキドゥと同じ土人形が!」
 ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおッ!
 桜雪さゆが、十二単が妖気で燃え上がった。
 そしてその場に火炎の桜の木ができる。
「火炎千本桜! おっと、保護膜自分で張らないと地球自体が、太陽系自体が蒸発しちゃうよ」
 保護膜の中マケドニアのペラの温度が1000兆度になった。1000兆度は太陽系全体が蒸発する1000倍の温度だ。
 保護膜の外のアテネなどは、気温が10度あがったくらいである。
 当然、1000兆度は人間以外でも生物が生きていられる温度じゃない。ヒッグス場が相転移を起こす際の温度だ。そして宇宙が誕生して間もない温度が1000兆度だ。
 太陽の中心部でも約1600万度という低温(1000兆度を好きに出せる雪女のさゆからすれば)である。
 土も真っ赤になって溶けるどころじゃなく消え失せる。
 桜雪さゆを奴隷として買おうとした男も苦しむ間もなく溶ける。
 アンティパトロスもとける。
 地中海も一気に蒸発する。
 マケドニアの王都ペラがマグマの海に沈んだ。
 飽きたのか、桜雪さゆの火炎千本桜は1分ほどで自分で消した。
 温度は平年より2,3度低い状態に戻った。
「1000兆度で死んでやんの。だから下界の肉人形はよわい」
 桜雪さゆはひとりごちた。


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「この妖気……さゆめ、いい加減にしろよ!!」
 ミハエルが霊波動でみなを守ったため、エウメネスたちは蒸発しなかった。
「うはあぁーあの桜女やるねぇ~~」
 サリサ=アドレット=ティーガーが暢気にそんなことを言っている。
「あの子! バカ野郎!!」
 とわめきつつ、フィオラ=アマオカミも竜の力で保護したため、ヒエロニュモスもアンティゴノスもアンティゴノスの軍も蒸発せずに済んだ。


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 フィオラは竜の尾をピシャリと大理石の床にたたきつけ、怒りで顔が真っ赤になっていた。
 さゆの火炎千本桜が消え、周囲の温度が急速に元に戻る中、彼女の目は燃えるような紅色に輝いている。
「あの子が何考えているかわからない! まったく! マケドニアの王都まるごと消し飛ばして、歴史の流れが変わったらどうするつもりよ!」
 フィオラの心臓は激しく鼓動している。歴史干渉の重大さを理解しているからこそ、さゆの行動に怒りと焦りが入り混じった感情が湧き上がる。
 さゆは強大な力を持ちながら、あまりにも無責任だ。マケドニアの王都ペラがこの時点で消滅すれば、ディアドコイ戦争の展開が完全に変わってしまう。
「ミハエル! 今の時間軸と本来の歴史、どのくらいずれが生じたか計算して!」
 ミハエルはすでに古代の羊皮紙のようなものを広げ、複雑な計算を始めていた。彼の表情は沈着冷静だが、眉間にはわずかなしわが寄っている。歴史の修正という重大事に取り組んでいるのだ。
「幸い、大きな変化はないようだ。このくらいのタイミングでアンティハゲロス病死するしな何もなくても。しかし、アンティハゲロスが物理的に蒸発した影響で、子どものカッサンドロスの動きが早まるかもしれんな」
 アンティパトロスは
『女には決して王国を支配させてはならぬ』
 の名言を残した宰相だ。
 これは、オリュンピア(アレクサンダー大王の母)がエウリュディケの子どもを股にはさんで足で絞め殺し、エウリュディケを自殺するように仕向けたことを受けてそう言ったのである。
「アレクサンダーの血筋の者全員皆殺しにかかるからな、あの度胸のなさそうな顔つきした坊ちゃんカッサンドロス。
 フィリッポス3世も1000兆度の熱で消えたし。
 そういえばエウメネスくん、オリュンピアスに『ば~~~~っかじゃねぇの!?』って言った?」
「は? 言ってないけど…………」
 戸惑いつつ答えるエウメネス。
「ふうん。あの保護膜取ったら太陽系丸ごと消し飛ばせるさゆの熱の中でも、どうやったかわからんが生きてるぞ。アレクサンダー大王の母親。蛇女。エウリュディケ自殺に追いやって双子殺した女。ネクタネボ2世に魔術でも習ったんかねオリュンピアス?」
 サリサ=アドレット=ティーガーは白い虎の耳をピクピクさせながら、笑いをこらえているようだった。この危機的状況でも、彼女はどこか楽しんでいる様子だ。
「あのさゆ、やっぱりすごいねー! 妖怪ってあんな強いんだーマジですごいパワー! でもねえ、フィオラがめっちゃ怒ってる」
 サリサの言葉に、フィオラはさらに怒りの炎を燃やした。虎と竜の因縁は深い。喧嘩友達とはいえ、このような重大な局面でサリサが茶化すような態度を取るのが気に入らない。
「冗談言ってる場合じゃないでしょ! 時間軸の安定化が必要よ! エウメネスの計画も台無しになるわ!」
 エウメネスは冷静に状況を分析していた。彼の軍略家としての経験が、この危機的状況でも冷静な判断を可能にしている。
 彼の心の中では、様々な可能性が次々と計算されていた。
 一歩間違えば自分の未来が消えてしまう。東方への逃避行計画が水の泡になる可能性もある。
 しかし同時に、この混乱は新たなチャンスかもしれないとも考えていた。
「フィオラ、この混乱自体を利用できるかもしれない。
 アンティパトロスが消えたことで生じた権力の空白を、わたしの脱出計画に活かせないだろうか」
 水鏡冬華は水晶の鏡を手に取り、時間の流れを観察していた。彼女の表情は穏やかだが、目には真剣な光が宿っている。
「時間の糸が乱れているわね。あのアホ女の炎は時空を歪める力がある……」
 空夢風音は千早を握りしめながら、震える手で印を結んでいた。彼女の霊感によってさゆの火炎の余波を感じ取り、その影響を最小限に抑えようとしている。
「わたしの千早で、時間の傷を縫い合わせます……! でも、これだけの規模だと…」
 フィオラ=アマオカミは深く息を吐くと、突然腕をひろげた。
 彼女の背中から純白の翼が広がり、天井近くまで届くほどの堂々とした姿となる。

 抜粋終わり。霊波動使える者がこんなにたくさんいて、歴史変えずに進めるわけがない。

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