ギリシャ・ローマ神話の登場人物が様々なものに変身していく短編集。
中世やルネサンス期の文学に大きな影響を与えた。
そしてドミさんが言及している変身物語の一節『バウキスとピレーモーン』
内容的にはローマ神話版の懐石の由来に近いが、どちらかというと重要なのはこの二人の結末。
神になんかいいことをしたこのバウキスとピレーモーンという老夫婦は、神から何か望みはないかと聞かれる。
それに対しての二人の返答は要約すると『共に生き、共に死にたい』というもの。
結果、人としての最期が来た時、二人はその身を人から木に変えられ、オークの木とティリア(菩提樹)になり、神殿の前で枝をからませながら永い時を過ごすことになった、というもの。
略奪愛をしたドミさんにとっては、「なんとしてでもそのような夫婦になりたい」という同類のその衝動はとてもよくわかるでしょう。
これ以上にドミさんにとって納得感があり、安心できる動機はありません。
そしてドミさん視点ではそれが決してかなわないことに愉悦を覚えるわけですね。
けどまあ、実際はお嬢様は現状唯一本物のルシウスの感情である『執着』というものを手にしてるわけでして。
評判のための虚像、現状偽物である『愛』だとか『忠義』だとかをいくら売り渡しても痛くもかゆくもないわけですね。
だってルシウスは『本物』のそれを未だ誰かに向けたことはないんですもん。
……というかお嬢様、死が二人を分かつた程度でルシウスを離す気はなさそうですね。