色々と難しいことが書いてあるが要約すると
・ウェスパシアヌスはユリウス=クラディウス朝の皇帝と同じ権利をもつよ!だって皇帝だもん!
・ウェスパシアヌスが良心に基づいて行ったことはすべて合法!
という内容。
これはウェスパシアヌス自身が元老院階級の中では成り上がり者であり権威が不足していたことから、政権の正統性を確保するために元老院に対してこの権利を要求したものと考えられる。
(なお、実際は元々皇帝の代替わりのたびにこの法律は制定されていたという説もあるが、本作では権力基盤が脆弱なウェスパシアヌスが要求したという説を採用しています)
そして本編でも触れている通り、この法律によって「皇帝の行動はすべて合法」と明文化されたため、元老院が正規の手続きで皇帝を弾劾することは法的には完全に不可能となった。
※ネロ帝の時は反乱が契機とはいえ一応正規の手続きとして「国家の敵」扱いして弾劾しようとした。
これ以降、暴君の首を挿げ替えたい場合の手段は、正式に「暗殺やクーデター」という力技だけとなった。
そしてそれを「国家の敵」や「即位の無効宣言」などの後付けの無理筋で肯定するのが元老院の役割に。
(この手続きは一見ネロ帝の時と同じように見えますが、元老院にその権利がないので実態としては大きく正当性が下がる)
つまり、ローマの法と秩序を司るはずの元老院が自ら法律を棚上げして実力行使によるごり押しに手を染めていく、帝政ローマの構造的欠陥を象徴するような法律だったりする。
(まあ、元老院が法律を完全に守っていた時期があるか?と言うとそれも怪しいが、一応それまでは保っていた「法の番人」という建前が、これ以降は脳死で権力者への正当性を付与するだけの機関へと変質していく契機にもなった)
参考:「ウェスパシアヌスの命令権に関する法律」ラテン語原文と英訳
https://droitromain.univ-grenoble-alpes.fr/Anglica/vespas_johnson.html