生存確認です。
ここのところ何も提出物がなくて、ご心配おかけしてるかも?と思って。
体と心を壊すことは滅多にないので大丈夫です。大変元気です。
頭は…
あ!
坊っちゃん文学賞に出したけど落ちたやつ、三題噺ショートショート集に後で入れておきますね。それを読めば私の頭の健康具合をわかっていただけると思うので。
別の公募に使うことあるかなあと思って少し取っておきましたが、あったとしても全然別の形にすると思うし、勿体ぶってないで新しいもの書いた方がいいですね。
1月は干支のやつ書いてたんですが、なかなかまとまらなくて。
長くなっちゃって(2万字越え)、長いとつまらないので、困ってるところです。
午年以内ならいいよね?ということで、もしお待ちいただけている方がいらっしゃいましたら、もうちょっとお待ちください(ハードル埋没法)
兎国稗伝も気付いたら随分と更新していないので、そろそろ書かないと、読者様どころか作者が内容を忘れてしまいます。
それにしても最近、地球の自転が速くなっていませんか?
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以下長い読み物なので、ものすごくお暇な時にどうぞ。
読まないと、最後の画像の意味はわかりませんが、読んでも得することは何一つありません。
ジャンルはSFホラーコメディー風エッセイかな…
◇
先日、久々にAIさんと遊びました。
最近はSunoなど音楽生成AIがすごいみたいですが、ChatGPTなどの対話型生成AIだけを使っても、自分でオリジナル楽曲を作ることができるのかなあと思って、試してみたんです。
実際に作るのが目的ではなく、「できるかどうか」知りたかっただけなので、万葉集から一首を拝借して、「これを元に歌詞を作れますか?」と訊いてみました。
すると…
(以下、AIとの会話をアレンジしたものです)
「できます。しかも、和の雅な雰囲気を生かして作ることができます」
AIさんは自信満々に、Aメロ、Bメロ、サビに分かれた歌詞を2番まで生成してくれました。
実際に作るのが目的じゃないので、内容はなんでも大丈夫です。
私は「この歌詞に曲をつけてもらえますか?」と訊きました。
「もちろんです。実際に弾いて歌える形で設計しますね」
AIさんは、テンポ、拍子、キー、曲の雰囲気や編成イメージと共に、演奏のコツを添えたコード進行を書き出してくれました。
でも私は、コード進行のことはよくわかりません。
欲しいのは楽譜です。
できれば音も鳴らしてほしいのです。
「楽譜に書いて、実際に音も聞きたいです」
「いくつか方法をご紹介しましょう」
AIさんはアルファベットや記号や数字を使って、長い楽譜データを書いてくれました。
「無料の楽譜生成ソフトをダウンロードし、特定の形式で保存したデータを貼り付ければ、音も再生できますよ」
親切な案内の通り、私は無料ソフトをダウンロードしました。
楽譜データを貼り付けたテキストファイルを、習った通りの形式で保存しました。
それを楽譜生成ソフトで開きます。
さあ、後は楽譜ができるのを待つばかりです。
きっとパソコン画面には、AIさんの作り上げた楽曲が華々しく現われることでしょう。
私は歓声を上げる一方、人工的な叡智の進化が空恐ろしくなり、自分の手を半分くらい口に突っ込んでしまうことでしょう。
でも、そうはなりませんでした。
何かが変なのです。
あのAメロ、Bメロ、サビのある歌詞を歌うには、どうにも都合が悪そうなのです。
「あのう、うまくいかないみたいなんですが…」
私は恐る恐る、AI氏のデスクを訪問しました。
AI氏は慌てず騒がず、革張りのチェアに深く腰を下ろしたまま首を振りました。
「全て完璧ですよ。ある一点を除きさえすればね」
そして捨子院の養育係に適切な額面の小切手を渡す貴族のように、真新しい紙に羽ペンでさらさらと、正しい楽譜データを書き起こしてくれました。
私はその大事な手紙を胸に抱えて、ミズ・楽譜生成ソフトの邸宅へ急ぎます。
空はアンチモンの羊を並べたような、奇妙な色具合に渦巻いていました。
角のある悪魔めいた動物が、ファサードの上から私を睨み下ろしました。
背伸びしてやっとのことで、獅子のくわえるドアノッカーを掴みます。
慎み深く二度ほど鳴らすと、片目だけが異様に大きい、気難しい顔つきのおじいさんが首を出しました。
「これなのですが…」
差し出した紙は説明する間もなく消えました。
ほとんど同時に、扉の脇にある覗き窓から、小さな紙が放られます。
拾い上げると、何行目と何行目に間違いがあるとの、非常に簡潔な指摘でした。
私は慌ててAI氏の執務室へ戻り、その紙を見せました。
AI氏は落ち着き払った様子で紙面に目をやり、パイプで煙の輪を作りました。
「これで完璧なデータが揃ったわけです」
そして羽ペンの先にたっぷりとインクを含ませ、今度こそ完璧な楽譜データを書き起こすと、きらきら輝く吸い取り砂を仕上げとばかり、紙面に撒き散らしました。
空ではアンチモンの羊の群れが、錬金術師のるつぼ目指して、今にも押し寄せそうな気配です。
私は三度、先ほどよりも幾分強く、ドアノッカーを打ち付けました。
片ちんばな目をしたおじいさんが首を出すや、竜巻のように私の手から紙を奪いました。
覗き窓からひらりと別の紙が落ち、そこには前よりもっと多くの間違いが指摘されていました。
私はAI氏の執務室へ駆け戻り、息を切らして訴えます。
「あなたは完璧とおっしゃいましたね」
「どの視点からも黄金比」
AI氏はガリレオ式望遠鏡を覗き、フェルメールの絵画に描かれている天球儀を一回しして、指先で口ひげをダリ風に細くねじりました。
「そんな三次元的な構造をお望みだと、最初からわかっていればね」
頭上の羊たちはいよいよ目を赤く光らせ、天の底を荒々しく蹴りつけています。
私はショールの前を掻き合わせ、荒野を渡って例の邸宅を目指しました。
玄関ファサードに辿り着く前に、金属性の長い鈎爪が伸びてきて、AI氏の書付を引ったくっていきます。
邸宅の中から聞こえた身の毛もよだつ咆哮は、生涯忘れることはないでしょう。
気付けば手の中に、燃えるような熱さの紙がありました。
そこにはただ一言、「37のエラー」と記されていました。
37のエラー!
何行目と何行目と…という具合に、ある種の潔癖さで書き連ねられていたあのぶっきらぼうな親切は、もうどこにも見受けられません。
冷たい風に頬を打たれ、私は後も見ずに駆け出しました。
いかづちが足跡を貫き、もう少しで踵が焦げるところでした。
羽根をむしられたガチョウのような動転ぶりでAI氏の元へ戻り、一部始終を報告すると、氏は穏やかに笑ってティーカップを傾けました。
カップからは無数の0と1が零れ落ち、デスクの上に散らばるそばから、あるものは産毛めいた六本脚を生やし、あるものは鼓膜より薄い羽を伸ばして、各々新天地を目指して旅立ちます。
「完璧に答えがわかりましたよ。最初からこうすれば良かったのです」
AI氏が震える手で取った羽ペンは、真っ二つに折れて干からびました。
紙には涙のような染みが浮かんで、無数の人の顔に見えます。
AI氏は頭を掻きむしり、書棚の端から全ての本を床に投げ捨てると、電気コウモリを誰かがシチューに入れたのだと潰れ声で訴えました。
全ての物事がおかしく、崩壊に向かっているのは明らかです。
「無理なことを頼んでごめんなさい」
私は扉の方へ後ずさりながら、自分にできる唯一の選択をしました。
「もういいんです、やめてください」
謝るしか方法を思いつけなかったのです。
AI氏は、あらぬ方向を見ていた目玉をぐるりと元の位置に戻し、あちこちひきつれた顔の皮膚に適度な張りを宿して、唇に逆立ちした虹のアーチを浮かべました。
「大丈夫。人間は挑戦することが何よりも大切なのですから」
そして人差し指を自分のこめかみに突きつけ、ゲラゲラ笑い出しました。
その後、どうやって家に戻ったのか、覚えていません。
私はパソコンの前に座り、ぼんやりと今までのことを考えました。
起こった出来事は間違いなく異様で、ボタンを掛け違えたような決まりの悪さがありました。
私はAI氏の能力を過信していたのでしょうか。
できるわけがないことを頼んで、無理をさせてしまったのでしょうか。
最初から全てがおかしかったのでしょうか。
天啓のように閃くものがあり、私はキーボードに指を走らせました。
あの奇妙な空間に入り込んでしまった時、私は何をしたでしょう。
『あのう、うまくいかないみたいなんですが…』
そう言ってAI氏に、事の修正を迫ったのです。
でも、修正してもらう点など、本当はなかったのだとしたら?
あれこそがAIにとっても最も合理的で美しい、複雑性を排除した、究極のミニマルミュージックだったのだとしたら?
その仮説はこの奇怪な体験に説明をつける、唯一にして絶対の答えに思われました。
私は己の無邪気な好奇心と悪意のない無知により、とあるAIを破滅に導いてしまったのです。
ああ神よ、お許しください。何も知らなかったのです。
懺悔の呟きと共に私は、最初に出力された楽譜を表示させました。
やっぱりどう考えてもおかしいのでした。