今日は父の一周忌法要でした。
いつものお寺にきょうだい家族が集合しまして、いつもの住職にお経を上げてもらいます。
うちの家族はあいにく用事が重なってしまったためぼくだけの参加でしたが。
その冒頭、これまたいつものように「修証義」というお経が書かれたスマホ大の小冊子が配られます。
「これは開祖の道元さんが書いたお経で、よければ皆さんも私の読経に合わせて口に出して読んでみてくださいね」といつもの口上を添えて。
前回は長女がここでおもむろに小冊子を耳にあて
「もしもし、道元?」
と呟いたところでぼくの中の何かの導火線に火が着いてしまい、厳粛な法要は思い出し笑いを耐え続ける苦行へと一変してしまったのですが、今日は大人だけなので安心です。
ところがです。
隣に座った姪っ子がこんなことを言うのです。
「なあなあ、サクおじちゃん。これなんだけど」と。
見ると、冊子の巻末に収録された『般若心経』の頁が開かれてます。
「般若心経がどうした?」
「どこがサビ?」
どこがサビってお前。Z世代。
「後半、波羅蜜多(はーらーみーたー)を連呼してるでしょ? そこがサビよ」
たぶん嘘は言ってないはずです。
「へええ」
そう言って姪は感心したような顔をします。
「じゃあ、ラストの『ぎゃーてーぎゃーてー』は?」
「レミオロメンが終盤アカペラで『こっなぁーゆきぃー』言うでしょ。あれ」
「ごふっ」と噴き出したまま下を向く姪。
姪はこの四月から働き始めています。素直ないい子に育ったなあ、と思わずこちらも嬉しくなってしまいます。
あ、まずい。
これ、前回と同じ導入です。
読経が始まります。
それはいいとして。
今回、法事と一緒に父の遺品の仏像を持ち込んで供養もしてもらいました。
といいますのも、ぼくの実家の床の間には長年、なんだかよくわからない仏像の類が数多く鎮座していたのです。
別にうちの父親は仏像とか骨董品のコレクターではなかったのですが、親類が亡くなったとき引取り手のいない仏像を形見分けとしてもらってくるうちに増えてしまったようです。もちろん、価値のあるものではありません。
で、その父も昨年亡くなったわけですが。
実家を相続して基本的にはすべてを処分する方向で動いていた兄が頭を抱えたのが、上述の仏像類なわけです。
少しも思い入れはないのですが、そうは言っても仏様の姿形をした像です。粗大ゴミとして出すのもなんだか気がひけます。
というわけで、住職に相談してお寺で供養してもらったうえでお炊き上げ(焼却)してもらうことになったのですが。
供養自体は滞りなく終わりました。本堂の祈祷台に並べた仏像を前に般若心経をあげてもらって(姪はずっと笑いを堪えて悶えてましたが)、みんなでお焼香もしました。和尚さんいわく、こうすることで仏像・仏具から「仏さん」が抜けるのだそうです。
どういうことでしょうか?
まあ、そこは深掘りしないでおきましょう。
ところがです。
どうも和尚さんが渋い顔をしております。
喪主である兄を呼んで、いま供養を終えたばかりの仏像を指差してなにごとか話しています。
どうも、和尚さんが思ってたより量が多かったようです。
たしかに、車のトランク一杯分くらいありましたからね。和尚さんはせいぜい2、3体くらいと考えていたようです。
それとお焚き上げは紙か木製のものしか燃やせません。銅や真鍮、陶器の仏像仏具も混じっているので、それは持ち帰って欲しいとの事です。
そして、仏像以外のものは勘弁してくれと。
仏像以外? どういうことでしょう?
「まずこれ」
七福神の木像。
なるほど、これは仏教とは違いますか。
長年仏像と一緒に床の間を賑やかにしていたので、仏教ズの一員だと思っていたのですが、違いますか。
「これも違うね」
般若の能面。
あ、これもだめですか。
これくらい燃やしてくれても良さそうですが、とにかく量を減らしたいようです。
「これ、なんだろう?」
直径1mくらいの木製丸盆の中央に、烏天狗だか河童だか、クチバシのついた人面が着いてます。
うーん。なんなんでしょうね? これ。
まあ、ここまでは住職の仰ることもわかります。事前にどのようなものを寺に持ち込むか伝えきれていなかったのでしょう。
ところが、1番大きな仏像。これも持ち帰ってくれと住職は仰います。
「これもちょっと大きすぎてウチの寺では燃やせないなあ」と。
ええ……。
それがメインなんですけどね。
たしかに大きいといえば大きいかもしれません。不二家の店頭のペコちゃんくらいの大きさがあります。
「でもほら、木製ですし。なんとかなりませんか?」
押しに弱い兄が食い下がります。
どうしても持ち帰りたくないようです。
「木製? これ木製かなあ?」
住職も引き下がりません。
どうしても引き取りたくないようです。
「木製ですって。ほら」
兄が仏像をココココーンとノックします。
たしかに木の乾いた音がします。
がんばれ、兄。
対する住職。
「いやいや、銅じゃないの? これ」
おもむろに仏像の頭をスパァンとひっぱたく住職。
坊さんが仏像しばくシュールな絵面に、堪えきれなくなった姪が「ぼふぅ」と鼻水吹いて崩れ落ちました。
こらこら、いまお前さんの親父が頑張ってるんだから。最後まで見届けなさいよ。
結局、押し切られて兄が持ち帰ることになりました。
兄「サク、お前これ持ち帰らん?」
ぼく「やだよ、これ持って電車乗りたくねえ」
↓ これ
