• 魔法のiらんど

今さらのキリンジ解釈(その8:『イカロスの末裔』)


 まいど、アテクシです!

 さて、前回の『エイリアンズ』と『秘密』の回で、人(異星人?)殺しじゃなくても、単に異星人ということだけでも追われる理由としては十分ではないかというご意見をいただきまして……

 異星人狩りが行われている地球で異星人の恋人を匿う僕、という解釈の方がドラマチックではないでしょうか、ということですが、派遣のオジサン、いかがでしょうか?

「う~ん、でもミステリーファンとしてはやっぱり殺人ははずせない、というか……」

 それですが、ミステリーではなくミステリじゃないか?という指摘もありました。

「確信はないけど、ミステリは『ミステリ・マ■■ン』の造語だったような気がする。本格探偵推理小説専門誌、って意味を込めてたらしい。それ以前からの読者はミステリー(mystery)を使うよね。あと、mysteriで検索するとインドネシア語が引っかかる。英語ではないようだ。日本とインドネシア以外ではミステリとは言う莫《なか》れ、ということですかね」

 まーたそういう不穏な発言を……
 最近、このキリンジ解釈シリーズがトンデモ解釈の認定を受けているみたいなんですが、オジサンの度重なる不謹慎発言のせいではないかと。その他にも、痛いとか、共感性羞恥とか言われてますが……

「いいんじゃない。どーせ、読んでる人も知り合いだけだし。
 ネットで他の人のキリンジ解釈も見たけど、だいたい素直というか、きれいと言うか、優等生的な解釈が多いみたいね。俺みたいなひねくれた解釈はまず見ない」

 解釈者の人柄が滲み出るからじゃないですか?

「その通りなんだけど、キリンジの曲は聞く人ごとに異なる反射を見せるのかもね。一つの曲の中にいろんな意味が織り込まれていて、リスナーはその性格や精神構造にしっくりくる解釈を引き出してきているんじゃないかな」

 なるほど、それでオジサンの解釈がトンデモになると。

「否定はしない。本当に、キリンジを聞く人は心のきれいな人が多いんだなーって感心するよね。そういう人たちにとっては堀込兄弟は天使のように思えるんだろうね。

 けど、実は堀込兄弟の精神構造は非常に複雑で、俺のようなひねくれた解釈も可能にする多面性を持っている。
 前にも言ったけど、それが高樹お兄さんの”毒とエロ”、そして弟泰行さんの”侵蝕”だ。

 高樹お兄さんの”毒とエロ”は比較的わかり易い、すなわち即効性に優れている。同時に、高度なレトリックを織り交ぜた騙しのテクニックもすごいよね。
 一方、泰行さんの”侵蝕”は遅効性の毒だ。前回解説したように10年越しで効いてくるものもある。こちらは気の利いた言葉をちりばめ、毒を隠蔽してくる。

 兄弟で毒の種類が違うのがおもしろい。お互いを補い合う関係が、今でも人気が衰えない理由のひとつだと思う」

 前置きが長くなりましたが、そろそろ本題に。

「今回は、不謹慎と評される俺の性格に強い反射を見せた曲を取り上げる。
 あくまで俺の解釈だから元歌の意図は全く別である事を明記しておく。
 要するに、元歌の内容と俺の解釈は一致してない。元歌を聴いて俺が頭の中で何を考えたかを書き記しただけ。もはや解釈とは言えない単なる想像の書き連ねだ。当然だが、本文の責任は全て俺にあり、元歌は関係ない」

 どんだけ不謹慎なんですか?


『イカロスの末裔』

 イカロスは有名なギリシア神話”イカロスの翼”の主人公。
 王の怒りを買った大工の父ダイダロスと共に迷路あるいは塔に幽閉されますが、鳥の羽を蝋で繋げた翼で空を飛んで脱出します。
 しかし、高く飛び過ぎて太陽の熱で蝋が解け翼が分解、海に落ちて溺れ死ぬという悲劇的な最期を遂げます。

「今から40年ぐらい前に、JALの’ジャンボジェット’が墜落して500名以上の死者が出たが、しばらくしてその事故の原因が明らかにされた。

 当該機の以前の尻もち事故で壊れた機体後部の内部隔壁をボーイング社が修理したんだが、その際、本来は2列で固定すべき’ボルト’あるいはリベットを1列しか打たなかった。そのため生じた金属疲労により飛行中に突然、内部隔壁が吹っ飛んだ。その衝撃で垂直尾翼の2/3が消失、油圧系も全滅して機体は操縦不能となり墜落したというんだ。

 それを聞いて、俺が最初に思い浮かべたのが”イカロスの翼”だった。
 共に継ぎ目が破綻しての航空事故。
 テクノロジーは進化しても人間がやってることは変わらない。
 神話が予言となる理由だ。

 まぁ、だから15年後、『イカロスの末裔』を聞いた時も、この事故を思い出したんだ。
 だれでも飛行機で空を飛べる。現代人はまさに『イカロスの末裔』だよね。
 毎年、何件かは必ず航空機事故は起こっているし。
 けど、この曲自体はあのJALの事故とはなにも関係ない。
 俺が連想しただけなんだ。本当にそれだけ」

 特定の航空機事故とは関係ないとして、曲として興味深い所はありますか?

「明るい曲調でテンポも良いし、楽しい旅行の歌のようだけど、俺の不謹慎な考えでは、この飛行機はもうすぐ墜ちる、というか墜ちつつある。
 ’ボルト’が抜けてるんだもん。もう、遠くまでは飛べない。

 墜ちることを知らされた乗客の異常行動。女の子にキスを迫ったり、パンツを脱ぎかけたり、豪華な機内食を食べたり。どうせ助からないならハイテンションが死の恐怖に抗う一番の’術《すべ》’ってこと。

 知り合いにはメールしとくか、圏外だけど、墜落してから届くかも、着信の曲と共に。
 あとは星に祈るだけ……」

 ずいぶんと怖い想像ですが、唐突に出てくる’リンゴ’に関してはいかがでしょうか?

「こんな乗客たちのハチャメチャなご乱行も墜落後は世間に知られることもないだろう。
 が、飛行機にはブラックボックスという記録装置が積んである。
 実際にはブラックボックスが記録するのは、機体の状況とコックピット内の音声だけだけど、もしかしたら客室の騒ぎも伝わるかもしれない。

 ブラックボックスと言うけど、実際には赤やオレンジ色の塗装で暗い場所でも目立つようになっている。
 これがリンゴじゃないかな。もしくはブラックボックスから得られた情報そのもののことかもしれない。まさに闇に浮かぶ光明になる可能性がある」

 すると、リンゴが腐るとは?

「ブラックボックスの録音内容は公開されないことが普通なんだ。JALのあの事故の時の録音も未だに全体は公開されていない。本来ならそのままお蔵入りのはずだった。

 ところが事故からしばらくして、墜落までのコックピットの様子の録音を編集したものが報道機関へ一斉にばらまかれた。出所は不明だが、政府関係かもしれない。一時期盛んになった陰謀論、自衛隊がミサイルを誤射したとかいうのを鎮静化する目的だったのだろうが、あまり有効だったとは思われない。むしろ、編集で不都合な部分を隠したのだろうという疑惑を呼び、ブラックボックスの録音全部を公開しろとの突き上げが激しくなったが、結局、今も完全公開は行われていない。

 真相は仕舞い込まれて関係者全員がこの世を去るのを待っている。これを称して腐らせると言ってるのかもね。”真相は墓まで持って行く”というセリフも一時期流行りましたなぁ」

 なるほど、政治的判断による秘匿で真相が伝わらなくなる危険性を指していると。

「まぁ、すべては俺の不謹慎な妄想です」

 航空機事故の被害者の皆さまのご冥福をお祈り申し上げますと共に遺族の皆様に心よりお悔やみ申し上げます。

 では、また。

アテクシ
 &

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