男女比崩壊ものは多い。だが、この作品はハーレムではなく「人間関係の摩擦」を描いていた。
ランキング巡回をしていると、ときどき「これは少し毛色が違うぞ」と感じる作品に出会う。
今回紹介したいのは、そんな例外的な一作だ。
『男女比が壊れた世界でギスギスする話』
https://kakuyomu.jp/works/822139837919807587「男女比が壊れた世界」という設定は、いまや一つのテンプレになっている。
多くの場合は、男性に都合の良いハーレム構図へと収束していく。
しかし、この作品は明らかに空気が違う。
タイトル通り、とにかく「ギスギス」している。
そしてその理由が、妙に納得できてしまうのが怖い。
極端な社会構造の中で、登場人物たちは決して都合よく動かない。
それぞれの思惑、打算、戸惑いがぶつかり合いながら関係が形作られていく。
主人公の立場も、よくある「男が希少だからモテる」という単純な構図ではない。
むしろ、その立場ゆえの重さや息苦しさが強く描かれている。
この世界では、男性は「社会奉仕スコア」によってランク付けされる。
女性は能力で、男性は社会奉仕で評価される社会だ。
その価値観は、作中でこう語られている。
|男女はしばしば、歯車と機械油に例えられる。
|実際に社会を回すのは女だが、男という機械油がなければうまく回らない。
男女比が崩壊した社会では、男性は希少な存在であると同時に、社会を回すための「潤滑油」として扱われる。
当然そこには激しい競争や派閥も生まれる。
主人公を巡る人間関係は、まさにタイトル通りの「ギスギス」だ。
さらに面白いのは、この世界の背景が学園の授業という形で少しずつ語られる点だ。
歴史や政治体制の説明が、そのまま世界観の奥行きになっている。
男女比が崩壊した社会は、私たちの知る社会とはまったく異なる構造を持っている。
その世界観の構築がとにかく見事だ。
社会制度・価値観・評価基準が一貫しており、「この世界ならこうなる」と思わせる説得力がある。
まさに私が好む、物語のリアリティである。
テンプレをなぞるのではなく、
その社会で人がどう生きるのかを描こうとしている作品だ。
男女比崩壊ものはカクヨムでも珍しくない。
だからこそ、この作品のアプローチには新鮮さを感じた。
男女比崩壊という設定を「都合のいい舞台装置」にせず、歴史ある「社会構造」にまで昇華している点が、この作品の最大の特徴だと思う。
「男女比崩壊もの」というジャンル自体への見方が少し変わった。
ランキング巡回をしていると、なかなか「これは面白い」と思える作品には出会えない。
だからこそ、こういう作品に出会うと嬉しくなる。
そしてこの作品は、私がレビューを書き始めるきっかけになった一作でもある。
もちろん☆3だ。
https://kakuyomu.jp/works/822139837919807587/reviews/822139840771405459初めてのレビューでは、この作品の良さを十分に伝えきれなかった。
だからこそ、こうして改めて紹介してしまった。
人間関係の駆け引きや、価値観や立場の衝突によって生まれる緊張感を楽しめる読者には、特におすすめできる作品だ。
巡回を続ける理由は、きっとこういう作品があるからだ。
さて、次はどんな作品に出会えるだろうか。
今日もまた、ランキング巡回の続きだ。