こんばんは。通院モグラです。
この度はですね、ダラダラ書いていたラジオ編に、なんとなんと…
遠部右喬 先生(
https://kakuyomu.jp/users/SnowChildA)
からお便りを頂いてしまいました!!👏👏
わ〜…!!先生こんなノートにまでいつもお立ち寄り頂きありがとうございます…!!
お礼になるかわからないのですが、先生のお作品を一作お借りして、このラジオ内でキャラたちが読書会をやる…みたいな展開を作っていたのですが、文字数の関係で別枠放送にいたします😂
というわけで第3回目のラジオ編になります。
遠部右喬先生、お便り本当にありがとうございました!
◤Eden/ラジオ編③
深夜の救難ゆる談義◢
第三夜「モテる奴はだいたい面倒くさい」
(SE:ジャンクなシンセのジングル。遠くで回るローター音。無線ノイズ。誰かが缶を机に置く、軽い金属音)
ハンニバル「みなさんこんばんは。
時刻は深夜。人間の判断力が少しずつ柔らかくなって、理性の端っこからぽろぽろ欠け始める時間帯です。
そんな危うい耳元に、今夜もナイトフォール機内からぬるっとお邪魔します。
『J-MET12プレゼンツ・深夜の救難ゆる談義』のお時間でーす」
(SE:ぱちぱち。今日は妙に拍手が多い)
ハンニバル「お相手は、患者は助ける、書類は追い詰められてからやる、夜中になると口がさらに軽くなる女、J-MET12主席医官ハンニバルです」
トリガー「最後の一文だけ明確な自己申告だな」
ハンニバル「自覚のある女は強いの。
そしてこちら、どうでもいい話題になると露骨に生命活動が省エネになる我らが指揮官、トリガー大佐」
トリガー「番組の必要性をまだ理解していない。トリガーだ」
ハンニバル「安心して。理解してないのに毎回来てる時点でだいぶ付き合いがいいから。
そしてこちら。黙って立ってるだけで“近づくと多分ただでは済まない”みたいな威圧感があるのに、報告書だけは無駄に綺麗で、白米の話になると反応速度が上がる、私の専属護衛、エデンくんです」
エデン「…エデンです」
ハンニバル「よし。今日も開口成功」
トリガー「機械の起動確認みたいな扱いだな」
エデン「……前回より、立ち上がりは早いと思います」
ハンニバル「えらい。自己分析までできる。
この番組、回を重ねるごとにエデンくんの音声出力がちょっとずつ育っていくのが見どころです」
トリガー「見どころではない。聞きどころだ」
ハンニバル「細かいこと言うな。深夜ラジオだぞ」
トリガー「お前が始めたんだろうが」
ハンニバル「そうだよ。だから雑に進行しても許されるの」
(SE:紙をぱさりと広げる音)
ハンニバル「さて。皆さん。ついに来ました」
トリガー「何がだ」
ハンニバル「本物のおたよりです」
トリガー「本物?」
エデン「……実在したんですか」
ハンニバル「ちょっと待って。なんで二人とも同じ温度でこの番組の根幹を疑うの。
来たの。外部から。おそらく人類から。たぶん。少なくとも看護兵の悪ノリにしては字面が整ってる」
トリガー「判定基準が曖昧すぎる」
ハンニバル「深夜ラジオなんてそういうものです。
では記念すべき第三夜、読み上げます」
(SE:わざとらしい咳払い)
ハンニバル「ラジオネーム、“猫の下僕”さんからです」
エデン「……強い」
トリガー「勝てる気がしない名前だな」
ハンニバル「いいよねえ。潔い。実にいい。
“私は猫に支配されています”、“家ではあの毛玉が法です”、“生活の優先順位で私が下です”っていう情報が、たった4文字で全部伝わる」
トリガー「情報圧縮の技術が高い」
ハンニバル「しかも“猫好き”じゃなくて“猫の下僕”だからね。愛玩ではない。服従。関係性が完成してる」
エデン「……猫が上です」
ハンニバル「そう。上。絶対上。たぶん朝は猫の都合で起こされ、座ろうとした椅子は先に取られ、作業中のキーボードには当然のように前足が置かれる」
トリガー「ずいぶん具体的だな」
ハンニバル「分かるからだよ。ああいうのは負けた顔してるもん、名前から」
エデン「……でも、多分、嬉しそうです」
ハンニバル「それ。そこなの。支配されてるのに幸せそう。完全に手懐けられてる」
トリガー「もはや質問に入る前から分析が長いな」
ハンニバル「名前って大事だから。
で、この“猫の下僕”さん、質問も実にいいんですよ。聞いてください」
(SE:紙を指で整える音)
ハンニバル「質問1。“J-MET12で一番モテるのはどなたでしょう??”
質問2。“J-MET12で一番歌が上手いのはどなたでしょう??”
以上です」
(SE:ローター音の隙間に、ほんの一拍の沈黙)
トリガー「急に平和だな」
エデン「……難しいです」
ハンニバル「いいよねえ。“戦場医療の実態を教えてください”でもなく、“現場で最も重要な資質は何ですか”でもなく、“誰がモテますか”“誰が歌うまいですか”なの、最高。人間がちゃんと余白を持って生きてる感じがする」
トリガー「余白というより野次馬根性だろう」
ハンニバル「それも人間味だよ。
よし、じゃあ今夜はちょっとゆるめに行きましょう。たぶん。たぶんね」
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■おたより①「J-MET12で一番モテるのはどなたでしょう??」
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ハンニバル「はい。まずはこれ。いやあ、難しいね。J-MET12って“近寄りやすさ”の時点でかなり減点される人材が多いから」
エデン「……荒れます」
トリガー「既に嫌な予感しかしない」
ハンニバル「こういうのはね、最初に地雷原だと分かっているぶん、まだ平和なの。本当に危ないのは“自分は関係ないと思ってる人が後から傷つくケース”だから」
トリガー「何の統計だそれは」
ハンニバル「人生。
というわけで、自己申告制でいきます。私は私だと思います」
トリガー「図々しい」
ハンニバル「図々しくない。現実だよ。
話しかけやすい、明るい、ノリがいい、気も強い、現場でも頼れる、甘いもの好きで親しみやすい。かなり強い」
トリガー「最後から二つ目だけ実務で、最後だけ急にコンビニ前の会話だな」
ハンニバル「甘いもの好きは大事でしょ。人間味が出るじゃん」
エデン「……患者からは、人気あります」
ハンニバル「ほら見ろ!」
トリガー「それは“モテる”ではなく“助けてもらったから信頼している”だ」
ハンニバル「命を助けて好感度が上がるなら正当な票だよ。なんでそこだけ無効試合なの」
トリガー「医療行為で恋愛市場を荒らすな。統計が汚染される」
ハンニバル「なにその冷徹な選挙管理委員会みたいな顔。じゃあ大佐、自分は誰だと思うわけ」
トリガー「ミロクだろう」
ハンニバル「急に番組外から優勝候補を投げ込むな」
エデン「……強いです」
ハンニバル「分かるけど!でも今はこの三人で喋ってるんだから、せめて少しは空気を読め!
……いやでも、分かる。確かに強い」
トリガー「だろう」
ハンニバル「強いよ。圧倒的に強い。
“結婚したいランキング”、“実家に連れて行っても安心ランキング”、“体調崩した時にいてほしい人ランキング”全部上位だよ、あの人」
エデン「……味噌汁、うまそうです」
ハンニバル「評価軸がもう完全に生活なんだよなあ」
トリガー「だが的確だ」
ハンニバル「しかもミロク、夜勤明けでも“夜勤明けの亡霊”じゃなくて“ちゃんと大人”なんだよ。あれすごい。私は夜勤明けだとだいたい目が乾いて語彙が荒れる」
トリガー「普段と大差ないな」
ハンニバル「普段より二割増しだから。あと看護兵たちから“親父”って呼ばれてる安心感がすごいのよ。あれは恋愛票というより、国家基盤みたいな信頼」
エデン「……インフラです」
ハンニバル「そう。インフラ系モテ。途切れると困るやつ」
トリガー「お前たちの分類が雑なのか細かいのか分からん」
ハンニバル「じゃあ部門分けしよう」
トリガー「案の定だ」
ハンニバル「“モテる”には種類があるから。ここを曖昧にすると戦争になる」
トリガー「もう始まっている」
ハンニバル「まず、“話しかけやすくて、そのまま懐かれやすい部門”は私」
トリガー「異論はない。うるさいが接近はしやすい」
ハンニバル「毎回“うるさいが”を接頭辞みたいに付けるな」
エデン「……でも、話しやすいです」
ハンニバル「ほら! エデンくん票獲得!」
トリガー「そいつは単にお前の声量に割り込む隙がないだけだ」
ハンニバル「評価が邪悪。
次、“遠巻きに見て勝手に理想を盛られる部門”はエデンくん」
エデン「……え」
ハンニバル「だってそうでしょ。
背が高い。顔がいい。無口。威圧感がある。強い。なのに書類は丁寧。患者搬送も乱暴じゃない。これで盛られないわけがない」
トリガー「無駄口が少ないぶん、周囲が勝手に幻想を積む」
ハンニバル「そう。喋らない美形は危険なんだよ。
周りが勝手に“実は優しい”“実は動物に好かれる”“実は子供にだけ少し柔らかい”って、どんどん脚色していく」
エデン「……何をそんなに、勝手に」
ハンニバル「人格」
トリガー「だいたい人格だな」
ハンニバル「あと過去。黙ってる人には、みんな好き放題にドラマを盛るから」
エデン「……迷惑です」
ハンニバル「でも絵になるからしょうがないの」
トリガー「本人の許可がないぞ」
ハンニバル「許可なく始まるのが人気投票です。
で、“絶対近寄りたくないのに、なぜか気になる部門”はトリガー大佐」
トリガー「不名誉すぎる」
ハンニバル「いやいや、強いでしょこの部門。
顔がいい、声がいい、操縦が異常にうまい、頭も切れる、階級も高い。なのに性格が全部を墜落させる」
エデン「……近寄りがたいです」
トリガー「お前まで言うか」
ハンニバル「でもいるんだよ、世の中には。“冷たくあしらわれたい”“見下ろされたい”“でもたまにだけ優先されたい”っていう、ちょっと手のかかる層が」
トリガー「番組をどこへ降ろす気だ」
ハンニバル「深夜だよ? 多少は滑るよ。
というわけで、総合すると――」
トリガー「エデンだな」
ハンニバル「は?」
エデン「……え」
トリガー「事故率込みで一番票を集めるのはこいつだ。
話しかけにくいぶん、遠くから好かれる。無駄口が少ないぶん、勝手に解釈される。見た目の圧に反して、書類は丁寧で、患者搬送も静かだ。救われた側の印象も悪くない。最も無自覚に票を積む」
ハンニバル「分析が生々しい! やだこの大佐、モテ市場を冷静に観測してる!」
エデン「……積んでる覚えは、ないです」
ハンニバル「そこだよそこ。“積んでる覚えないです”がもう強いの。天然の暴力。
くそっ、悔しいけど分かる。たぶん総合一位エデンくんだわ」
エデン「……納得、してないです」
トリガー「安心しろ。本人の納得は不要だ」
ハンニバル「でも私、患者人気部門一位だから」
トリガー「部門を増やして延命するな」
ハンニバル「延命は私の専門です」
(SE:妙に近くで笑いを堪えるような息。たぶん誰かが咳払いで誤魔化している)
―――――――――――
■おたより②「J-MET12で一番歌が上手いのはどなたでしょう??」
―――――――――――
(SE:紙をめくる音。機体の奥で金具が小さく鳴る)
ハンニバル「はい次。二つ目の質問。
『J-MET12で一番歌が上手いのはどなたでしょう??』
来ました。ついに来た。深夜ラジオに必要なやつ。戦術でも医療体制でもなく、歌唱力ランキングです」
トリガー「番組の格が急落したな」
エデン「……でも、平和です」
ハンニバル「そう。平和って素晴らしい。血が出てない。今のところ。で、これね。昔なら“知らん、全員勤務中でそんな暇ない”で終わってたんだけど――」
トリガー「嫌な前振りだな」
ハンニバル「最近公開されたじゃないですか。我らがテーマソングが」
エデン「……証拠が出ました」
トリガー「その言い方をやめろ」
ハンニバル「まずこれ。トリガー大佐のテーマソング、“Glass Sky”」
エデン「……タイトルからもう地面にいません」
ハンニバル「そうなの。高いのよ。ずっと高い。
何? “Glass Sky”。空がガラス。割れそう。薄い。冷たい。詩的。なのに中身は、ずっと上空で生殺与奪の角度決めてる」
トリガー「雑すぎる要約だな」
ハンニバル「でも合ってるでしょ。歌詞もさ、“ベクトル”“フレーム”“落下を忘れさせる”“空を薄く保つ”みたいな、ずっと高高度終末ポエムなんだよ」
エデン「……景色が遠いです」
ハンニバル「そう、それ。血とか肉とかじゃなくて、“線”とか“角度”で命の話してるの。この時点でまず、歌のジャンルが“人の心があまり近くにいないやつ”」
トリガー「失礼だな」
ハンニバル「でも女声コーラスまで入ってるじゃん。妙に神聖っぽくて、無駄に完成度高いし。あれ聴いた瞬間、私こう思ったもん。
“あ、こいつ絶対歌うと上手いやつだ”って」
トリガー「なぜそうなる」
ハンニバル「だって下手な人のテーマソング、あんなに“空が冷たい概念”みたいにならないよ。上手い人って、自分の音程の正しさに守られてるから、ああいう余裕のある高所から降ってくる感じになるの」
エデン「……分かります。指揮官の曲、揺れないです」
ハンニバル「そう! 揺れない!
感情はわりと燃えてるのに、音像がずっと冷たいの。最悪。似合いすぎる」
トリガー「褒めているのか貶しているのか、毎回判別に困るな」
ハンニバル「両方だよ。愛だよ。
で、対するこちら。私のテーマソング――“CALL ME HANNIBAL”」
トリガー「急に治安が終わる」
エデン「……冒頭からもう手術です」
ハンニバル「“Cut. Clamp. Breathe. Stay.”
はい、イントロ四単語で胸が開きました。景気がいいねえ」
トリガー「お前の曲だけ、最初から最後まで患者が近すぎる」
ハンニバル「そうなのよ。
トリガーの曲が“上空から世界を一枚で見てる音楽”なら、こっちは“患者の肋骨の隙間から中を覗いてる音楽”なの」
エデン「……かなり近いです」
ハンニバル「ずっと近い。ずっと暑い。ずっとうるさい。しかも歌詞が“切る”“引っ張る”“縫う”“引きずり戻す”“Rip it out”だからね。もはや歌というより処置」
トリガー「外科ラップか何かか」
ハンニバル「救命パンクです。
で、ここ大事なんだけど、私の曲って歌が上手いというより、“勢いと手数とブラックジョークで押し切る現場型”なのよ」
エデン「……少佐らしいです」
ハンニバル「でしょ?ちゃんとリズム感はある。ベースやってたし。ノリも悪くない。でも“丁寧に聴かせる歌”っていうより、“お前まだ死ぬなって怒鳴りながら刻む歌”なの」
トリガー「実態に即しているな」
ハンニバル「やかましいわ。
つまり、音楽性の違いで言うと――
トリガーは“高高度・冷徹・女声コーラス付き終末系”。
私は“血まみれ・至近距離・術中トーク付き救命乱打系”」
エデン「…同じ部隊と思えません」
ハンニバル「ほんとそれ。なんで同じJ-MET12なのに、片方は“ガラスの空”で、片方は“肘まで突っ込んで死を引きずり出す”なんだよ。統一感が迷子なんよ」
トリガー「現場でも統一感はないだろう」
ハンニバル「それはそう。
で、質問に戻ります。“誰が一番歌が上手いのか”」
エデン「……テーマソング審査方式ですね」
ハンニバル「そう。証拠は提出された。法廷は開かれた。私の見解を言います。
純粋な歌唱力なら、たぶんトリガーが一番上手い」
トリガー「不本意だ」
ハンニバル「反論は?」
トリガー「ない」
ハンニバル「ないんかい。
いやだって、あの曲さあ。本人が歌う前提で考えると、絶対に声がブレないのよ。高いところから、温度だけ下げて、感情を一回ガラス越しにしてから落としてくるタイプ」
エデン「……似合います」
ハンニバル「でしょ?
私はたぶん、ライブだと強い。でも“歌が上手い”で採点されると、勢いで誤魔化してる部分がある」
トリガー「自覚はあるんだな」
ハンニバル「あるよ。私は歌うというより煽るのが向いてる。観客に“お前らまだ倒れるな!”ってやる側」
エデン「……それは少し見たいです」
ハンニバル「でしょ?
で、エデンくん。君は歌うというより、どう考えてもドラム。無駄口叩かず、一定で、重くて、必要な一発だけ確実に入れてくる。完全にドラム」
トリガー「分かる」
エデン「……叩くのは、分かりやすいです」
ハンニバル「返答まで打楽器なんよ。
たぶんエデンくんのテーマソング、低いドラムが“ドン……ドン……”って鳴って、途中で金属音が混ざって、サビで急に全部静かになるやつ」
トリガー「やけに想像できるな」
エデン「……あまり明るくはなさそうです」
ハンニバル「うん、全然明るくない。でもめちゃくちゃかっこいい。
歌詞あっても多分少ない。“了解”“行けます”“下がってください”くらいしか言わない」
エデン「……曲として成立しますか」
トリガー「むしろ成立しそうなのが腹立たしいな」
ハンニバル「でしょ?
だからもしJ-MET12でバンド組むなら、
歌唱力最強はトリガー。ベースと煽り担当が私。ドラムと無言の圧がエデンくん」
エデン「……ギターがいません」
ハンニバル「そこは誰か看護兵を徴兵しよう」
トリガー「部隊運用が雑すぎる」
ハンニバル「でもさあ、ちょっと夢あるよね。私のテーマソング、“CALL ME HANNIBAL”」
トリガー「嫌な予感しかしないな」
ハンニバル「救急外来の自動ドアが開いた瞬間に流したくない?」
エデン「……やめてください」
トリガー「患者が帰る」
ハンニバル「なんで!?」
トリガー「なんで分からない。深夜の救急外来。自動ドアが開く。寒い風が入る。そこでいきなり――“Cut. Clamp. Breathe. Stay.”だぞ」
エデン「……だいぶ怖いです」
ハンニバル「いやでもほら、“来たな、戦場の女医”感あってかっこいいじゃん」
トリガー「患者視点では“帰れるうちに帰ろうかな”だ」
エデン「……軽症の人は、たぶん逃げます」
ハンニバル「選別にもなって便利では?」
トリガー「医療倫理を雑に運用するな」
ハンニバル「いやだって絶対似合うって。
自動ドア、しゅーって開いて、白い光の中から私が出てきて、“They named me after hunger. Cute.”」
エデン「……怖いです」
トリガー「完全にラスボスの登場だな」
ハンニバル「えー。じゃあ何、トリガーの方ならいいの?」
トリガー「もっとだめだ」
エデン「……だめです」
ハンニバル「なんでよ。
救急外来の自動ドアが開いた瞬間に女声コーラスがふわっと入って、無機質な高音が鳴って、奥から指揮官が来たら、すごいじゃん」
トリガー「すごいの方向が終わっている」
エデン「……病院ではないです」
ハンニバル「たしかに病院じゃなくて、“空から概念が降りてきた何か”にはなるか」
トリガー「患者がさらに帰る」
エデン「……付き添いの人も帰ります」
ハンニバル「じゃあやっぱ私の方がまだマシでは?」
トリガー「比較対象が悪すぎる」
ハンニバル「むう。でもエデンくんのテーマなら、いけるかもよ?」
エデン「……俺のですか」
ハンニバル「うん。自動ドアが開いて、低いドラムが“ドン……ドン……”って鳴る。無言で一九二センチが立ってる。患者、逆に“この人に従えば助かるかもしれない”ってなる」
トリガー「圧がすごいな」
エデン「……あまり安心感はないと思います」
ハンニバル「いやでも、“一番歌が上手いのはトリガー、でも病院の自動ドアに一番似合うのはエデンくん”みたいな新しい評価軸が生まれる」
トリガー「生まれなくていい」
エデン「いりません」
ハンニバル「ちぇー。じゃあ無難に、受付の呼び出し音だけにするか」
トリガー「どこに落とし所を探しているんだ」
ハンニバル「夢を諦めきれないだけだよ。
でもまあ、実際のところ、救急外来の自動ドア開いた瞬間に必要なのはテーマソングじゃなくて、ちゃんと動く人員と空いたベッドと、壊れてない吸引器と、あと静かな心です」
トリガー「最後だけ妙にまともだな」
エデン「……それが一番大事です」
ハンニバル「でしょ。
だから結論。J-MET12で一番歌が上手いのは、たぶんトリガー大佐。私はライブ映えはするけど治安が悪い。エデンくんはドラムが似合いすぎて、もはや歌う前提から外れている」
エデン「……はい」
トリガー「雑だが、だいたい合っているな」
ハンニバル「猫の下僕さん、おたよりありがとうございました。質問ひとつでここまで部隊の温度差と音楽性の統一感のなさが露呈するとは思いませんでした」
エデン「……ありがとうございました」
トリガー「猫には逆らうな。以上だ」
ハンニバル「なんで最後だけ人生訓みたいに言うんだよ」
(SE:紙を机に置く音。遠くでローター音がわずかに深くなる)
ハンニバル「というわけで今夜は、
“J-MET12で一番モテるのは誰か”
そして
“J-MET12で一番歌が上手いのは誰か”
この二本でお送りしました。
いやあ、ようやくラジオらしい回だったね」
トリガー「途中から救急外来の自動ドアにテーマソングを導入する愚案が出たがな」
エデン「……かなり危なかったです」
ハンニバル「深夜ってのはね、たまにそういう良くない発想が一番輝く時間帯なの。
起きて働いてる人は、変な思いつきを実行に移す前に一回水を飲んでください。
寝られる人は、寝られるうちに寝て。深夜は人をロマンチックにもするけど、だいたい判断も鈍らせるので」
トリガー「空は今夜も静かだ。このまま余計な音楽演出なしで朝を迎えたいものだな」
エデン「……次回は、病院の自動ドアを改造しない話題だと助かります」
ハンニバル「ダメ出しが強い。
それじゃ今夜はこのへんで。ナイトフォールの片隅から、ハンニバルと」
トリガー「トリガーと」
エデン「……エデンでした」
ハンニバル「また次の深夜に。生きてたら、聞いてねー」
(SE:チープなエンディングジングル。安い電子音が無線の砂嵐に食われ、最後に短いビープ音で切れる)