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    「余白の声」

    「誰にでもできる仕事」とは、果たして誰の視点で語られた言葉なのか。 本作『余白の声』は、障害者であり福祉職員であり、かつて警備員・劇団員として現場に立ってきた筆者が、自身の経験と怒りを、冷静かつ痛烈な皮肉と共に綴った〈証言の書〉である。舞台整理という「ささやかな依頼」をきっかけに、無償の善意は搾取へと変質し、やがて当事者は“便利な使い捨ての駒”として葬られていく。その姿は、まるで粛清されたエジョフのように――。 しかし本書の本質は、単なる告発や復讐ではない。底辺労働と呼ばれる現場の中にある「誇り」と「矜持」、そしてそれを平然と踏みにじる構造への批評である。 「簡単な仕事」はない。「感動」は剥き出しの差別心の包装紙に過ぎない。「虫ケラ以下」と見なされた人々が、この社会を支えている――。 職場、劇場、公共空間、SNS、そして人の心の奥底に横たわる「差別」や「偏見」が、筆者の視点から鮮烈に暴かれる。静かで、鋭く、そして深く傷ついた者の声は、やがて読者に問いかける。 「あなたの目に見えている“当たり前”は、誰かの血と涙の上に立っているのではないか」と。 これは「福祉」「警備」「障害」「創作」――そのいずれにも関わる人々に届けたい、現代の余白を埋める物語である。

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  • 7作品

    「鉄路断章」

     本書は、かつて鉄道現場に立ち続けた作者・秋定弦司による、静かな祈りと記録の書です。  著者は六年間、列車見張員・工事管理者・運転取扱補助員として線路のそばに立ち、日々「今日も何事もなく終わりますように」と祈り続けてきました。  時速百三十キロで駆け抜ける列車の風圧、油と鉄の匂い、作業後に交わす缶コーヒーと笑い――それらはすべて「生きている」という報告であり、祈りの証でした。  時には軽口をたたき、またある時には声を荒げることもありましたが、それでも誰もが命を預かる責任のもとで、ただ黙々と線路を守り続けていました。  本書は、鉄道趣味や技術解説ではなく、「人が命を守り合う現場」の記録として綴られています。著者は触車事故を語ることを固く拒みますが、 それは沈黙による敬意であり、祈りの継続でもあります。  誰かを断罪するでも、賛美を求めるでもなく、ただ「明日も全員が無事でありますように」と願う――線路と祈りを結ぶ、現場文学の静かな前書きです。  しかしながら、あらかじめ申し上げます。その愛がときに熱を帯びすぎ、線路の内側に持ち込んだ者に対しては、私は激しい怒号を発します。  なにとぞ容赦ください。

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