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ルパンVSコナンは、いつからあったのか

実は100年以上前に、すでに“怪盗VS名探偵”は実現していた

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「ルパン三世VS名探偵コナン」といえば、2009年のテレビスペシャル、そして2013年の劇場版で有名です。

あの作品、内容的には「VS」と言いつつ、実際にはガチガチの対決というより、お祭り感の強い豪華コラボという印象を持った人も多いのではないでしょうか。

こういう怪盗と名探偵の夢の競演って、現代になって急に生まれたものではないようです。むしろ、その原型みたいなものは、100年以上前にすでに存在していました。

その組み合わせこそ――アルセーヌ・ルパンVSシャーロック・ホームズ。

今回は、「ルパンVSコナン」のルーツをたどるような気持ちで、この古典的な対決を見ていきたいと思います。

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アルセーヌ・ルパンは、フランスの作家モーリス・ルブランが生み出した人気キャラクターです。

怪盗でありながら、どこか上品で、洒落ていて、変装の名人。しかも単なる悪党ではなく、義賊っぽい面もある。「憎めないどころか、むしろかっこいい泥棒」というキャラクター性が、当時の読者に大ウケしたわけです。

そして日本の読者としては、やはり気になるのが「ルパン三世」とのつながりです。
ルパン三世はもちろん、このアルセーヌ・ルパンの“孫”という設定なのは周知のとおりです。

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怪盗として人気を集めていたルパンですが、作者ルブランは彼にとんでもない相手をぶつけます。それは、シャーロック・ホームズです。

今でこそ「人気キャラ同士の共演」は珍しくありませんが、当時これをやるのはかなりインパクトがあったはずです。すでに世界的な名探偵だったわけでして。

ただしここで少しややこしい話があります。ルブランは最初、本当に「シャーロック・ホームズ」という名前で出してしまったのですが、その後の改訂版で、エルロック・ショルメというもじり名に変わっていきます。

このへんは有名な逸話として、ドイル側からの抗議や権利の問題があったとされ、後にショルメという名前に変更されたとされています。

細かい経緯には諸説ありますが、少なくとも最初はホームズ名義、のちにショルメ名義になった、という流れと見ておくといいと思います。

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では実際に、ルパンとホームズ(ショルメ)がぶつかる作品をざっくり見てみます。

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1. 『遅かりしシャーロック・ホームズ』

まずはこれ。タイトルからしてすでに攻めに入ってますねw

「遅かりし」というくらいなので、要するにホームズが登場したときには、もうルパンが一歩先に行っている。そんなニュアンスの話です。

名探偵ホームズがちゃんと活躍しそうな雰囲気はあるのに、結局はルパンのほうが上手をいくという、かなりルパン側の痛快さが前面に出た一編です。

勝敗で言えば、ルパンが優勢に書かれている印象がします。

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2. 『金髪の美女』

こちらは、ショルメ名義での本格対決ものとして有名です。

ルパンが関わる事件を追って、名探偵ショルメが動きます。ショルメは論理で迫り、ルパンは変装や策略でかわすという、まさに「怪盗VS名探偵」という感じが濃く出ています。対決ものとしてかなりおいしい作品ですね。

ただし、読んでいて感じるのは、やはりこれはルパンの物語だということ。
ショルメは強いし有能なのですが、最終的な華はどうしてもルパン側にあります。

印象としては、引き分け気味だけどルパンがやや優位です。

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3. 『ユダヤのランプ』

これもショルメが関わる代表作のひとつです。

怪しい品物、奇妙な事件、そこにルパンとショルメが絡んできます。話の構図としては前作に近く、ショルメは確かに名探偵なのですが、やはりルパンが主役の舞台であることは変わりません。

ショルメはルパンを追い詰めるところまではいくのですが、最後に読者が「やっぱりルパンだな」と思うようにできているんですね。

ここも総合的にはこれまたルパンの一枚上手の構成と見ていいと思います。

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ここまで見るとわかるのですが、「怪盗と名探偵」という発想自体が、すでにこの時代に完成していたわけです。

しかも面白いのは、これが単なる思いつきの一発ネタではなく、かなり強力な構図として機能していることです。

・怪盗は自由で華がある
・名探偵は論理と秩序の側にいる
・だから、ぶつけるだけでみたくなる

とはいえ、ルパンとホームズの対決を見ていて感じるのは、やっぱりホームズ側が少し不利だな、ということです。

なぜなら、これはホームズシリーズではなく、あくまでルパンシリーズだからです。

つまり、リングに上がっている時点で、すでにルパンのホームゲームなんですね。
だからホームズやショルメは、弱い相手として出てくるわけではありません。むしろ逆です。

「こんな超有名な名探偵ですら、ルパンには苦戦する」

そう見せるために投入された、最高級のライバルということなのでしょうか。単にルパンが無双するだけではなく、相手がホームズだから価値が出るってわけですね。

こうして見ると、「ルパン三世VS名探偵コナン」って、現代に突然現れた企画というより、むしろものすごく正統派の伝統芸なんじゃないかと思えてきます。

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しかしながら、現代のエキシビション的なコラボと違って、ルパンとホームズの競演は、もう少し生々しいです。

人気キャラ同士をぶつけるだけでなく、ある意味ではルブランがドイルの看板キャラに対抗する形になったとも解釈できます。

そう考えると、これは作中の「ルパンVSホームズ」であると同時に、ちょっとメタな視点では、作者同士の人気キャラクターのぶつかり合いという見方もできるかもしれません

このへんの危うさは、古典ならではの面白さかもしれません。

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「ルパンVSコナン」はモダンに見えて、実はとても伝統的な組み合わせでした。そう考えると、また少し見え方が変わってきますよね。

皆さんは、ルパンとホームズならどちらを応援したいですか?

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

2件のコメント

  • コメント失礼します。

    『怪盗VS名探偵』という構図は面白いですね。訴えられてショルメになったのは勉強不足で存じ上げなかったのですが……言うなれば二次創作にも似たものですが、「猪木と馬場はどちらが強いか」といったドリームマッチのようです。

    後年のルパン三世と江戸川コナンは〝共闘〟ですね。砂姫明日香(『超少女明日香』)と小松崎蘭(『紅い牙』)のような……。

    作者が同一で世界も同一だとキャラクターの再登場として使い易いかも知れませんね。
    ただ、〝対決〟となるとそこで終わった物語を再始動させる、なかなか骨の折れる作業だと思います。

    貴重なお話ありがとうございました。
  • コメントありがとうございます!

    おっしゃる通り、「怪盗VS名探偵」という構図は、いわばドリームマッチ的な魅力がありますね。「猪木と馬場」という例えも非常にしっくりきました。

    また、ご指摘の通り、ルパン三世VS名探偵コナンなどは「共闘型」の構造で、対決そのものよりもキャラクター同士の相互作用を楽しむ設計になっていますね。

    「対決は物語を再始動させる作業になる」という点も重要で、特にホームズのように完成度の高いキャラクターを他作品に持ち込む場合、ホームとアウェーの問題は避けられないと感じます。

    このあたりも含めて、古典の競演と現代のコラボを比較すると、違った面白さが見えてきますね。

    興味深いコメント、ありがとうございました。
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