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トレモロ 3巻 1章 7話


ギルドのみなは買い物を済ませ、大型ヘリでフィールドワークのキャンプ場に戻った。

ブラストが調達したファイバーネットをネットランチャーやカエサルの砲台に合わせて畳む。持ってみると金属製より軽くて丈夫、塩害にも強い素材でできている。

ウルド博士に教わった通りに犬達は連携して上手に畳む。みなもペアになって、犬達の真似をして畳んだ。

ウルド博士達は疲れた顔で帰ってきた。「バッタの目撃情報を頼りに追いかけたけど、地雷原の上を飛んで行かれて、今日は断念して帰って来たよ。」

ウルド博士はログを再生。夕暮れに飛んで行くバッタの群生相をただ眺めた。

それぞれ明日の会議の為にログチェックを黙々と行った。

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翌日、午後。
スターダスト会議。

クラウン達はディスプレイを出し、スターダスト会議のオンラインロビーに入った。

ウルド博士が開始の挨拶をした。
「ササ!春から協力してくれているギルドのメンバーを紹介します。カルラ様との問答でバッタを優先して食べる様に言ってくれた、クラウン!」

クラウンはぎこちない笑顔で手を振る。画面の向こうで複数人、拍手している。

「昨日はみんなの情報を頼りに追いかけたけど、結局は地雷原に入られて追えなくなりました。そんな問題に協力してくれる、ハニ!」

ハニはポーズを決めた。ハートのスタンプが飛び交う。

「次はブラスト!彼はドローンやアンテナ、ファイバーネットなど、調達から機器の制作もできちゃうスゴ腕。」

ブラストは照れくさそうに手を振る。

「警察の協力要請を危険承知でやってくれる、ギャラクシーの戦士、スノーと虎徹!」スノーと虎徹は合掌した。

乙のスタンプが飛び交った。

「初参加は以上です。先に要点を伝えて、専門的な雑談は後でね。ログとマップを見て下さい。」ウルド博士が進行する。

マップにはネオサンドシティのある中央砂漠区、北東には元保護区、国境の山脈、さらに東に広がる地雷原エリアがある。

ウルド博士は地雷原エリアの南を指した。
「これまでのバッタの飛来情報を頼りに、地雷原の手前に罠を仕掛け、ネットランチャーやカエサルの砲台で広範囲の捕獲作戦にでます。地雷除去はそこから北上して行きます。それと、この件についてはイノセント刑事からお話が。お願いします。」

イノセント刑事は地雷原の北東を指した。
「ササ!地雷原の先に略奪団の根城がある。長年、紛争やテロで地雷原は封鎖されていたが、悪党にとっては追われない事で根城を大きくしている。カルラ様の指摘は警察内部でも間違いないと見ている。“ギルドの協力を得て地雷除去に入る”この事を公開すれば、きっと動きがあるはずだ。まずは地雷原への準備期間に、カルラ様に顔パスをもらったギルドメンバーには偵察を頼みたい。以上です。」

「では、メインロビーはこのままオンラインにしておきます。と、ロビーもたくさんありますので、2時間ゆっくりして下さい。」ウルド博士は椅子から立ち上がった。

昆虫研究者「カルラ様の風になれって話、風なら過去に何度も研究者達が観測してるよな。」

環境活動家「カルラ様のあの感じは場当たり的な対処法ではバッタには勝てないって意味だと思うな。」

農業研究者「150年前、殺虫剤を使い過ぎた年、豪雨が降り、川や海に殺虫剤が大量に流れた時は、雨止めをしばらくしないと言ってカルラ様が飛び立った記録がある。」

研究員「今年は雨止めしてもらえるのだろうか。」

保護区職員「我は大食漢ではないって。カルラ様に申し訳なくて、胸が締め付けられたよ。」

難民包括支援センター職員「カルラ様がいるから、政府も悪党やバッタに真剣に対処せずに来た事への苦言だったよな。」

専門家達の話は続く。

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ウルド博士はブラストの横の椅子に座った。「予算の件はクリアできそうだから、調達をお願いするよ。どんな店か興味あるんだ。見ててもいいかい?」

ブラスト「もちろんです!」

ブラストはカルーセルステーション、パーツ材料店マックスにコールした。

「ブラストー、元気?送ってくれたリストみたよ。3Dプリンター4倍速も揃ってる。エクスプレスで発送するけど他にいるものある?」

「ササ!じゃなかった、うっすー。海沿いだから、塩に触れると強化されるコーティングなかったっけ?」

「すぐ揃える。どんくらいいる?」

「えーっと2?足りないかな、3トン。」

「3トン?!すぐ揃える。ふおっ。」店長は興奮ぎみだ。

「ブラスト今どこにいるの?」

「グリプラのサバンナと砂漠地帯。」

「それで材料の砂はいらないんだ。そういう所、機材がすぐ壊れるから嫌いじゃなかった?ははは。それじゃ、防砂シートもつけないと。」

「それも頼むわ。オレもこーなるなんて想像もしてなかった。けど、ここもいいよ。あ!あと店長、断熱シートもある?」

「それは在庫ある。それも一緒に送る?」

「うん。頼んだ。助かる。予算に入りそ?」

「まだ全然余裕あるよ。この前、買ってくれたドローンの新作パーツ、おまけでつけとくよ。まいど、ありがとね。」

「ありがとー!たのんまーす。」

ブラストはコールを切った。
ウルド博士はうなずいている。

「どしたんですか?」ブラストは聞いた。

「いや、ああいう風に何が必要かわかってくれるの嬉しいよね〜。他所の星なのに全然ふっかけて来ないんだ。」

「あ、店長ね。これ作りたいって言うと、ちょうど良い材料とか分量をいい感じで揃えてくれるんですよ。」ブラストは笑った。

「それと研究員達が機材の質問をあれこれしたがっているんだ。この後、教えてもらえると助かる。いい?」

「もちろんっす!」

ウルド博士は希望していた研究員達をブラストのロビーに招待した。

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ハニのロビー。

巨大岩探しで盛り上がっていた。

研究員「この岩は?けっこうデカいと思います。」

ハニ「んー?おしーい!大きさはいいけど、もう少し丸みがある感じがいいな。」

研究員「はい、はい!これは?こっちの円柱の方。これいけそうじゃないですか?」

ハニ「ホントだ!これいい感じ〜。これにします!」

お目当ての石がみつかって拍手が起きた。

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動植物園のロビーにクラウンとヴァルはいる。クラウンが自然保護区のライブカメラで昆虫相撲を観ていると、ヴァルや研究員達が面白く解説してくれた。

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イノセント刑事のロビー。

警察が公開している情報の更新や、今回捕まえた略奪団の情報を公開した。

招待を受けたスノーと虎徹が入室すると、イノセント刑事はロビーに鍵をかけた。

イノセント刑事「明日、ナオミがレッカーと一緒にカルラ様の爪を回収する事になっている。3つのうち、一つは隣国へ返還、一つはメトロポリタン動植物園に贈呈、一つは売却して地雷除去とバッタ捕獲、動植物の保護と一連の予算に組み込まれる事になった。横取りした形になってすまない。」

虎徹「いえ、横取りなんて思ってないです。拙者の爪も返還すべきかと焦りました。」

「カルラ様は君達に3本爪を託した。それは有効に使ってくれ。ただ、いらない場合は、政府に渡してやってくれ。それ相応の価格で買い取ってくれるそうだ。それとスノーいいか?」

スノー「います。」

「地雷除去の会見を開く時、ギルド代表でスノーに出席してもらいたい。書類にサインするだけだが、この件にギルドが関わっていると印象づけたい。頼めるか?」

「はい。オレでよければ。」スノーは少し緊張した顔で返事した。

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スターダスト会議はそれぞれ賑わった。

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翌日。

ナオミ刑事から呼び出しがあり、みなで警察署に向かった。

ナオミ刑事はモンスターバギー2台とハニのカエサル、カルラの3本爪を回収して戻って来た。

「このままキャリアカーに乗せたまま、兄弟の所に行きましょ!」ナオミ刑事が運転席から大きな声で言った。キャンピングカーでついて行った。

ネオサンドシティの車屋「ブラックゴートガレージ」に到着した。

店からナオミ刑事の兄弟がでてきて、流れる様に3人でキャリアカーから車を下ろし始めた。ナオミ刑事の上の兄ソロモンと下の兄ランガ。

みな挨拶した。

「兄貴、カエサルはかっこよく仕上げて。」

「きっちり仕上げとく。モンスターバギーはパーツ交換して終わりだから、明日にでもアイツの所に納車しとくぞ。」兄弟はキャップを逆に被り直して、早速作業に入った。

ハニが代表して、修理依頼にサインした。

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4日後。

ソロモンから車が仕上がったと連絡が来た。ハニは浮かれた。

スノーと虎徹はモンスターバギーのオーナーにお礼の手土産を持って、キャンピングカーで一緒にネオサンドシティに向かった。モンスターバギーの裏の駐車場でハニと別れた。


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ブラックゴートガレージ。

兄弟はハニが到着するとガレージのシャッターを開けた。

サンドカラーのカエサルは黄緑や黄色、オレンジのラインがペイントされ、ド派手になっていた。

「わ〜!思ってたのと違うけど、これはこれでカッコイイです!バイタミンカラーは元気出ていいかも。」ハニは美しいラインやペイントを近くで見たり、撫でたり、目が輝いた。

しばらくカエサルに見惚れるハニに兄弟は満足そうだ。

修理代金をサインして支払った。兄弟と握手してモンスターバギーの駐車場にピカピカのカエサルで向かった。

ハニの車が見えるとスノーと虎徹は指をさして驚き、手を叩いて喜んだ。

「砲台までイカつくなったな!シシッ!」

「なんと華やかな。この国のボルテージが乗り移った。」

2台はサバンナを駆け抜け、フィールドワーク先に向かった。

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ヴァルは目を輝かせながら待っていた。
「みんな揃ったね〜。もうすぐバッタの群生相がこっち来るよ、バズーカ作戦の準備しよう!」

クラウンはチョコに、スノーはゴーストに、それぞれヘルメットとベストを装着させた。2匹で1つのランチャーを操作する。

ハニはカエサルに乗ってゆっくり所定の位置に着いた。研究員から口笛が鳴る。クラウンとブラストもランチャーやバズーカを抱えながら、ピカピカのカエサルに目を丸くした。

研究員「南から北上してくるわよ。・・・スタンバイ、3、2、1!」

ドカーン!
ドカーン!
ドカーン!
ドーン!
無数の爆発音が全身に大地に響く。

シュババーン。
シュバ!
シュバ!

ファイバーネットはバッタの群生相を絡め取る。その度、大群はうねり、真っ黒い呪いの様に、真昼の空を這う。巨大な揺れる球体の様になった時、ハニもファイバーネットを発射した。

ドパーン!
カラン、ガチャゴン。

ハニは流れるようにエジェクト、装填し、間髪入れずに2発目のファイバーネットを発射した。

ドパーン!
カラン、ガチャゴン。

群生相を塊で掬い取り、大量のバッタの捕獲に成功した。

研究員達と回収ロボットが一斉に進む。
ギルドのみなと研究員達はハイタッチした。

チョコとゴーストの放ったランチャーはクリティカルヒットだった。
クラウンとスノーはご褒美のおやつをあげた。

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続く。

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