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トレモロ 3巻 1章 6話

目の前にカルラが立っていた。
みな驚き慄いた。

「スヴァーハー。賢き者よ、前へ。」
カルラが語りかけてきた。

「しゃべった。」クラウンは小さく驚いた。誰も反応できない。

「スヴァーハー。賢き者よ、前へ。」

ナオミ刑事が目でクラウンに行け!と合図して来た。

「え?僕?大人ってずるい。」クラウンはナオミ刑事に言い、やる気のない感じで少し前に出た。

「はい。カルラ様。」

「賢き者よ。悪党とバッタ、どちらを食べるべきか?」

「へ?え?うーん、どっちも食べて欲しいけど、バッタかな?みんな困ってるし、悪党は僕らで捕まえる事もできるし。」

「我は大食漢にあらず、バッタを優先して食べよう。ならば東の山道の先から、火薬の匂いが鼻につく。賢き者よ、向かうか?」

「あー、うん?うん。」クラウンは考えてからうなずいた。

「ならば、ここを通っても賢き者らは食わずに見逃してやろう。」

「ありがとうございます。ちなみに、答えは変えないけど、逆を選んでたらカルラ様はなんて言ってくれましたか?」クラウンは瞬きした。

「賢き者よ。星の命に感謝し、風になれ。答えてやった、スヴァーハー。武士(もののふ)よ、前へ。」

虎徹はバツが悪そうな顔で、クラウンの横に並んだ。

「左右揃わぬと気持ち悪い。わかるか!」カルラは左手を横に伸ばし翼を広げた。

虎徹は一礼して構えた。
「飛翔!」一斬。
ザリッ!ぼとぼと。クラウンの前に3本の爪が転がった。

「これ貰っていいですか?」クラウンは切り落とした爪をカルラにかざした。

カルラはクラウンをチラと見て、何も言わず、両方の翼を広げ、山頂に飛んで行った。

スノーはクラウンに嬉しそうに言った。「相変わらずちゃっかりしてんな。シシッ。」

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5分後、ヴァルが大型ヘリで到着。ネオサンドシティ近郊の警察、病院エリアに向かった。

イノセント刑事が迎えてくれた。
「親戚や難民サポートが来ています。こちらで物資などお受け取りください。」

クラウン達は難民らと挨拶していると、いきなり砂を投げつけられた。

クラウンは口に入った砂を吐き出した。

「チャラチャラ遊んでたんだろ?あんた達がもっとしっかりしてりゃ、死人は出なかったんだ。」遺族のおばさんの声は震えている。

「なんで救出にこんなに時間がかかるんだ。ちんたらやるな。」遺族のおじさんも怒鳴った。

「そんな!この人達は必死に私達を守ってくれたよ。」助かった難民達は声を上げてくれた。

クラウンが遺族のおじさんとおばさんに言い放った。「他人に期待しすぎ!助けられなかった事が悔しくないとでも?自分でやってみればいいんだ。」クラウンは下を向いた。

スノーが間に割って入った。「力及ばす、すみません。行こう。」クラウンの背中を優しく押しながら歩いた。

スノーは振り返るクラウンに「もう余計な事言うな。」と優しく耳元で言った。

「だって、だって、僕らのせいみたいに、、。」「クラウンの気持ちは分かる。相手も家族を亡くして気が使える状態じゃない。離れよう。」虎徹も横からそっと肩を組み、クラウンはスノーと虎徹に挟まれ、黙って歩いた。

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大型ヘリに乗り、クラウンは不貞腐れて座った。ナオミ刑事が顔を出し「ハニ、レッカーの時にまたね。」手を振った。ハニは複雑な顔のまま、ナオミ刑事に手を振った。

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フィールドワークのキャンプ場。

ウルド博士が大歓迎で待っていた。クラウンはカルラとの問答や爪を持ち帰った事を、10回は褒められて機嫌が直った。

ウルド博士はカエサルが戻るまで、フィールドワークを休みにしてくれた。世話をしてくれたウルド博士に犬達はかなり懐いていた。助手として優秀らしい。

キャンプ場の水浴び場で身を清めた。体中から砂が出て、肌の奥まで水が浸透した。カラフルなスポドリを飲んで、暑さも忘れ、みな深い眠りについた。

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翌朝。
クラウンとブラストのテント。

クラウンは目が覚めて、はっとした。
「僕、カルラ様と悪党を捕まえる約束したって事だよね?ね?」

ブラストはゆすられ、クラウンが何度も聞くので目が覚めた。「そーゆー感じになっちゃったねー。なんでか、昨日ウルド博士とヴァルが張りきってたよね。ふあー。」

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ハニのテント。

ハニにナオミ刑事からコール。
「明後日、レッカーの手配ができたから、みんな署に来てね。車、無事だと良いわね。」

「ナオミ刑事、ありがとうございます。難民の皆さんはどうなりましたか?」

「親戚が迎えに来た人もいれば、物資を受け取って難民キャンプ地に向かった人もいるわ。賢き者に、あんまり気にするなって言っておいて。あ、もし、車の修理が必要な時は私の兄弟が車屋やってるから、紹介するわね。じゃ、明後日。」

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虎徹とスノーはブランチの支度をしている。みなも支度をして集まると、ウルド博士とヴァルがやってきた。「明日スターダスト会議をやるよ。」ウルド博士は嬉しそうに言った。

「なんすか?それ。」スノーは聞きなれない言葉だった。

「そうか。ヴァル、なんて言ったらわかりやすいかな?」ウルド博士はヴァルに聞いた。

「定期的に〜解決が困難な事を、異業種も交えてオンラインで意見交換をしてるんだ。今年も、もうそんな時期なんですね〜。」ヴァルがわかりやすく言った。

「ヴァルありがとう。そう!スターダスト会議にみんなも参加してもらいたい。カルラ様との約束は大きな課題の一つでもある。イノセント刑事を知ってるよね?彼も参加するよ。」

「はあー、良かったー。僕どうしようかと思ってました。」クラウンは涙目になった。

「ブラストのアイデアの前に、ハニに地雷原の対処と、みんなの力を借りてフィールドワーク計画を前に進める内容がメインだったけど、昨日クラウンがすごいお土産を持って帰った。これは是非、各分野のプロの話を聞きたい所だね。」

クラウン達はウルド博士の粋なはからいに自然と笑顔になった。

「じゃ、今日は引き続きフィールドワークの準備とギルドの犯罪専門家にも参加要請出して貰って、明日は午後から会議になるから、みんな頼んだよ!」

「はーい。」「うっす!」

みな元気に返事した。ウルド博士達はバッタの群生相探しと砂漠に仕掛ける罠の準備に向かった。

ヴァルはワクワクしながら言った。「今日はフリーだから、みんなでグリプラステーションに行って、クエスト報告と犯罪専門家に要請出しに行こっか〜?」

「シシッ。ステーションまで、けっこー時間かかりそうだな。」スノーはキャンピングカーを見た。

「大丈夫!大型ヘリ貸してもらってる〜。」

「さすがヴァル!」ブラストはヴァルとハイタッチした。

「じゃあ、買い物もできるね!」ハニは喜んだ。

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みなギルドスーツに着替え、犬達も連れてグリーンプラネットステーションに向かった。

ステーションから緩やかな坂道を登りきると、オシャレなカフェが立ち並ぶ。
アーティストに古くから愛されている青い窓辺のカフェや、石のアーチやドームでできた隠れ家風のカフェ。この隠れ家風のカフェにギルドは併設されている。

中は解放的で広く、ポッドは6台あった。
それぞれポッドに入った。

クラウンはカルラの爪の鑑定を行った。
虎徹の刀の強化素材に有効。
レア素材として1爪16000クレジットで買取可能。

クエスト報告。
バッタの捕獲。トノサマレッドサバクトビバッタの捕獲の特別報酬。
密猟団の撃破。警察への協力。難民救出。

他、個別の報告。
スノー、虎徹。竪琴の捜索、回収。
クラウン、ハニ、ヴァル。蟻地獄の保護。
ブラスト。ウルド博士に指定された調達品。

みな報酬をすべて受け取った。

みな、2回連続で全身が金色に光った。
2レベルアップした。

クラウン、レベル31
ブラスト、レベル36
スノー、レベル25
ハニ、レベル43
虎徹、レベル13
ヴァル、レベル38
になった。

ポッドの退室を押したクラウン。同じタイミングでみなでてきた。ヴァルは2レベルアップに喜び、ノリノリで体を揺らした。
クラウンは虎徹にカルラの爪を一つ渡した。「虎徹さん、刀の強化素材に使えるって。これ1つ渡しとくね。」

「おお!クラウン殿、かたじけない。」虎徹は感謝して懐に入れた。

ハニはカフェのテーブル席を取って、手を振った。スノーも座り、ギルドの犯罪専門家に明日のスターダスト会議の出席要請を出した。

みなドリンクやスイーツを注文し、ティータイムを楽しんだ。

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続く。

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