• SF

トレモロ 3巻 1章 8話



2週間後。

ハニと研究員達は朝からヨガをして気合い十分だ。ヨガの後、研究員達とハニはしっかり水分補給した。

研究員「スッキリしたー。お昼の会見でサインが済めば、いよいよね!無理せず、間も休みながらやろうね。」

「うん!気遣ってくれてありがとう!休みながらやれば3〜4回はいけると思う。」ハニは汗を拭いた。

「もう朝のニュースでお昼に会見やるって告知してたよ。スノーでるんでしょ?生中継、楽しみ。」研究員達も爽やかな笑顔で言った。

⭐️

虎徹はバイクにヴァルと2人乗りして、地雷原の北側の偵察に出た。

「今日は随分、前の方まで見張りを置いて来たね〜。」ヴァルはライオンをつれたアードウルフの密猟者を見つけた。側道でアードウルフはリムジンを山道に誘導している。

悪党達は交代で見張りを置いている。何度か偵察するうちに配置もわかってきた。
そして朝のニュースで正午に会見をすると流れた2時間後、山道から大きなトラックが数台でてきている。ナオミ刑事達が追跡を始めている。

虎徹は道路をまっすぐ通り抜けようと、姿勢を少し前に倒した。

アードウルフの密猟者は背中から長銃を抜き、いきなり撃って来た。

バーン!

虎徹は身をかがめた。
後ろに乗っていたヴァルの額にガキーン!弾く音がした。

「ヴァル殿!!」

「ヒューマノイドだから平気だも〜ん。」ヴァルの額に弾痕がついた。

虎徹は鞘だけを抜き、あと50m、疾走する。

アードウルフはガードレールに隠れ、リロード中。

ヴァルが構えた。「スピリット!」
ライオンは目が紫色のグラデーションになり、アードウルフに襲いかかった。

アードウルフは慌てて立ち上がった瞬間、虎徹に鞘で側頭部を殴られ気絶した。

バコーン!
ブォーン。

虎徹とヴァルはそのままバイクで走り去った。ライオンも荒野に走り去っていった。

ナオミ刑事からのコール。
「焦ったわ!今日はどれくらいで次の見張りがくるか、このまま待機。協力ありがとう!後はこちらで追跡する。」

⭐️

ブラストは地雷原の南で実験の準備をしていた。ブラストは調達した機材が届いてから、1週間で機器を組み上げた。

クラウンは実験の手伝いをしている。クラウンと研究員達は捕まえたバッタを数種類放った。

ブラストはバッタの種類毎の追跡ドローンを放つ。

レッド、イエロー、ブラック、カーキのバッタは縦横無尽に飛び回った。

ブラストはドローンとは別のコントローラのスイッチを入れた。
「バーニングデスロード、始動!」

砂の上で小さなタイヤが回り、ボックス型、円盤型の複数のマシンが動き出す。複数のセンサーとドローンの情報を感知し、お互いを避け合い、バッタが上を通過する時、火柱が上がる。

害のないカーキのバッタ以外、70%の撃退率だった。ブラストは悔しそうに唇を噛んだ。「次はどこまで追跡して、自動で戻ってくるかこのまま実験続けまーす。」

みなから「OK!」の返事が一斉に聞こえる。

そこに警察に追われた密猟者のトラックが一台、向かって来た。

ナオミ刑事からコール。「現在、複数のトラックが南に分散して逃走中。討伐対象者です。実験を辞めて、避難して下さい。ギルドにはそちらに向かった一台に応援要請お願いします。」

ブラストは舌打ちして、コントローラで半数のマシンを非難させ、向かってくる1台のトラックに半数のマシンを仕向けた。

火柱の道が何本もでき、密猟者のトラックを追い込む。マシンは動き回り、道を狭め、マシンの上を通過するトラックに徐々に火の手が回った。

クラウンや研究員達は息を飲んで見守った。
トラックのエンジンルームに引火し、炎上しながら転倒した。

運転手が車から慌て出て、逃げ出す。追いかけて来た警察ロボのティーザーガンで取り押さえられた。クラウンとブラスト、研究員達も実験用に用意していた消化器で消化活動を行なった。

バーニングデスロードの実験は中止となった。クラウンはブラストをなぐさめた。「バッタ以外も撃退したね。すごいよ。」

ブラストは苦笑いした。「もうすぐ、ハニ達来るし、片付けて中継みますか。後で改良版つーくろ。」

⭐️

お昼の会見が始まった。

クラウン、ブラスト、ハニ、虎徹、ヴァル、チョコ、ゴーストはランチを食べながらディスプレイを見ている。スノーがちらちら映るたびに、みなニコニコしたり、指をさして嬉しそうだ。同行しているイノセント刑事は緊張気味だ。

会見から1時間経ち、最後にサインをする為にスノーが机に着いて、羽根ペンを取った。

その時、会場がざわつき始めた。カメラが会場の入り口を向く。体は青く短い毛に覆われ、頭から背をシルバーの毛が覆う。ゴツい手に長い爪のハニーアナグマ族が武装して乱入して来た。

司会をしていたアナウンサーは言った。「あれは窃盗団のスカルノック3でしょうか?!」

skull knock3はアナウンサーを睨み雄叫びを上げた。「ウラー!!」雷弾をスノーの背面に投げ入れた。バチバチバチバチ!青い稲妻が会場に走った。振り返ったスノーはそのまま机に倒れ、銃を抜いたばかりのイノセント刑事も倒れ、会場にうめき声が次々にあがった。

みなが倒れる中、skull knock3は爪で協定書を引っ掻き破り、カメラに近づく。skull knock3は協定書を丸めて食べた。
グチャグチャ、音を立てて食べる様がアップで生中継された。

窃盗団達はスノーを担ぎ上げ、連れ去ってしまった。

倒れたアナウンサーからマイクを奪い取り、skull knock3はカメラ目線で言った。「おい!ギルド!かかって来い!返り討ちにしてやる。こいつをアニマルケージにぶち込んでやるよ!」マイクを投げつけた。ボーン!マイクが鳴った。

生中継の画面がサバンナのライブカメラに切り替わった。

⭐️

一緒に見ていた、ハニや研究員達は悲鳴をあげ、他の者達は絶句した。

「何アイツ、、スカル?」クラウンはディスプレイを出したり、消したりパニックで誤操作から抜け出せない。

「スノーが拐われた。」ブラストは呟いて、ディスプレイを出し、GPSでスノーが今どこにいるのかを見た。「クラウン、落ち着け!追うぞ。」

虎徹がディスプレイを指した。「とんでもないスピードで移動している。こちらに向かっていると言う事は、根城に戻る気か。」

「このスピードはヘリだよね?ボクらも、ヘリで向かう?キャンピングカー?」ヴァルも動揺が隠せない。

「ナオミ刑事がもう向かってる。私達も急ぎましょ。絶対、奪還!」ハニはログで状況を見ている。

立ち上がって向かおうとした時、クラウンは呼び止めた。「ブラストは残って、お願い。」

「なんでだよ!時間ねーぞ。」

「それはわかってる。けど、ブラストは状況わかるまで、ここに居て。とっておきだから、アニマルケージだから、砦の配置は頭に入ってるから。」クラウンは無茶苦茶にしゃべった。

「何言ってっかわかんねーよ!」ブラストは強い口調で言った。

「2人とも落ち着いて!」ハニは2人の間に入った。

「拙者もブラスト殿には何かの時に、動ける様にして欲しい。まずは先行して向かおう。」虎徹はバイクのエンジンをかけた。

ヴァルが大きな声で話した。「落ち着こうよ!マップを見る限り、時間的余裕はあと10分ある。こっちの方が根城に近い。この時間は貴重だ。クラウン、計画があるなら落ち着いて話してよ。」

「うん。わかった。」クラウンは自分の考えを出来るだけ簡潔に話した。

8分後。

みなで話し合えた。

「上手く言えなくてごめん。」クラウンが言うと「オレもキレてごめん。」クラウンとブラストは出発前にがっちり握手した。

虎徹はバイクで出発し、クラウンとハニ、チョコとゴーストはカエサルで悪党の根城、エーデルワイス砦に向かった。

⭐️

エーデルワイス砦。

アニマルケージにスノーはぶち込まれ、気絶したままだ。照りつける日差しが体の水分を奪っていく。

⭐️

続く。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する