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トレモロ 3巻 3章 8話



討伐の翌日。

プロテア砦。
救護室。

討伐の際にマダラデビルの毒爪を受けたのはブレイズ、スノー、虎徹だった。

ブレイズ、虎徹はベッドで寝ている。ポレポレは毒消し薬を塗り込んだ湿布を貼り替えている。

ギャレットがお見舞いに来た。
「あれ?スノーくんは?もう治ったの?!」

「ああ。彼は水で洗って何度か毒消し液で洗い流したら、即効で治った。バギーの弁償に行くってエイムス達と野菜をてんこ盛り持ってったよ。モロクリアンってタフな事。」ポレポレは腰に手を当てて言った。

「これお見舞いね。虎徹くん少し食べるかい?」ギャレットはミニトマトが入ったバスケットを持って来た。

「頂きます。」虎徹はかすれた声で返事した。
ギャレットはバスケットからカラフルなミニトマトを一掴みして流し台で洗い、ガラスの器に入れた。虎徹のベッドの脇に座って、虎徹の頭の下に枕をもう一つ入れた。
「はい。」ギャレットはオレンジ色のミニトマトを虎徹の口元に運んだ。

虎徹はゆっくり噛んで食べた。「美味しいです。」

ギャレットは微笑んで、虎徹に少しずつミニトマトを食べさせながら、ポレポレと会話を続けた。「滅びた街、結局、競売にかけられるって聞いた?エイムスが競り落とすってやる気だしちゃってるんだよね。」

「聞いてないよ。今朝、保安官がステーションまでの道の安全が確保されたってチラシを掲示板に貼っていったよ。それでエイムスが久しぶりに外で馬車に乗りたいからってスノー達を送って行ったんだ。」ポレポレは手を洗い、ミニトマトを洗って食べた。

「今朝、保安官から、プロテア砦も競売に名乗り出てくれると嬉しいって言われて、、その理由が、昨日の今日なのにもう名乗りをあげたのがスタンリー一家の代理人だかららしい。」ギャレットが言った。

「マッチポンプじゃねーか。んふー。」ブレイズはゆっくり体を伸ばしながら起きた。

「ブレイズ起きた?」ギャレットは目覚めたブレイズを見た。

「そもそも何十年も前にスタンリー一家のどいつだったか、テロリスト達を引き入れた張本人だろ。それを競売で買い上げるだなんて。」ブレイズは口を開けて、ポレポレにミニトマトをせがんだ。

「略奪なんかで飯食ってる輩は四男のアナン・スタンリーだよ。」ポレポレはブレイズの口の前で黄色いミニトマトを動かしていたずらしている。

「あー!早くくれ。ぱく!エイムスがやるって言うならやるんだろーよ。ジュル。」ブレイズは飲み込むと、次を催促するように口を開けた。

「元気になったじゃないか、自分でお食べ。また後で薬を塗りに来る。」ポレポレはブレイズのお腹の上にミニトマトを置いて立ち去った。

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翌々日。

ブレイズも虎徹もすっかり元気になった。

今日から滅びた街の片付けが始まった。
地元の保安官達、警察官達に加え、ハンターからはエイムス、オースティン、ギルドのみなも片付けに参加した。

保安官数人が挨拶に来た。
「討伐ご苦労様でした。これでステーションからプロテア砦の道が安全かつ楽になりました。」

年長の髭の保安官は言った。
「エイムスさん、ようやくご自宅のエリアを取り戻せて良かったですね。自宅に帰られるんですか?」

「いや、プロテア砦にこれからも住むよ。落ち着いたら、自宅もぼちぼち片付けるつもり。」エイムスは髪を束ねて言った。

「そうですか。今日は皆さん安全に気をつけて片付けましょう。」

保安官達は掃除道具をトラックの荷台から下ろし始めた。

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ブラストが朽ちた建物の周りを片付けていると、農耕機の魔改造に使っていたガレージを見つけた。

色々と使えそうなジャンクパーツが山の様にある。片付けからいつのまにか物色に変わり、ブラストは箱いっぱいになるまで回収した。

ブラストは重たくなった箱を持って、近くにいる保安官に聞いた。

「このジャンクパーツもらっていい?」

「競売で勝ったらいいですよ。」

近くにいたオースティンが口を挟んだ。「いいじゃん。どうせ廃棄するんでしょ?」

「そういう決まりなので。」保安官はバツが悪そうに言う。

「あっそ。じゃ、勝ったらこれもらうから、ブラスト、この箱取っておこう。」

オースティンはデカデカと箱に「オースティン!」とサインした。

「ありがとう!」ブラストは微笑んだ。

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虎徹はカートを引きながら、頭蓋骨を拾う。柵や塀、建物の高い所にも頭蓋骨を吊るしてあり、虎徹はパワーを使って高い所の頭蓋骨も回収した。カートは次第に満杯になり、ずっしり重くなった。虎徹はカートを警察官の元まで運んだ。

警察官が持って来ている
DNA鑑定ボックスの前にカートをつけた。

警察官達が次々にベルトコンベアに頭蓋骨を乗せて行く。

虎徹は水分補給しながら、はじかれる頭蓋骨が気になった。虎徹は警察官に聞いた。「はじかれているのは身元不明者ですか?」

「まあ、それもあるけど、火葬だったり、火で焼かれてると、すぐには鑑定結果はでないから、署に持ち帰って、精密鑑定機で3日かけて鑑定するんだ。殆どが遺族の元へ帰るよ。」

虎徹は安心して水をグビグビ飲んだ。

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ヴァルはブルドーザー3台をパワーで操り、瓦礫を集める。

ハニはパワーを使って塔の瓦礫の山を持ち上げ、トラックに積む。

クラウンとスノーは細かい瓦礫を一輪車で運びながら競い合っている。

ハニは休憩に水分補給しながら競い合う2人を見て笑った。

チョコとゴーストはヘルメットを被り、塔の瓦礫の中に入って行った。骨を咥えて出て来た犬達はクラウンとスノーを追いかけた。

「うわっ!ビックリしたー!骨でてきた。」クラウンはチョコから骨を受け取った。
ゴーストもスノーに骨を渡した。
「シシッ。全部拾って鑑定しよーぜー。」
スノーが空の一輪車を押しながら走り出すと、犬達も追いかけ、クラウンも一輪車を押して追いかけた。

クラウンはハニに手を振って言った。「骨でてきたから、ハニもうちょっと休憩してて〜。」

ハニはOKのサインをして手を振った。

瓦礫の中から犬達は骨を拾い、クラウンとスノーは大きな外壁の塊をどかした。

一輪車には一体分程の骨が集まった。

クラウンが合図するとハニは瓦礫の撤去を再開した。

クラウンとスノーは一輪車を押し、犬達と中門の外にでた。

虎徹が休憩している。
スノーが虎徹に手をあげた。「塔からも骨が出て来た。」

警察官に一輪車を渡し、骨がベルトコンベアに流れて行く。クラウン、スノー、虎徹、犬達が出口で待っている。

鑑定が終わり、ひとまとめにされ、ラベルが貼られて出て来た。

クラウンはラベルの名前を見て驚いた。

「えっ?!見て!アナン・スタンリーだって!」

スノーと虎徹は驚いた。

警察官達に知らせると警察官達も驚いた。警察官達は保安官を呼び、近くいたエイムスやオースティン、ブラストも騒ぎを聞きつけ、DNA鑑定ボックスの前に集まった。

騒めく中、保安官、警察官は報告の連絡を入れ、骨をスタンリー一家への引渡しはしないなど確認している。

犯人はピストルプルーフじゃないかと警察官達は口々に言った。

髭の保安官がみなに話し出した。
「みなさん落ち着きましょう。みなさんのお察しの通り、犯人はピストルプルーフの可能性が高い。私がまだ警察官をしていた頃、マダラデビルのテロリストの調書を取った事があります。」

1人の警察官が言った。
「当時の話を聞きたいです。」
みなうなずいた。

髭の保安官が語る。
「当時、アナンが襲った農園にピストルプルーフはいた。孤児で農園の下働きをしていたらしい。テロリストに連れて行かれて、一緒に行動する内にナンバー2の座に上りつめた。その頃には分け前で揉めたり、やり方が気に入らないと喧嘩する様になった。7年前のある日、2人が略奪先で大喧嘩したんだ。ピストルプルーフがアナンを裏切って殺したってテロリストの仲間内の噂になっていたが、アナンの死体は見つけられずにいた。あの話は本当だったんだんだな。その後、アナンを見たって話も聞いたが、スタンリー一家はどれがどいつかなんてわかりゃしないしな。」

「競売に参加したのは、アナンの遺骨の回収が目的か、、ただの買収か。」
警察官は顎に手を置きつぶやいた。

他の警察官達が犬達を撫でた。「よく見つけたな!」保安官、警察官に大手柄を褒められ、犬達はシッポを大きく振った。

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4章に続く。

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