近頃の和風ファンタジーでは、能動的な意思を持つ女性主人公が確実に増えてきた。ただ守られる存在ではなく、大切な人を自分の手で守りたいと願う彼女たちの姿が描かれている。守りたいと思う気持ちは、決して男性だけのものではない。女性もまた、自分が信じる相手を守り抜きたいと強く願うのだ。 政治の争いや戦乱の渦に巻き込まれようとも、男たちが築いた秩序に飲み込まれるのではなく、女性ならではの視点と柔軟な立ち回りで新たな道を切り開いていく。その強さは、決して“男勝り”という単純な記号ではなく、恐れや弱さを抱えながらも、それでも誰かを守ろうとする静かな芯の強さだ。 和風ファンタジーの舞台は古い因習や階級制度が色濃く、女性の役割が制限されがちだ。だからこそ、彼女たちが踏み出す一歩は物語を大きく動かす。守られる姫ではなく、共に戦い、共に生きたいと願う彼女たちの想いを、ぜひ感じ取ってもらいたい。
不遇な扱いを受け育ってきた楓子はある日、屋敷にやってきた陰陽師・賀茂利憲から入内した妹・桜子が病に伏せっていると聞き、会わせて欲しいと頼み込み……。
男装し、陰陽生となった楓子は利憲と一緒に桜子の呪いの正体を暴いていく――。
親からの愛情を感じられずに生きてきた利憲と楓子の少しずつ信頼を育んでいく関係もいい! いいのだけれど、さらにそこに利憲の悪友である遊び人な斉彬が絡んできて三人の三角関係が繰り広げられます! この斉彬がとてもいい! いわゆる当て馬! どう考えても当て馬! 絶対に結ばれることはないとわかっているけれど、男だと思っている楓子にドキドキしてしまったり、実は女だとわかるとグイグイ迫ったりと、利憲が落ち着いているからか余計にソワソワしている斉彬が愛おしい!笑
桜子の呪いは解けたのか、そしてその犯人はいったい誰だったのか。果たして三人の恋はどう帰結するのか。結末を是非ご一読いただきたいです。
( 守られるのではなく守りたい! 男性の中で戦う強い女性主人公たち 4選/文=望月くらげ)
八朔五十槻は十五歳にして皇国陸軍少尉として活躍する異能の使い手。誰もが一目置く忠勇双全の少年将校――しかし、その正体が少女であることを知る者はごくわずかだ。そんな彼女が大人の軍人たちに混ざり、禍隠と呼ばれる怪異と戦っていく。
この物語の魅力は、もちろん男装少女の華麗な活躍にある。だがそれ以上に、キャラクターたちの濃さと掛け合いの楽しさが圧倒的! 個性的な上司や先輩にいじられ、BL疑惑をかけられ、ついには親衛隊まで誕生してしまう五十槻。潜入先の女子校では嫌がらせから命の危機まで盛りだくさんだが、五十槻の天然ぶりがすべてを軽やかに笑いへと変えていく。
しんどい展開ですらコメディとして消化してしまうテンポの良さは、一度読み始めると本当に手が止まらない。
男装少女が好きな人はもちろん、キャラクターの成長や日常のコメディ感を味わいたい読者にも強くおすすめしたい作品です!
( 守られるのではなく守りたい! 男性の中で戦う強い女性主人公たち 4選/文=望月くらげ)
退魔師である母をあやかしに殺された片桐紫乃は、旧日本国があやかしに破れ、退魔師という職がなくなった今も、あやかしを憎み、斬り続けていた。
そんな紫乃に命じられたのは、あやかしの棟梁である茜のもとへの嫁入りだった――。
幼なじみである茜、母を殺した茜。憎しみだけでは割り切れない感情を抱えながらも、少しずつ茜に心を開いていく様子が丁寧に描かれていくとともに、少しずつ気になるキーワードがちりばめられている。
母の死や退魔剣に宿った狐についてなど、この先の展開がきになるものの、なによりもけんカップルなふたりの関係性にときめける。文句を言いながらも茜を頼る紫乃に、面倒くさそうにしながらも紫乃を守る茜。そんな二人を尊く思いながら見守り続けてほしい。
ちなみに筆者の推しは、健気に紫乃の世話をする、ちっちゃな狐(300歳)の樹くん。あまりの可愛らしさにキュンキュンすること間違いなし!
( 守られるのではなく守りたい! 男性の中で戦う強い女性主人公たち 4選/文=望月くらげ)
主人公・コノハは弓の名手。天皇陛下より功績をたたえられ、大王家の新しい従者として抜擢される。そんなコノハに第一皇子・建比古が強烈な一目惚れをするところから、物語ははじまる。建比古の真っ直ぐな思いは、見ていても愛おしく、つい応援したくなってしまう。
急展開で始まった二人の関係は、静かにゆっくりと時間をかけ距離を縮めていく。大事件が起きるわけでも、派手なアクションがあるわけでもない。けれど、二人の関係が深まっていく様子に気づけば見入ってしまう。従者として使えるコノハと皇子として国を背負い、弟である皇太子を支える建比古。本来であれば主従関係であるはずの二人がお互いを求め合い、寄り添うようにして愛を育んでいく。
感情の変化を丁寧に描く、静かな恋を求める人にオススメの作品です。
( 守られるのではなく守りたい! 男性の中で戦う強い女性主人公たち 4選/文=望月くらげ)