言葉でつむぐ創作祭をテーマに6月2日から開催中のナツガタリ’25。バラエティ豊かな5つのコンテストの中から、本日は「角川学園ミステリー&ホラー小説コンテスト」の応募作を6作品ご紹介します。
学園ミステリー部門からは、謎の人物と過去の事件をめぐるモキュメンタリー風の物語、タロット占いをヒントに事件を解決する青春物語、幽霊が出ると噂の図書館で起こる不可解な出来事の謎を解き明かす物語の3作品。
学園ホラー部門からは、学校に閉じ込められた状態で怪現象に遭遇する物語、人形たちで構成される奇妙な学級を舞台にした物語、骸骨姿の死者が主人公というユニークな設定の物語の3作品です。
「ナツガタリ'25」では「ナツガタリミッション」というキャンペーンを実施中です。作品投稿やレビューなどのミッションで得られるポイントの順位に応じて、プレゼントをGETできる企画です。読書を楽しむ方のための「読者ルート」もありますので、ぜひご参加ください!
※本特集は各コンテストの選考とは関係ありません。
奇妙な伝言メッセージを受け取った紀藤宗也。
『そろそろ思い出してよ。ヤスイトクオ』
この謎の人物を巡って物語は綴られていく。新聞記者の五十嵐慎哉の取材という形式で、紀藤宗也の中学時代に関わる人々の口から、一見関連性がないかに思われる過去の事件が語られる。
真相が明かされていくほどに絡まっていた糸が解け、やがては謎の発端である名前を綴り出す。
そのロジックが解き明かされた時、読者は膝を打つだろう。
現実の大震災を背景に構築された緻密なプロットが光る、作者渾身のミステリー作品である。
とにかく、「一筋縄ではいかない」物語です。
舞台は学校。主人公たちの通う学校が、突如「霧」に覆われる。響き渡る「かごめかごめ」の唄。そして十数人が学校に囚われたまま出られなくなる。
いじめの被害者だった「綾香」がどうもこの怪現象には絡んでいる可能性がある。
そんな中で、次々と残虐な方法で命を落としていく生徒たち。
一体、何が起こっているのか?
この物語は読み進むにつれて、どんどんイメージが変遷していくのが何よりも面白いです。
冒頭からの展開に関しては、「学校自体が異界に転移する」というような雰囲気があり、PSゲームの「女神異聞録ペルソナ」や楳津かずお「漂流教室」のような方向性の作品かな、という印象を持ちました。
それだけでも十分にワクワクする感じで、読者を十二分に引きつけます。
でも、まだその段階ですら、この作品は「本気」を出しきっていない。
謎めいた歌と共に起こる怪事。そして現出する阿鼻叫喚の地獄絵図。なんというスプラッター! と読者は驚愕を新たにします。
それでも更なる奥行。「え? そう言う方向?」とサプライズが用意され、読み進めれば読み進めるほど、この物語に魅了されていくことになりました。
最初はとにかく、「いじめの加害者となった綾香が怨霊となり、この怪現象を引き起こして生徒たちに復讐していたのか」という想像が働きます。
でも、そんな単純に割り切れる話ではない。もっと緻密に練り込まれた「奥行」がどんどん見えてくることになります。
この現象の正体は? そもそも、この世界の正体は? 最終的に、彼らはどのような結末を迎えるのか。
最後の最後まで油断できない、緊迫感MAXの傑作ホラーです。
高校生になった主人公の成沢咲希ちゃんには、やりたいことが。
それはオカルト研究部に入って、タロット占いを学ぶこと。
去年高校の文化祭を訪れた際、タロット占いをしてもらったことで強く興味を持った咲希ちゃん。
自分もあんな風に、タロット占いができるようになりたい……と思っていたのに。
現在オカルト研究部は3年生の男子の部長しかおらず、しかも部長はオカルト研究部を廃部にするから新入部員は受け付けないとのこと。
けど、そんなこと言われても納得できません!
そこから咲希ちゃんと部長との、入部とオカルト研究部存続をかけた勝負が始まるのです!
オカルト研究部には学校内で発生する事件やトラブルなど、様々な相談が持ち込まれます。
それをタロット占いで、ビシッと解決!
オカルトパワーで何とかするのではなく、タロットカードから読み取れる情報で真実を探る、ミステリー要素の強い本作。
タロットカードの解説が非常に面白く、読んでいると事件の真相が気になると同時に、タロットカードの魅力に引き込まれていきます。
そんな魅力溢れるタロットカードを、やっぱりオカルト研究部で学びたいですよね。
はたして咲希ちゃんは入部して、オカルト研究部を存続させることができるのか?
タロットカードによる、謎解き青春ミステリー。
咲希ちゃんや部長たちの、苦くも尊い青春を、ご堪能ください。
自ら死を選んだはずの月子が目覚めると、そこは大好きだった少女、ひすいが作った人形たちの学級。
月子は人形たちと一緒に「理想の学級」を作ることになりますが...
悪夢のようで、どこか温かくもある不思議な学級生活。
月子はそこから抜け出すことができるのか、それとも。
怖いだけではなく切なくなるシーンもあり、感情が揺さぶられるホラー作品でした。
これからの季節に特におすすめです。
これぞ青春ミステリという本作。
爽やかで、丁寧に描きだされた高校生活の日々の奥に、
ひっそりと、沈むのは沈黙を強制された残酷か。
私立桜周高校に入学した藤崎弥生は、旧校舎の図書館で、一人の美しい青年と出会います。
それから、一枚の心をとらえて止まない絵画とも。
ここには、愛という感情がありました。
家族愛であり、兄弟愛であり、友愛であり、そして――恋でした。
ええ、いくつかの恋がありました。
ですが、果たしてその恋は、本当に真っすぐで純粋な思いによって支えられたものだったのでしょうか?
人が人を思う形とは、決して一様ではありません。
美しいままであれた恋もあれば、
これから育まれてゆく恋もある。
行く先を失った恋があれば、
泥の底に沈ませるような、恋とは呼べないような我欲も。
くり返します。
これぞ青春ミステリです。
彼等の日々に寄り添うようにして物語を追った先に、
あなたがどんな感情を抱くのか。
それはきっと、
神様ですら、きっと知らない。
主人公たちが巻き込まれたのは、集められた参加者全員が白骨死体という、デスゲームならぬデッドゲームとでも呼ぶべき、閉鎖空間での自分探しゲーム兼脱出ゲーム。特殊設定ミステリーであり、さらに、フーダニットというよりはワットダニット(?)、フームダニット(?)で、推理するべき内容も特殊であることから、先を予測できない面白さがある。
また、本作の魅力が現れているのはミステリー部分だけではない。結構な頻度で骸骨あるあるギャグが繰り出され、まじめでシリアスな本筋とのギャップにクスリとしてしまう。骸骨あるあるを言いたい人に特におすすめ。