昨日に続き、「ナツガタリ’25」運営セレクトgoodレビュー特集です。「カクヨム恋愛小説大賞」に応募された中から6作品をご紹介します。
 一つ目は恋愛にも絶望した国一番の錬丹術師がモフモフ神獣と出会う物語、二つ目は没落貴族の娘が愛を知らない陰陽師と契約結婚する物語、三つ目は時間が巻き戻った人生で夫との絆を再び紡ぐ物語、四つ目はある日突然異世界に放り出された同級生の男女が世界の謎を解明する物語、五つ目は社畜のように働いていたキャリアウーマンが転生した異世界で魔道具師として成長する物語、最後は心が傷つき声が出なくなった少女とかつての幼馴染みの再会から始まる物語。
 「ナツガタリ'25」では「ナツガタリミッション」というキャンペーンを実施中です。作品投稿やレビューなどのミッションで得られるポイントの順位に応じて、プレゼントをGETできる企画です。読書を楽しむ方のための「読者ルート」もありますので、ぜひご参加ください!
 ※本特集は各コンテストの選考とは関係ありません。

ピックアップ

男よりモフモフという女性錬丹術師のスローライフ!

  • ★★★ Excellent!!!

若くして国一番の錬丹術師となった〝桃花(タオファ)〟のもとにやって来るのは、下心満載の気持ち悪い男ばかり。
心身共に疲れていた桃花は、子猫を拾ったことをきっかけに都を離れてのんびり暮らすことにしました。

しかし、子猫はあっという間に巨大化し、ただの猫ではなかったことが判明。
なんと超絶美形に人化もできる神獣だったのです!

イケメンよりモフモフがいいという桃花のキャラが、とてもチャーミング。
気持ち悪い男たちを撃退する場面や、神獣や個性豊かな村人たちとの会話など、笑えるシーンが盛りだくさんの楽しいお話です。
まだ始まったばかりなので、ぜひ読んでみてください!

温度差のあるふたりの絶妙なコンビネーションが楽しい

  • ★★★ Excellent!!!

没落貴族の令嬢と侮るなかれ、この主人公、なかなかに生活力のあるたくましいヒロインです。そしてまっすぐすぎるほどまっすぐな性格。契約結婚をした冷淡な陰陽師との温度差のある会話はおもわずクスリと笑ってしまいます。小気味よい展開のなかで、端々に登場する和歌が女性としての星子の心情をしっとりと聞かせているのも効果的でした。少女のような無邪気さと猪突猛進な行動力が魅力的な主人公と、冷静を装いながらも子供っぽさが隠せない陰陽師との絶妙なコンビネーションをお楽しみください。

もういちどやり直せるとしたら、今度こそ自分の心に素直になろう

  • ★★★ Excellent!!!

ヒロインのシャロンは異国の土地で王子アルクトゥールスと結婚する。

夫婦の間に愛情はなく、それは白い結婚と割り切っていたシャロン。
慣れない環境での生活は彼女を殻に閉じ込めて、夫との距離が生まれてしまう。そして、凶刄から夫を守ったシャロンは死ぬ間際になってようやく夫の心を知って悔やみながらも、こう願う。

もう一度だけ、チャンスをくださいーーと。


冒頭はシャロンの死と後悔からはじまり、そして彼女が目覚めたとき、それは結婚前の故郷での花嫁選びの場面から物語がスタートします。


一度目の結婚では知らなかったこと、見えなかったもの、なかったことがシャロンの身に起こるのですが、それは回帰後の彼女がしっかり前を向いて自分の人生を歩もうとしているから。


異国の土地へと嫁いでいく自身の運命を受け止めて、二回目は夫と共に生きようとするシャロンの姿はとても素敵ですし、あたたかな気持ちになります。


そして彼女の夫となるアルクトゥールス。

彼は少し不器用でありながらも、真摯にシャロンに向き合ってくれます。こうした夫の一面が見られるのも、回帰後ということもあって、シャロンの心に余裕が生まれたためかもしれません。



夫婦というには初々しく、けれども少しずつ距離を縮めていく二人の結婚ストーリー。
まだ物語の途中ですが、そっと見守っていきたい作品です。

一風変わった異世界ファンタジーをアナタに

  • ★★★ Excellent!!!

 ミチルとケイタ。
 幼馴染の三十五歳、ともに独身。
 
 二人が転移した異世界は、地球にも似た世界。
 最先端のテクノロジーがないかわり、魔法が――――あるものの、大っぴらにはできません。

 便利なのに、どうして?
 これが本作最大のテーマとなっております。

 特筆すべきは設定の上手さ。
 異世界なのに言葉が通じるなど、転移系のお話にはお約束といっていい事項がありますよね。
 それらをご都合主義にせず、ちゃんとストーリーに落とし込んでいる形は、よくある〇〇モノとは一線を画します。

 こういう必然性のある構成、好きです。

 しっかり練られているのは設定だけでなく、随所に張られた伏線も。
 あらすじにもある通り、後半に一気に集約していきます。
 
 なんで知ってるかって?
 そりゃあ、私も転生者だからですよ。
 
 ……冗談はともかく、クライマックスには期待あれ。
 捻りのある展開が待っていることでしょう。

あの日の涙が、水を生む魔道具になるまで

  • ★★★ Excellent!!!

 過労死した社畜OLが異世界で“魔道具師”としてやり直す物語――その設定だけでも心を惹かれますが、本作『魔道具師マリエルのやり直し生活』の魅力は、静かな優しさと情緒の機微に満ちた描写にあります。水を生み出す製水機や車椅子など、魔道具を通じて誰かの役に立ちたいというマリエルの姿勢は、まるで丁寧に入れたお茶のように、読む者の心をじんわり温めてくれます。

 とりわけ、「自分のお客様」から初めての依頼を受けた場面では、過去の痛みを抱えながらも一歩踏み出そうとする彼女の芯の強さが眩しく、胸がじんと熱くなりました。淡い感情に揺れる恋の予感も、あくまで繊細で、そこにあるのは“ときめき”ではなく、“赦し”と“希望”なのかもしれません。

 これは、静けさの中に灯る希望の光をたどる、心の再生の物語です。

声を失った少女は、少年と共に前を向く。温かく、優しい物語。

  • ★★★ Excellent!!!

主人公の音羽は、心因性失声症を患う少女。
過去の経験で言葉を失った少女は、クラスで囁かれる心無い言葉にも言い返せず、下を向く生活を続けていました。
そこに現れた転校生、澪。彼は周りの好奇の目に怯むことなく音羽に声をかけ、関わってきます。そんな彼に惹かれて少しずつ前に向かい歩き出そうとする音羽。
二人の姿はやがてクラスメートの行動をも変えていきます。
二人の友人になろうとする人、傍観者でい続けたいじめに対して声を上げ始める人。
少しずつ、少しずつ変わっていきます。
この物語は、下を向いていた少女が前を向いて歩きだす物語、そして切ない恋の物語。
ぜひ皆さんに読んでいただきたい作品です。