概要
世界を殺しても、お前と飯が食いたい
潰れた定食屋の料理人・イツキが異世界に召喚された。「勇者」として。
剣は振れない。魔法適性ゼロ。持っているのは出刃包丁一本。
北の荒野で出会ったのは、「災厄」と呼ばれる男だった。
山を三つ割る力を持ちながら、何日も飯を食わず白い岩の上に倒れている。銀灰色の髪。青紫の瞳。「誰の世話にもならない」と言い切る口で——イツキの握り飯を、一粒も残さなかった。
一食ごとに男の体が変わっていく。指先が温かくなる。声から掠れが消える。器の縁を指で拭って、最後の一滴を舐め取る。飯のときだけ、この男のガードが落ちる。
だが美味い飯を作るほど、大地が枯れていた。
俺の飯がこいつを生かしている。俺の飯がこの世界を殺している。
——それでも、この男に食わせたい。
出刃包丁と舌だけを頼りに、どの世界にも属さない場
剣は振れない。魔法適性ゼロ。持っているのは出刃包丁一本。
北の荒野で出会ったのは、「災厄」と呼ばれる男だった。
山を三つ割る力を持ちながら、何日も飯を食わず白い岩の上に倒れている。銀灰色の髪。青紫の瞳。「誰の世話にもならない」と言い切る口で——イツキの握り飯を、一粒も残さなかった。
一食ごとに男の体が変わっていく。指先が温かくなる。声から掠れが消える。器の縁を指で拭って、最後の一滴を舐め取る。飯のときだけ、この男のガードが落ちる。
だが美味い飯を作るほど、大地が枯れていた。
俺の飯がこいつを生かしている。俺の飯がこの世界を殺している。
——それでも、この男に食わせたい。
出刃包丁と舌だけを頼りに、どの世界にも属さない場