主人公が何も特別なことをしていないのがいい。大人として普通のことなのに、16歳がやると周囲には異常にかっこよく映る。このギャップだけで話が回る。設定の勝利。
卵がゆのシーンが好き。吐いた翌朝に母親がラップをかけて置いてくれている。37歳の一人暮らしでは絶対にない光景。親のありがたみを20年越しに感じるという感情が、卵と出汁の匂いで伝わってくる。こういう何気ない食事の描写に、作者の体温を感じる。
翠との距離の詰め方が自然。呼び方の確認から始まる関係が、読者には新しい友情に見えるけど、主人公にとっては20年ぶりの再会。この温度差がじんわり来る。
三輪さんの発言に主人公が内心ヒヤッとする場面、笑えるのに切ない。おっさんであることがバレそうでバレない綱渡りが、読んでいて楽しい。
まだ序盤しか読めていないので、続きも読ませていただきます。