イツキは潰れた定食屋の店主で、召喚時に唯一持っていたのは十五年使い込んだ出刃包丁のみである。召喚先の広間に漂う「不味い飯の匂い」から素材の良さと調理の失敗を嗅ぎ分けるなど、料理人としての鋭い感性が描写されている。山を割るほどの「災厄」討伐を託される状況下でも、空腹という根源的な欲求を抱えるリアリティと料理への情熱が交錯する異色の勇者譚である。グルメファンタジーや、職人気質な主人公の活躍を好む読者におすすめできる。