感覚のすべてを文字にしようとしています。言語の外の感覚を、自分が感じたままを文字にしてすっかり書いてしまおうとしています。そのために理解が追い付かないです。でもだからいいのだとも感じています。自分のぜんぶをありのまま伝えることに価値があるのだと感じています。言葉って不完全で、どんなすごい作家でも心の中のぜんぶを書くことはできないです。書く人がどうではなく言葉の限界だからです。でも限界に挑むことって大切。この物語は確かに言葉の限界に向かおうとしています。おすすめです。
街の隅にある橋の下を舞台に、現実と幻想が溶け合う感覚的な筆致で綴られる物語。カフェオレや口紅の付いたペットボトルといった日常の断片が、自己を喪失し再構築する異界への入り口となる設定が独創的だ。「白地図は自由帳」といった哲学的な対話を通じて、不完全な生を肯定する結末が印象深く、灰色の世界観と対比される春の色彩が、読む者の感性に強く訴えかける。抽象的・詩的な表現を好む読者。自己の内面を見つめ直したい人におすすめできる。
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