新しいミラクル、そしてすてきな友だち
ぱぁ……っ。
真っ白な光がまばゆく輝いて、今にもあたりを包みこもうとしていた不気味な光をかき消していきました。
そして、その中から。
「やっと<門>が開いたノコ!」
聞き覚えのある口調で叫びながら、一匹の不思議な生き物が姿を現したのです。
「あれは、ヒトデさん?」
自分のピンチも忘れてたずねたわたしに、ツチノコが返事してくれました。
「ヒトデじゃないノコ。あれはホシノコだノコ」
「ホシノコ? それって」
「そうノコ。魔法の力を持つ子に悪者と戦う力を貸す、ツチノコの仲間だノコ」
ピンチも忘れてそんな話をしてるわたしたちをちらりと見ると、ヒトデ、いえホシノコはお化けさんに向き直りました。
「さあ。キミには力があるノコ。今こそそれを解き放つときだノコ。これを受け取るノコ」
腕、でしょうか。とにかく五カ所の尖ったうちの一本を器用に動かして、ホシノコはお化けさんに宝石を渡しました。
いえ、それは宝石ではなく。
『心のかけら』。
人間に人間らしい暮らしと心を取り戻させる。
純粋な心を持つ人の願いをかなえる。
そのほかに、『心のかけら』の役目がひとつ。
魔法の力を持つ存在を、悪者と戦う<ミラクル>として目覚めさせる……!
『心のかけら』を受け取ったお化けさんの表情が変わりました。
”分かります……力が、満ちていきます……これは、わたしが生きていた時の……そして、言葉が……言葉が……!”
「唱えるノコ。今キミの心に浮かんできた、そのままを」
”ゆ……”
ホシノコにうながされるまま、お化けさんは唱えました。奇跡を起こす、キーワードを。
「ゆうれい△ミラクル、リザレクション!」
真っ白な光が、お化けさんの体を包んでいきます。
とてもきれいなその光に包まれるように、お化けさんはその姿を変えていきました。
青白かった肌は、みずみずしい元気な色に。
夜の闇に溶けこんでいた手足は、はっきりと形を持って。
白い着物は和風の雰囲気を残しつつも、魔法の力を発揮するためにふさわしい、華やかな形に。
そして、誕生しました。
新しい<ミラクル>、ゆうれい△ミラクルが。
https://kakuyomu.jp/users/Asuka_Tsubasa/news/822139843392474531
”ヌウ、みらくるガフタリダト?”
二人になったわたしたちを見て、化け物はあきらかに動揺しています。
傷ついたわたしをかばって化け物との間に立ちはだかり、ゆうれい△ミラクルは凛と声を上げました。
「煩悩にまみれ、ひとを人とも思わぬ恥知らずな者たちよ。この私が正しき道へ導いてさしあげましょう」
「ゆうれい△ミラクル、大丈夫? あの化け物、かなり強いけれど」
「なんとかできると思います。私なら」
わたしの問いに自信たっぷりに答えて、ゆうれい△ミラクルはひとつだけわたしにお願いしてきました。
「ただ、少し相手の動きを止める必要があります。お願いできますか?」
「うん、わかった。やってみる!」
わたしは化け物の注意をあえて引きつけるようにゆうれい△ミラクルの前に立つと、魔法の杖を振りかざしました。
「システム・スリープ!」
杖から放たれた黄色い光は、化け物の手前でいったん包みこむように広がり、そして全身に絡みつくようにその動きを封じこめました。
――最大の技<サニタライズ>がまったく通用しなかった化け物を、目くらましの技<スリープ>で止めることができた。
実はこの時わたしは、そのことに何の疑問も持ちませんでした。
そう、魔法の力は信じる力。心の底まで信じぬくことで、魔法は完璧な効果をあらわすのです。これも後でツチノコが言うには「迷いながら打った<サニタライズ>よりは、確実に上だったノコ」ですって。
魔法が完璧に決まった原因はもうひとつありますけど……化け物の側に立ってみて、今までのおさらいをしてみてくださいね?
「今よ、ゆうれい△ミラクル!」
「はい!」
ゆうれい△ミラクルは両手を大きく天にかざして、お寺の鐘を呼び出しました。魔法の鐘は狙いたがわず化け物の上に落っこちて、ずぅん……とその大きな体を中に閉じこめてしまいました。
「煩悩退散! ジョヤベル・インパクト!」
”ごおぉ~~~ん……”
ゆうれい△ミラクルが鐘をつくと、重く低く、それていて心が洗われるような音色があたりに響きわたりました。
「相手は二人でしたね。もう一回!」
”ごおぉ~~~ん……”
心を鎮ませる鐘の音は、長く余韻を引いて、そしてそれがやむと同時に、魔法で呼び出された鐘は溶けるようにもとの世界に帰って行きました。
あとに残されたのは、もう化け物なんかではなく。
悪い魔法が解けた、工場長さんと議員さん。
ただ、安らかに眠るその顔には、このお寺に来た時の欲にまみれた表情はみじんもなくて。
たぶん、この先工場は変わっていくのでしょう。
もう外人さんを安いお給料でこき使うことなんてなく。
もちろん、お寺をむりやり立ち退きさせるなんてまねもしない。
「終わった、ね」
わたしはゆうれい△ミラクルに笑いかけながら、変身を解きました。
「そうですね。ただ、和尚さまが」
やっぱり変身を解きながら、お化けさんが振りかえった先には。
あ、このお坊さんの顔は……。
でもわたしたちがなにか言う前に、お坊さんはにっこりと笑うと、ゆっくり本堂の中に戻って行きました。
「わしはなにも見なかった。うん、なにも見なかったよ」
……うん、そうですね。
魔法がほんとうにこの世界にあるってことは、ふつうの人には秘密にしておきましょう。
「……さて、ゆうれい△ミラクル。キミも魔法の力で変身したからには、かなえたい願いがあるはずノコ」
わたしたちがただ笑いあっていると、ヒトデさん、もといホシノコがそう切り出してきました。
「死んだ人の願いって言うと、やっぱり生き返りたいの?」
わたしの問いに、お化けさんは笑って首を振りました。
「私は、ただ自然の決まりに従います。人とは限らず、動物でも草木でも、ふたたびこの世に生を受ける、その定めに」
ひとこと言うと、お化けさんは少し悲しそうな顔になって、あたりを見わたしました。
「しかし、今のこの世にはふたたび憎しみと無理解が広がっています。私がこの身で経験した、悲惨な戦争の時代のように。私はそれを止めたい」
「人間を戦争へかり立てるのも、やつらのたくらみのひとつノコ。それを止めさせてくれるなら、ツチノコたちは大歓迎ノコ」
ツチノコとホシノコが、声をそろえてにっこり笑いました。
「じゃあ、これからいっしょに『心のかけら』を集めてくれるんだ。よろしくね。えっと」
ここでようやく、わたしはお化けさんの名前をまだ聞いていなかったことに気づきました。
「きずなです。十和田きずな」
「わたしは、ミラクル」
――こうして、わたしに新しいたのもしい味方、いえ、とてもすてきな友だちができたのです。
魔法のロボット からくり*ミラクル BOOT! 飛鳥つばさ @Asuka_Tsubasa
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