1万文字弱の短編ホラーです。短いですが物語の構成が巧みで、言葉の作りが丁寧で、主人公の心理描写も共感できる自然体。物語のテーマは、ここではホラーとして作り上げられていますが、そうではなく普通に幸せを描くこともできるもの。そういうテーマで、存外扱うのが難しいのではと思いました。それを1万文字のなかに、作品への思いを込め、技術をちりばめて、できあがったホラー短編。展開が簡単には読めない文章、暴力的な言葉を用いず、怖いぞと威圧的に押しつけるところもなく、それでも結末に向けて確実に引っ張られました。積み上がったいやな予感と、喪失感を伴う結末。読了後に感じたこの感覚はホラー短編なら素晴らしいものだ、と感服しました。最後まで読むのにそう時間はかかりません。是非あなたも読んでみてください。