あとがき

 本作をお読みいただき、誠にありがとうございました。


 まずは、物語の舞台として勝手にお名前を拝借いたしました吉野、金峯山寺、そして大峯山(西の覗き)、みたらい渓谷、名水「ごろごろ水」、そして美味しいジビエ、柿の葉寿司に関わる全ての関係者の皆様に、心より深くお詫び申し上げます。


 伝統ある聖地や行場を、あろうことか「筋肉の更生施設」として描き、回転式豆射出機ガトリングガンなる不届きな兵器まで登場させてしまったこと、少しばかりの反省はしております。……が、後悔は一切しておりません。


 実は、私のルーツは奈良県天川村にあります。


 私の親類縁者、とりわけ今は亡き祖父をはじめ、家系には大峯山の「先達せんだつ」を務めた者が複数名おります。


 私自身は女性であり、年に数回、祖父の家を訪れる身であったため修行の経験はありません。女人禁制の伝統を守る大峯山において、女人結界の門の前で、厳しい修行へと向かう祖父の背中をただ静かに見送るのが常でした。


 あの時見送った、法螺貝を携えた先達たちの凛とした背中。その「強さ」への敬愛の念が、どういうわけか脳内で「筋肉バルク」という要素に変換され、今回のような物語として結実してしまいました。これもまた、吉野・天川の持つ「どんな者でも受け入れ、変容させる」という慈悲深いエネルギーの成せる業(?)だと信じております。


 最後になりますが、もしこの物語を読んで天川村を訪れたくなった方がいらっしゃいましたら、ぜひ正しく楽しんでください。



 実際の現地では、プロテインシェイカーのシャカシャカ音や「キレてるよ!」「肩に小さい重機載ってるのかい!」という掛け声は響いておりません。聞こえてくるのは、心洗われる法螺貝の音色と、温かく穏やかな奥吉野方言です。


 みたらい渓谷は滝行用の場所ではなく、息を呑むほど美しい観光名所です。


 旅館街ではカラコロと心地よい下駄の音が響きますが、五十キロの鉄下駄を履いて爆走している修行者は一人も居りません。


 聖地を間違った、あるいは危険なトレーニングの場にしないよう、重ねてお願い申し上げマッスル。万が一にもそんな不敬を働けば、この世から永遠に出禁を喰らうことになります。




 今度、私が帰郷した際には、親戚一同を含む集落の住民全員からこっぴどく説教を喰らってくる所存です。その時は、大腿四頭筋をフルに使い、見事なスライディング土下座を披露してまいります。


 皆様に弥栄いやさかあれ。




 そして、じいちゃんゴメン。



2026年1月 川北 詩歩


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鬼の筋肉鎮魂歌(マッスル・レクイエム) 川北 詩歩 @24pureemotion

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