第10話 天界は今日も回っている
天界の朝は、
音もなく
始まる。
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光が
満ち、
流れ、
整う。
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レーシャは、
受付所の
定位置に
立っていた。
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昨日と
同じ場所。
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けれど、
昨日とは
違う気持ちで。
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魂が、
戻ってくる。
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静かに、
淡く、
それぞれの
重さを
抱えて。
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ユーファは、
端末を
操作しながら
淡々と
報告する。
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「本日予定数、
通常通りです」
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「例外処理の
申請は、
現時点では
ありません」
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レーシャは、
小さく
うなずいた。
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「ありがとう」
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それだけの
やり取り。
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だが、
レーシャの
視線は、
魂一つ一つを
確かに
追っていた。
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サフィーネが、
後ろから
声をかける。
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「……調子は?」
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レーシャは、
振り返って
答える。
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「忙しいです」
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それは、
正直な
返事だった。
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サフィーネは、
鼻で
小さく
笑う。
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「それなら
問題ないわ」
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「暇だと、
余計なことを
考える」
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レーシャは、
少しだけ
笑った。
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その通り
だと思った。
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ミレイシアは、
書類を
まとめながら
言う。
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「判断速度が、
少し
上がっていますね」
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「迷いが
減った」
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レーシャは、
否定も
肯定も
しなかった。
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迷いは、
消えた
わけではない。
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ただ、
抱え方を
知った
だけだ。
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そのとき、
一つの魂が
受付所に
現れた。
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弱く、
小さな
光。
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レーシャの
胸が、
微かに
ざわめく。
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「……この魂」
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ユーファが、
即座に
情報を
展開する。
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「判断は
容易です」
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「異世界適性、
高」
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「介入不要」
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レーシャは、
魂を
見つめた。
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確かに、
定型。
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迷う
必要は
ない。
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それでも、
一瞬だけ
立ち止まる。
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そして、
決めた。
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「異世界へ」
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光が、
道を
示す。
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魂は、
静かに
流れていく。
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何事も
なかった
かのように。
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だが、
レーシャの
胸の奥で、
小さく
確かな
感触が
残った。
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選んだ。
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逃げずに。
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クレアティスの
声が、
どこからともなく
響く。
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「天界は、
今日も
回っています」
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レーシャは、
空を
見上げた。
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広く、
高く、
終わりの
見えない
天界。
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ここでは、
奇跡は
日常で、
感情は
例外だ。
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それでも、
自分は
ここにいる。
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女神として。
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レーシャは、
ふと
思う。
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もし、
完璧な
判断だけを
下す存在が
必要なら。
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自分である
必要は
ない。
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でも、
迷い、
悩み、
それでも
選ぶ存在が
必要なら。
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自分は、
ここに
立っていて
いい。
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サフィーネが、
小声で
言った。
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「……あんた、
変わったわね」
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レーシャは、
首を
かしげる。
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「そうですか?」
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「ええ」
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「前より
厄介よ」
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レーシャは、
少し
困った
笑みを
浮かべた。
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魂は、
今日も
戻り、
旅立つ。
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異世界へ。
現代へ。
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天界は、
滞らない。
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それでも、
その流れの
一角で。
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一人の
女神が、
考えながら
立っている。
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それが、
レーシャ。
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女神であり、
迷う者。
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天界は、
今日も
回っている。
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だが、
ほんの少しだけ。
---
昨日とは
違う形で。
---
――完――
魂の選択者――レーシャの天界日誌 塩塚 和人 @shiotsuka_kazuto123
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