第9話 女神レーシャの答え
天界は、
いつもと変わらない
光に包まれていた。
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それでも、
レーシャの胸の内は
違っていた。
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受付所の机に、
一枚の光の板が
浮かんでいる。
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【自己選択転生
事後影響報告】
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ユーファが、
静かに説明を
続けていた。
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「選択後の魂は、
異世界で
安定しています」
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「精神崩壊や、
世界干渉の
兆候は
ありません」
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レーシャは、
安堵と、
まだ残る不安を
同時に感じていた。
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「……よかった」
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だが、
その言葉は
小さかった。
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サフィーネは、
腕を組んだまま
険しい顔を
崩さない。
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「前例を
作った責任は、
軽くない」
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「あなたは、
自覚してる?」
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レーシャは、
うなずいた。
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「はい」
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「それでも、
あの魂には
必要でした」
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サフィーネは、
深く
ため息をついた。
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「……厄介な
女神ね」
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その言葉には、
怒りよりも
諦めが
滲んでいた。
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そのとき。
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空間が、
静かに
震えた。
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最上位女神、
クレアティスが
現れる。
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「結論を
聞きましょう」
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レーシャは、
一歩
前に出た。
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「あなたは、
何を
優先しましたか」
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問いは、
単純だった。
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レーシャは、
一瞬
目を閉じる。
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そして、
はっきりと
答えた。
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「魂の
未来です」
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「幸福か、
不幸か、
ではありません」
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「その魂が、
自分の人生を
自分のものだと
思えるか」
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会議室に、
静寂が
落ちる。
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ミレイシアが、
ゆっくりと
口を開いた。
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「それは、
管理者の
判断基準としては
曖昧です」
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レーシャは、
うなずいた。
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「はい」
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「でも、
管理だけなら
わたしでなくても
できます」
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その言葉に、
ユーファの目が
わずかに
揺れた。
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「わたしは、
女神として」
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声が、
少しだけ
震える。
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「魂の
選択を
奪いたくない」
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「奪うなら、
その理由を
知っていたい」
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サフィーネは、
小さく
目を伏せた。
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「……それは、
重いわよ」
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「背負いきれない
日も来る」
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レーシャは、
まっすぐ
答える。
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「それでも」
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「背負います」
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その瞬間。
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クレアティスの
表情が、
わずかに
変わった。
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ほんの、
微かな
微笑。
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「それが、
あなたの
答えですね」
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レーシャは、
うなずいた。
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「はい」
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クレアティスは、
全員を
見渡す。
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「天界は、
規則で
成り立っています」
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「しかし、
規則は
目的ではない」
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「目的は、
世界を
続かせること」
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「魂を、
流し続けること」
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レーシャを
見つめる。
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「あなたの
判断は、
危うい」
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「ですが」
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一拍、
間を置く。
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「天界に
今、
必要です」
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サフィーネが、
思わず
舌打ちした。
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「……聞こえなかった
ことに
したいわね」
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フィオネアは、
優しく
笑った。
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「育ちましたね」
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ユーファは、
何も言わず、
静かに
うなずいた。
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レーシャは、
胸に
手を当てる。
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答えは、
完璧ではない。
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それでも、
逃げずに
選んだ。
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それが、
女神レーシャの
答えだった。
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その日以降、
レーシャの
業務記録には
一つの注記が
加えられた。
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【例外判断
許容範囲
拡張対象】
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危険でもあり、
希望でもある
印。
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天界の空は、
変わらず
広がっている。
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魂は、
今日も
戻ってくる。
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異世界へ。
現代へ。
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レーシャは、
その流れの中で
立ち続ける。
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自分の答えを、
抱えたまま。
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