手書きだからこその、ゆっくりと、丁寧に紡がれていく感じ。
「手紙」で綴られる文章には、メールなどにはない味わいが確かにある。そこには予測変換もないし、ちゃんと平らな台となるものがないと綺麗に線を引くこともできない。
でも、手書きする文字には、一文字一文字にその人の「心」が籠りやすい。
細田美玲は美少女として評判で、顔目当てで告白されることが多かった。だから羽崎敏行から告白された時にも同じような理由だろうと断るつもりでいた。
でも、羽崎が美玲を好きになったのは、「字が綺麗だったから」であり、手紙のやり取りをしたいと言われる。それに意外性を覚えて美玲は告白を受け入れる。
その後、二人は手紙のやり取りをし、美玲は着実に手書きの文字の良さも知り、羽崎との絆も着実に紡がれていくようになる。
でも、この世界ではそんな二人が平穏に暮らすことは難しく……。
やがて、美玲と羽崎のもとに訪れる事態。美玲のもとに届けられた一通の手紙。
ラストシーンがとにかく切ないです。タイトルにもあり、冒頭で羽崎がこだわりを持っていた紙ヒコーキ。その小道具の使われ方を見た時に、ジーンと心に響くものがありました。
利便性から遠ざかるからこそ、強い想いが籠る手紙。しっとりとした静かな空気の中で紡がれる二人の物語がとても切なく、深い余韻を残してくれました。
2030年、第三次世界大戦が起こり、日本も巻き込まれていた。
そんな最中だと言うのに、細田さんは何人もの男子生徒から告白され嫌になっている。顔が綺麗でスタイルもいい、外見ばかり見ていられるのも嫌なものだ。
そんな折、クラスメイトの羽崎君から屋上に呼び出された。彼は細田さんの文字が美しかったから、手紙のやりとりをしたいと言う。了承し、お互いに手紙のやりとりをしていくふたりだったが――。
羽崎君が屋上で紙ヒコーキを飛ばすのは、空を飛びたい代替行為だと言うセリフにまずやられました。
ふたりが文通をしている時には、羽崎君は字が上手じゃないけれど、一生懸命に書いているというのがわかり、だんだん羽崎君に惹かれていく細田さん。
ふたりを包む時間が美しくて、切なくなりました。
ふたりがどんな行く末を辿るのかはご自身の目でお確かめ下さい。
私は泣きそうになりました。
羽崎君の純粋な想い。細田さんの純粋な想い。
フェンスを越えてどこまでも届いて行きますように――。そう願わずにいられません。