第30話 選ばれた刃
夜明け前。
港町は、
静まり返っていた。
風だけが、
波止場を、
撫でる。
さなえは、
窓辺に、
立っていた。
背中の、
傷は、
まだ、
痛む。
だが、
心は、
澄んでいた。
「……不思議ですね」
レーシャが、
傍に、
浮かぶ。
「何が?」
「剣を、
抜かなかった、
昨日より」
「今日の、
ほうが、
覚悟が、
はっきり、
しています」
レーシャは、
微笑んだ。
「それが、
選ぶ、
ということ」
通信。
桐生の、
声。
「緊急だ」
「反剣神派が、
動いた」
「場所は、
中東部、
内陸都市」
「ダンジョンを、
意図的に、
刺激した、
形跡あり」
「……罠、
ですね」
「間違いない」
現地。
砂塵。
熱。
都市の、
中心に、
巨大な、
裂け目。
周囲には、
逃げ遅れた、
人々。
空には、
無人機。
撮影。
生中継。
「完全に、
舞台を、
用意してる」
レーシャが、
低く、
言う。
魔物は、
大型。
重装甲。
現地軍の、
攻撃が、
効かない。
司令官が、
叫ぶ。
「剣神!
判断を!」
世界中の、
目が、
向く。
剣を、
抜けば、
被害は、
抑えられる。
だが、
また、
叩かれる。
抜かなければ、
街が、
壊れる。
――選べ。
さなえは、
深く、
息を、
吸った。
「……私は」
剣に、
手を、
伸ばす。
「逃げない」
鞘が、
鳴る。
剣が、
抜かれた。
その、
瞬間。
空気が、
変わる。
レーシャの、
声が、
重なる。
「……思い出しなさい」
「あなたは、
何の、
ために、
剣を、
持つの」
「守る、
ためです」
さなえは、
踏み込んだ。
一閃。
音は、
なかった。
だが、
巨大な、
魔物が、
静かに、
崩れる。
衝撃は、
地面の、
奥に、
流れ、
街を、
避けた。
――制御。
剣神の、
本質。
覚醒。
レーシャが、
目を、
見開く。
「……完全に、
目覚めたわね」
裂け目が、
収束する。
砂塵が、
晴れる。
人々は、
無事。
静寂。
次に、
拍手。
小さく、
だが、
確かに。
無人機は、
その、
全てを、
映していた。
切り取れない、
事実。
被害ゼロ。
剣神が、
剣を、
選んだ、
理由。
その夜。
各国の、
速報。
「剣神、
覚醒」
「都市、
完全防衛」
「被害、
確認されず」
反剣神派は、
沈黙した。
否定が、
できない。
ホテル。
さなえは、
剣を、
鞘に、
納める。
「……これが、
私の、
答えです」
レーシャが、
頷く。
「選ばれた、
刃」
「振るう、
時を、
自分で、
決める」
「それが、
剣神」
窓の外。
夜明け。
新しい、
光。
三橋さなえは、
立っていた。
剣を、
持つ者として。
言葉を、
知った者として。
そして――
選ぶ、
覚悟を、
得た、
剣神として。
戦いは、
終わらない。
だが、
もう、
迷わない。
剣は、
恐怖では、
ない。
希望だ。
そのことを、
世界に、
示した、
一夜だった。
転生剣神、少女の身体で世界と対話する 塩塚 和人 @shiotsuka_kazuto123
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