第29話 剣を抜けぬ戦場
朝。
空は、
晴れていた。
だが、
画面の、
中は、
荒れている。
「剣神、
市民被害の、
責任を、
どう取る」
「英雄神話、
ついに、
崩壊か」
見出しが、
踊る。
コメント欄は、
さらに、
荒い。
期待。
失望。
怒り。
さなえは、
端末を、
閉じた。
「……慣れませんね」
レーシャが、
苦笑する。
「慣れたら、
終わりよ」
「心が、
鈍る」
桐生から、
連絡が、
入る。
「次の、
案件だ」
「場所は、
南欧、
港湾都市」
「ダンジョン、
兆候あり」
「だが……
条件が、
ある」
嫌な、
予感。
「剣神の、
武器使用は、
控えること」
「現地政府が、
強く、
要請している」
沈黙。
「……剣を、
使うな、
という、
ことですか」
「正確には、
映像に、
残るな、
だ」
港。
潮の、
匂い。
人々は、
避難中。
だが、
完全では、
ない。
路地に、
人影。
ダンジョンの、
裂け目は、
倉庫街に、
あった。
さなえは、
剣を、
鞘に、
納めたまま、
進む。
「……手が、
疼く」
レーシャが、
囁く。
「抜いたら、
負け、
よ」
魔物が、
現れる。
小型。
数匹。
周囲に、
市民。
剣は、
使えない。
さなえは、
走った。
蹴る。
投げる。
体当たり。
剣神の、
身体能力が、
それを、
可能に、
する。
だが、
効率は、
悪い。
時間が、
かかる。
悲鳴。
別方向。
さなえは、
振り返る。
倒れた、
老人。
魔物が、
迫る。
――抜け。
心が、
叫ぶ。
だが、
抜けば、
映像が、
残る。
そして、
叩かれる。
さなえは、
歯を、
食いしばり、
走った。
身体を、
滑り込ませ、
老人を、
突き飛ばす。
衝撃。
背中に、
爪。
血が、
滲む。
魔物は、
倒れた。
だが、
剣では、
ない。
「……間に、
合った」
老人は、
無事。
だが、
周囲の、
視線は、
冷たい。
「なぜ、
剣を、
使わない」
「本気じゃ、
ない」
「演技だ」
言葉が、
突き刺さる。
午後。
状況は、
悪化。
裂け目が、
広がる。
大型の、
影。
現地軍が、
動く。
重火器。
だが、
市街地。
被害は、
避けられない。
司令官が、
叫ぶ。
「剣神!
どうする!」
全ての、
視線が、
集まる。
剣は、
まだ、
鞘の、
中。
さなえは、
一歩、
前に、
出た。
「……撤退を、
支援します」
「剣は、
使いません」
司令官が、
驚く。
「正気か!」
「はい」
「だから、
信じて、
ください」
さなえは、
走る。
魔物の、
注意を、
引く。
叩く。
避ける。
導く。
剣神の、
力を、
制御し、
使う。
時間は、
かかる。
だが、
人は、
逃げ切った。
最後。
裂け目が、
閉じる。
魔物は、
消えた。
夜。
港は、
静か。
被害は、
最小。
映像には、
剣神が、
剣を、
抜かずに、
走る姿。
評価は、
割れた。
「弱い」
「覚悟が、
ある」
どちらも、
真実。
ホテル。
さなえは、
背中の、
傷を、
見下ろす。
「……剣を、
抜けない、
戦場」
レーシャが、
頷く。
「でも、
守った」
「それが、
答え」
さなえは、
剣に、
手を、
置く。
「……次は、
抜くべき、
時に、
抜きます」
「誰に、
どう、
言われても」
剣神の、
戦場は、
形を、
変えた。
剣を、
振るう、
場所。
振るわない、
場所。
その、
両方を、
知った。
だからこそ、
次の、
一手は――
重い。
そして、
避けられない。
嵐は、
まだ、
終わらない。
三橋さなえは、
剣神として、
立ち続ける。
剣を、
抜けぬ、
戦場の、
ただ、
中央で。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます