けっせい
健太郎に連れてこられた店は、なんというか不思議な感じだった。
剣や斧、槍に始まり色んな武器はもちろん、各種鎧や盾などの防具もあるかと思いきや、へんな宝玉?や書物、薬瓶まで扱っている。
「なんだろうな? 俺、この雰囲気知ってる。でも、それが何なのか思い出せない」
「……リサイクルショップじゃない、個人経営の? 取り扱ってる品物は不思議だけど、店の雰囲気はそっくりだよ」
俺と同じ違和感を覚えてたのか、陽平は翼の言葉に指を鳴らす。
「それだ! この『そこになかったら無いですね』な在庫の薄い感じ!」
「実際、同じよ。ここの店主は探索者から物を買って、探索者に売っておるからな。ダンジョン産なだけで、ようするに古物商だ」
そう教えてくれた健太郎は、いかにも常連といった風だった。おそらく選抜組は、この店で装備を整えていたのだろう。
「……思ったより高いですね。もう少し金策を頑張っておくべきでした」
「というか高すぎねぇ?」
「こんなの、ぼったくりだよ!」
が、文句を言っていても始まらない。不承不承ながら俺と陽平は、予算に見合う鎧を物色することにした。
とにかく、まずは防具。素人の直感に過ぎなかったけれど、これは正解だと思う。
しかし、健太郎の言葉で、浅さに気づかさせられた。
「直人は、どのように戦うつもりだ?
いや『レンジャー』なら『戦士』や『騎士』のように重い鎧を身に纏っても戦えよう。だが、それだと隠密な動きはできなくなるぞ」
よほどに俺は、怪訝な顔だったのだろう。やや慌てた感じで健太郎は続けた。
「隠密な動き――忍び足や気配の感知などを駆使して戦うなら、あちらの柔らかそうなブーツが役に立つ。だが、それだと鎧武者としては戦えなくなる」
それで初めて俺は戦い方の選択が、
どころか、これは俺個人の話に留まらず、パーティ全体の話でも?
「こ、これは一般論であって、人それぞれにやり方もあるしな! 直人を悩ませて困らせようとした訳では――」
「いや参考になったよ、健太郎。先にスタイルというか、ようするに勝ちパターンを考えるべきだった。……少なくとも一つくらいは」
「だな。俺も脳死で選ぶところだったぜ」
畏まる健太郎に陽平と二人、礼を言っておく。
そして陽平は選びかけていた盾を戻し、武器を選びに行ったから、なにか思いついたのかも知れない。
俺は俺で健太郎の言葉を反芻し続けながらも、呪文書のコーナーから動かない翼と悟に声を掛ける。
「どうだ? 買うべきものはあったか?」
「あった。けっこうある」
「ですが、一番安いのでも全予算を注ぎ込むようです」
……確かに高い。でも、その戯けた効果を考えたら、安いぐらいか?
「ボクは『火の矢』が欲しいんだけど……この値段じゃなぁ」
「私は『罠感知』の白魔法が急務と思いますが……全予算でも足りません」
「翼って攻撃魔法を覚えられるのか? 買ってから習得できませんでしたじゃ――」
「なんかね、もう不思議で仕方がないんだけど――
自分が使える呪文書は、見ただけで分かっちゃうんだ。ちょっと気持ち悪い」
しかし、その突拍子もない言葉は、疑う余地がなかった。
なんと俺も見ただけで『罠発見』や『罠感知』のスキルオーブ?とやらが使用可能と確信できてしまったからだ。
どうなってんだ、この世界は!? 滅茶苦茶すぎるだろう!
結局、俺達は陽平用の『両手斧』と『鎖帷子』、俺用に『堅い革鎧』と『柔らかいブーツ』しか買い足せなかった。
……翼と悟には、一発当てるまで待ってもらう他ない。
「まあ、これで最初の『強さ』を得るのには十分すぎるくらいだろう。
できる限りに俺がモンスターの注意を惹きつけるし――
数回限りとはいえ、悟が回復魔法を使える。そうそう事故は起きんはずだ」
「なんだ付き合い良いな、健太郎」
俺の混ぜっ返しへ、ニヤりと笑い返してきた。
「一飯の恩義があるからな。それを返すまでは、お前らに付き合わさせて貰おう」
どう誘おうか悩んでいたというのに、これでは一本取られたという他ない。やはり健太郎は、いい奴だ。
「ほら! 二人とも急いで! 色々と寄り道し過ぎて、時間ないんだから!」
「この街の宿屋は……アレだしな? ちゃちゃっと『強さ』を稼いで、暗くなる前に待機宿舎へ戻ろう」
翼と陽平は、まったくを以ってお気楽だ。そして悟も悟で、なにが楽しいのかニコニコとご機嫌だし。
分かってんのか? これから俺達は、一度は敗退したダンジョンへ再挑戦するんだぞ!?
「いいか? 『いのち大事に!』でいくぞ! 御安全こそ、最優先だからな!」
とりあえずネジを撒きなおそうとしたのに、不揃いで気の抜けた掛け声が返される。少しは合わせろよ!
……まあ、いいか。これくらい緩い方が、俺達らしい。
――――
次回、第9話『すこしさきのはなし、からのつづき』
1月20日 火曜日更新予定!
時系列はプロローグの直後へと戻り、いよいよ本格的に物語は緩く!
お気軽に☆評価、作品フォロー、💛応援のほど、よろしくお願いします
異世界らくえん curuss @curuss
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界らくえんの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます