ごにんめ

「その『強さ』だけどさ、何回も得られたりするの?」

「俺らっちってば、少し無茶して……こっちの先生に『強さ』を得るまで先に進むなって言われちまってんだ。でも、いまいち分かってなくてよ」

「その先生は正しいアドバイスをしてくれたと思う。このダンジョン?世界?では、何回でも『強さ』を得られるし――

 クラスを得た時と同じような高揚感を覚えるから、間違いようもない。そして一回だけでも『強さ』を得れば、かなり変わるはずだ」

 そう健太郎は教えてくれたものの、なぜか考え込んでしまった。

「どうした?」

「いや、なに……やはり『強さ』を喪ったから、この甲冑が重くなったのか、とな。どうやら『強さ』を得て、逆に慢心していたようだ」

 などと健太郎は反省していたけれど俺は、まったく共感できなかった。なんというか理不尽の方が勝る。

「まあ、とりあえず飯でも食えよ。半日も突っ伏してたら腹が減っただろ。ここは俺らの奢りだ」

「ありがたい! 空腹もそうだが、実は素寒貧でな! それで待機宿舎へ戻るところだったのよ! あそこなら飯ぐらいは食わせてもらえるからな」

 とりあえず撤退を決めた矢先の事故か。まさに踏んだり蹴ったりだ。

 同じような思いなのか陽平が、元気を出せよとばかり健太郎の肩へと手を置いたのをきりに――

 俺達は、やっと給仕された食事へと集中した。うかうかしてたら、食う分が無くなってしまう! 食事とは戦いだ!


 そして食卓が料理の残骸だらけとなった頃、優雅に御茶なんて啜りながら悟が会話を再開した。

「先ほどは魔王討伐軍へ合流といってましたが……となると健太郎は、選抜組のメンバーだったのですか?」

「うおッ!? マジかよッ!? 誰の!? 誰のパーティ!?」

 色めき立つ陽平に健太郎は、苦笑いを返す。選抜された奴らには、もう御馴染な応答だったのかもしれない。が――

「伊藤先輩のところだった」

 との返事に、重い沈黙が降りる。

 それは良くも悪くも学内では有名人の名前だ。……女子なら艶めき、男は萎える感じの。

「うへぇ……伊藤先輩のところかぁ。ボクは、ちょっと嫌だなぁ」

「おい! 一応、先輩だぞ! それも選抜されても頑張ってくれてru――

 て、健太郎! お前が『可哀想なアイツ』だったのかよ!?」

 その噂?あだ名?は、初耳だったが、なんとなくニュアンスは分かる。分かってしまった。

 女誑しの色男がパーティリーダーで、そのメンバーは取り巻きの女子ばかり。そんなパーティに混ぜられたら、さぞかし肩身が狭いに違いない。

「可哀想などとは……す、少し言い過ぎであろう! ま、まあ確かに……――

 なぜか絶妙に僚友への回復魔法が遅れたり――

 近すぎるぐらい味方側を通る魔法には肝を冷やしたが――

 噂されているような殺し合いは起きておらん! ……少なくとも、俺が叩きだされるまでは!」

 おい! もう今宵は、ここまでにしておけ! ギスギスした女同士のガチ喧嘩なんて、俺は聞きたくない!

 マイペースな悟すら、さすがにドン引きだ。

「なんだって、あんなパーティへ?」

「あれでも俺達を日本へ帰そうと頑張ってくれてる人達ぞ!? それに生徒会長殿から――

 絶対、盾職を一パーティに一人は入れたい。レア職でない『騎士』の君まで動員は心苦しくてならないけれど。

 とまで頼まれては、な?」

 もう分かった。健太郎は、いい奴だ。それでも頑張ったというのに、結局はハーレムの邪魔者と追放されてしまったのだろう。

「追い出されたことなんて気にするな! 伊藤先輩達には、健太郎の良さが分からなかったんだ。女子メンバーは、先輩のことしか目に入ってなかっただろうし。それだけの話だ。お前は悪くない」

 そう慰めて健太郎の肩へと手を置く。分かるぜ、お前の口惜しさが。

 同じ気持ちなのか陽平が、少し遅れて翼と悟も倣う。が――

「お、俺は追放なんてされてない! こっちから願い下げと、三くだり半を突き付けてやったのよ!」

 と顔を真っ赤にして喚き散らす。……まあいいか、そういうことにしといてやろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る