ギャルゲー主人公の友人なんだけど 主人公が呪言師で選択肢がバグってる

強炭酸

(――ここは、どこだ)


意識を取り戻した瞬間、俺は白一色の空間に立っていた。

床も、壁も、天井もない。ただ、どこまでも続く白。


「……俺、死んだのか?」


記憶を辿る。

俺の名前は鉄平てっぺい

最後の記憶は…。

交差点。信号。ブレーキ音。

そして、衝撃。


――そうだ。交通事故に遭った。


「あなたは前世で、不慮の事故により亡くなりました」


背後から、澄んだ声が響いた。

振り返ると、そこにはいかにもそれらしい姿の女性が立っていた。

神々しい光をまとい、優雅に微笑む。


異世界の女神、というやつだろう。


「転生するにあたり、あなたの『願い』を聞きましょう」


テンプレだな、と思った。

でも同時に、胸の奥がざわつく。


――どうせなら。


どうせ死んだのなら。


「……ハーレム主人公になりたいです」


自分で言っておいて、少し恥ずかしくなる。


「モテモテな人生を送らせてください」


情けない願いだ。

だが、女神は馬鹿にしたりしなかった。


「多くを望むのですね」


彼女は静かに頷く。


「では、そのための“試練”を与えましょう。

これは、あなたにお願いしたい、成功と報酬の『仕事』です。完遂した暁には、あなたの望む世界を約束します」


「おお……さすが女神様。お仕事頑張らせて頂きます。」


安堵しかけた、その瞬間。


「ただし」


女神の声が、ほんのわずか低くなる。


「途中で失敗した場合、あなたは転生できません。魂も、記憶も、完全に消滅します」


「……は?」


「あなたに課す試練はこうです」


淡々と、宣告される。


「あなたは『ギャルゲー世界の友人』として、十人の主人公をハッピーエンドに導きなさい」


――主人公、じゃない?


「恋の主役は、あなたではありません」


女神ははっきりと言った。


「あなたは“友人”です。助言し、支え、背中を押す役。十人全員をハッピーエンドに導ければ、転生は成功です」


「……失敗したら?」


「消滅です」


選択肢はなかった。


こうして、俺――鉄平の試練は始まった。


与えられた能力は『好感度ステータス』。

その時の主人公と、ヒロイン候補たちの頭上に、数値が浮かんで見える。


誰が誰をどう想っているのか。

今どの選択肢が正解なのか。


分かる。

見える。

だから、九人までは上手くいった。


『好感度ステータス』を駆使した、俺なりの完璧な立ち回りと助言。

修羅場の仲裁も、告白前の背中押しも、失恋後のフォローもやった。

友人代表として、結婚式のスピーチに呼ばれる未来まで想像できるほど、完璧な立ち回りだった。

あいつら、元気かな。

掴んだ幸せを逃すんじゃねえぞ。


――だが。


最後の十人目だけは、違った。


主人公の名は、白狼はくろ


長身。銀髪。赤い瞳。

誰がどう見ても絵になるイケメン。


ただし、彼は“呪言師”だった。


言葉に、強制力が宿る。

不用意な一言が、相手の人生を縛る。


そのせいで――


(……は?)


俺の視界に浮かぶはずの、選択肢ウィンドウ。


そこに何も表示されない。


バグだ。

完全に、終わってる。


「はい」も、「いいえ」もない。

選択肢そのものが、生成されない。


フラグは立たない。

好感度も、一切動かない。


最後の最後で、完全に詰んだ。


――どうする、俺。


女神様。

これ、本当にギャルゲーですか?

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2026年1月12日 14:00
2026年1月12日 17:00

ギャルゲー主人公の友人なんだけど 主人公が呪言師で選択肢がバグってる 強炭酸 @kyotan3non

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