Under the “X”ea-Party♪【5】
「惚気ってことは〜?」
「新しい恋?」
二人の人魚は彼女を挟んで茶化します。
「ええ、そうなの。ここに来てから、仲良くなったコなんだけどね」
「やるねぇ。でも、いつの間に?」
忙しくしていたのは皆同じはずです。
鰭に六角形を浮かべた人魚は、甘い夢を見ているように常にとろんとしている目をぱっちり見開きました。
「……最初の晩に、歓迎会があったじゃない?」
「あったあった~! もう一ヶ月くらい前になるんだ。早いね~」
「それでそれで?」
「歓迎会の一番最後に、あたしたちの国の人魚とこの国の人魚が自由にペアを組んで、踊る時間があったでしょ?」
「そういえば、踊ったねぇ。どんな人魚と躍ったかは…………もう覚えてないけど」
「も~。本当に衛兵サンにしか興味ないんだから!! うちもかすかにしか覚えてないけど!」
「それじゃあ、
「……まぁでも、覚えてないって事は、二人の相手はさっきの人みたいに感じの悪い人魚じゃなかったって事よね。安心したわ」
彼女は歓迎会の晩の出来事を思い返しました。
「「……確かに!」」
「あたしは、丁度そのペア決めの時にあぶれちゃってて……。困ってたら、誰かが肩をちょんちょんってつついてきたの。でも、振り返っても岩礁しかなくて」
「…………あのさ、怖い話じゃなくて恋の話で合ってる、よね?」
「そうだけど。いまの話に怖いところなんてあったかしら?」
「「自覚なし!?」」
「気のせいかと思って、前を向いたの。でも、もう一回肩をつつかれて、急いで振り返って……よく見たら、岩礁の隙間に人魚がいたの」
彼女は二人のツッコミを受け流し、話を続けます。
「あ〜! もしかしてシャイな人魚?」
「そうだったみたい。あたしは二回めで見つけられたけど、そのときも隠れる寸前だったから」
「どんな子? 岩に擬態するタイプかなぁ?」
「いいえ。白地に橙色の水玉模様があるコでね」
「へぇ。キミと色違いみたいだねぇ」
六角形の模様を浮かべた人魚は、黒地に水玉の人魚を向いて言いました。
「確かに〜! でも、派手さでは負けるんじゃないかな〜」
「二人とも華やかでいいと思うわ。貴女たちが並んだところ、見てみたいかも」
「それ、いいねぇ。だけど、その子はなんで自分からアクション起こしといて隠れちゃったの?」
「『自分は賑やかなところが好きじゃなくて、ダンス終わるまで出ていくつもりはなかったけど、寂しそうだったから話しかけた』って。もちろん、ちゃんと一緒に踊ってくれたわ」
「話しかけた……っていうか肩ツンだけど、優しい子だね~。会ってみたいかも!」
「そうなのよ」
「『相手がいないから』じゃないんだもんねぇ。私も会ってみたいなぁ」
「ね! 模様も気になるし!」
「じゃあ、いまから行く? すぐそこに隠れてると思うし」
薄橙に縞模様の人魚は、少し離れた岩礁を指しました。
「「すぐそこ?」」
「ええ。『そこ』ですらないくらい、近くかもね」
岩礁へ向かう彼女のあとを、二人の人魚が追いかけます。
「出会いの場所って、まさか…………」
「そう。ここ」
三人は、一分もしないうちに岩礁の前に到着しました。
「こんにちは。…………突然、ごめんなさいね。よかったら、一緒にお喋りしない?」
薄橙に縞模様の人魚が岩礁に向かって話しかけると、隙間からかわいらしい顔が覗きます。
「「わぁ……!!」」
「こんにちは……。あれ? 会う約束は……もっとあとじゃなかった……?」
突然の訪問に驚いているらしいその人魚は、
「そうなんだけど、待ちきれなくて。それと、この子たちも貴女に会いたいって言うから連れてきちゃった」
「…………わたしに? こ、こんにちは」
「「こんにちは!」」
二人が挨拶すると、恥ずかしがり屋の人魚は岩礁から出てきて、薄橙に縞模様の人魚に隠れるように抱き着きましたが……。
「もう、甘えん坊さんね」
顔の造形や印象を裏切る大きさの彼女は、まったくその身を隠せてはいませんでした。
「「かわいい……!」」
その光景にときめいた二人の人魚も、前から薄橙に縞模様の人魚にがばっと抱き着きます。
しばらくぎゅっと固まったままでいた体長も模様も違う四人は昔馴染みのようで、潮行く人魚たちに微笑ましい目を向けられていましたが、本人たちはただただ楽しいひとときを過ごしていたそうな。
<End>
Three of Teacups 片喰 一歌 @p-ch
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます