建築という切り口で文明の在るべき姿を語る
- ★★★ Excellent!!!
現役建築士の方の作品です(プロフィールより)。
登場人物は『私』と建築家の『加地』。二人は『携帯電話の電波も届かない山奥の野営地』でキャンプをしています。外は大いに嵐ですが、二人はテントの中でくつろいで会話を交わします。
『加地』は『建築の始まりは洞窟である』という文明史的な意見を述べ、洞窟は『引き算の建築』、テントは『足し算の建築』、そしてコンクリ-トで固めがちな現代建築を『引き算の建築』への回帰、と語ります。
そして、大規模地震などを前にした時の『引き算の建築』の弱さと、それに対するテント=『足し算の建築』の強さが語られます。
シェラカップに注がれるバーボン、アテのコンテチーズ。数十ミクロンのナイロンの向こう側で荒れ狂う嵐、仕事がデキる男の会話。ぜひ一読して、この世界に浸ってみてください。お勧めします。
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以下は著者さんのペンネームから私が推察したことですが、風を柔構造で受け流すテントを『足し算の建築』と呼ぶのであれば、槍鉋を復活させた西岡棟梁が修復した法隆寺五重塔なども『足し算の建築』なのかもしれません。そして、現代は『足し算の建築』から学ぶべきがたくさんあるのかもしれません(私は建築畑の人間ではありませんが、西岡棟梁の本は大好きです)。