酒が降った日

白川津 中々

◾️

「降酒確率は100%です。本日は本格的な酒日和となるでしょう」


 天気予報に狂喜乱舞。早速カッパを着用し外に出ると、同じく気の早い酒狂いどもが今か今かと待ち受けていた。


「スコッチがいいなぁ」


「いいやブランデーだね」


 楽しげな会話である。“アメダス"や"ひまわり"では何が降酒するか予測できない。それが楽しみでもあり落胆の原因になったりもする。前回シードルが降り注いだ時、隣の頑固オヤジが「こんな甘い酒が飲めるか」と大層ご立腹なまま喉を鳴らしていた。その後悪酔いしたのはいうまでもなく、オヤジに限らず全員が同じ末路を辿る結果となった。もちろん、私もである。オヤジではないが、やはり酒らしい酒の方が嬉しく、日本酒だと大変ありがたい。清酒はどれだけ飲んでも体に善いのだ(諸説あり)。


 さて、軒からポツリ、タンタン、トントン、パサパサとと音が聞こえてきた。待ちに待った酒雲前線の到来である。グラスとバケツは用意済み。今日は死ぬまで飲むぞという意気込みであるが、周りが薄赤色にぼやけているのに気がつく。嫌な予感が、頭を過る。


「あぁ、なんてこった。赤玉だよちくしょう」


 誰かの叫びが耳に入った。

 赤玉。赤玉かぁ……


 肌についた一雫を舐めると、甘い。確かに赤玉だ。ガバガバ飲むような酒ではない。好みでないため少しだけ残念ではあるが、酒は酒だし伝統のあるブランド。十分楽しめるだろう。バケツに貯まった分をガブリと一息。先程、嘘をついてしまった。ガバガバ飲めてしまう。


「こりゃ明日、会社には行けないな」


 楽しくなって滅多な独り言を落とす。いいのだ。どうせ明日は、社員一同潰れているのだから。

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酒が降った日 白川津 中々 @taka1212384

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