後編
宮小路君のこと、もっと知りたいな、仲良くなりたいな、と思っていたある日のこと。
この日も雨が強く降っていた。
学校が終わって、傘を差しながら下校して、途中でスーパーに寄ってから自宅へ向かっている時、通りがかった公園で、傘も差さずにずぶ濡れれになっている男の子がいるのを見た。
私と同じ学校の制服だった。
近づいてみると、なんと彼は宮小路君だった。
「どうしたの?」
と言って、持っていた傘の下に宮小路君を入れてあげた。
彼が私を鋭い目で見てくる。
「関係ないだろ、おまえには」
関係ない、ねえ……。
でも、五年前、関係ない私をあなたは救ってくれたんだけどな。
「そうだね、関係ないね、でも、傘も差さずにずぶ濡れになっている人を放ってはおけないよ」
「こんなことして、おまえになんのメリットがある」
「メリットなんてないかもしれない。でも、あなただって、何の得もないのに、昔、私を救ってくれたじゃない」
「何の話だ?」
「私、小さいころ、雨でずぶ濡れになっているときに、ある男の子に同じように救ってもらったことがあるの。その日からいつか私も同じような人がいたら同じことがしたいって思っていたんだ」
彼が私の顔をじっと見てくる。
そんなに見られるとちょっと恥ずかしい。
やがて、彼は「ああ」と何かを思い出したようにつぶやいて、朗らかに笑った。
「そうか、思い出した、そんなことあったなぁ、そうか、お前はあの時のやつか」
「うん、あのときのやつでした。ねぇ、よかったらさ、なにがあったか教えてくれない? あ、嫌ならべつにいいけど……」
そう言ったけど、彼は優しい顔で語ってくれた。
「実は、ちょっと前に両親が事故で死んでさ、今は叔父の家にやっかいになっているんだけど、うまく馴染めなくてさ、つい傘も差さずに家を飛び出してしまったんだ」
「そうだったんだ……ごめん、私にはどうにもできそうにないかな……」
「うん、わかってる、べつに期待してないから……」
そう言って、顔をうつむかせる彼に、私は言う。
「私ではその問題をとても解決できそうにないけど、でも、こうしてあなたを傘の下に入れてあげることはできる」
そう言った瞬間、宮小路くんが顔を上げて、大きく開いた目でこちらを見つめてくる。
「私もね、五年前、すごく辛かったんだ、でも、君がこんなかんじで傘の下に入れてくれて、すごく救われたの。どうかな、私は宮小路君の救いに、少しもならないかな……」
彼は首をゆっくりと左右に振った。
「そんなことない、ありがとう」
それはこの強い雨を跳ね返すんじゃないかと思うくらい、まぶしい笑顔だった。
それから、私と彼は雨が強く降る中、相合傘をして帰路を歩いた。
「宮小路君、今日はいい天気だよね」
「どこがだよ」
「いい天気だよ、だってこうして君と相合傘ができるんだもの」
強い雨と小さな優しさ 桜森よなが @yoshinosomei
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