第13話 管理できないものは、敵ではない。変数だ

 最初の違和感は、

 失敗だった。


 予定していた接触が、

 ことごとく空振りする。


「……おかしい」

 サイトは、

 モニターに映るログを見つめていた。

 能力者の目撃情報。

 接触予定時刻。


 どれも、

 数分のズレが生じている。

「偶然にしては、多すぎる」

 確率の問題じゃない。


 ――介入。

 誰かが、

 意図的に邪魔している。


『妨害者』

 心の奥で、

 サイコキラーが囁く。


『駒を奪われている』

「……まだ、奪われてはいない」

 サイトは、訂正する。


「繋がらなくなっているだけだ」

 だが――

 それが、致命的。


 管理は、

 繋がりが前提だから。


 サイトは、

 新しい映像を再生する。


 駅前のカメラ。

 倒れた一般人。


 その奥。

 ――一瞬だけ映った、

 少年の後ろ姿。


「……ユウキ」

 確信。

 だが、

 それだけじゃない。

 フレームを止める。


 別の角度。

 少女。

 不自然な立ち位置。


 さらに――

 屋根の上。

 誰かが、いない。


「複数」

 小さく、笑う。


「……チームか」

『排除するか?』

 サイコキラーが、

 淡々と提案する。


『早期に潰せば、効率は上がる』

 サイトは、首を振った。


「まだ」

「これは……

 観測する価値がある」

 目が、輝く。


「管理されない能力者が、

 どう動くか」

「興味深い」

 別の画面。


 能力者掲示板。

 以前は、

 自然に流れていた情報が――

 流れなくなっている。


「情報が、詰まってる」

 誰かが、

 先に接触している。


 そして――

 説得している。

 サイトは、

 軽く息を吐いた。


「やっぱり……

 アローンだ」

『あの詐欺師か』

 サイコキラーが、

 低く笑う。


『管理と詐術』

『相性は、最悪だ』

「……いい敵だ」

 サイトは、心底楽しそうだった。


「正面から壊さない」

「殴らない」

「流れを止める」

 分析が、終わる。


「目的は、

 “管理不能状態”の維持」

 そして――

 一番、厄介。


「彼らは、

 正義を掲げていない」

 サイトは、

 椅子から立ち上がる。


「これは……

 実験条件が変わった」

 ホワイトボードに、

 新しい文字を書く。


 【妨害者】


「排除対象ではない」

 下に、続ける。


 【観測対象】

「彼らが、

 どこまで崩せるか」

 ペンを置く。


「管理が、

 “管理されない側”に

 どこまで通用するか」

 笑みが、深くなる。


「次のフェーズに行こう」

 サイトは、

 スマホを操作する。


 新しい通知を、

 意図的に――

 ばら撒く。


 能力者限定。

 曖昧で、魅力的な情報。


 ――安全な居場所。

 ――理解者。

 ――力の使い方。


「さあ」

 小さく呟く。


「妨害してみろ」

 心の奥で、

 サイコキラーが、頷く。


『盤を、広げる』

『変数が増えれば、

 必ず誰かがミスをする』


 その頃。


『……来るな』

 アローンが、

 ユウキに警告する。


『彼は、

 こちらを“試す”』

 ユウキは、

 スマホの通知を見ていた。


 知らないアカウントからの、

 誘い。

「……撒き餌、か」

 でも。


 逃げられない。

 妨害者だと、

 バレた以上。


 戦いは、

 静かに一段階、深くなった。

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2026年1月11日 00:00
2026年1月12日 00:00

アローン ――雷に撃たれたいじめられっこの中で、歴史的詐欺師が目を覚ました イミハ @imia3341

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