第12話 正しさを止めるには、正面から殴らない

 夜。


 ユウキは、

 人気のない公園のベンチに座っていた。


 街灯が、白く地面を照らす。


 遠くで、救急車の音がまだ鳴っている。

「……俺、何もできなかった」

 声が、震えた。


 止めに行った。

 文句も言った。


 でも――

 それだけだった。


『違う』

 アローンが、即座に否定する。


『君は、“止める側”に立った』

『それだけで、十分な違いだ』

「……でも」

『でも、力が足りない』

 淡々。


 優しさも、慰めもない。

 だからこそ、現実だった。


「次は、どうする」

 ユウキは、聞いた。


「止めるって言っても……

 殴り合いじゃ、無理だろ」

『もちろん』

 アローンは、即答する。


『彼は、戦闘より

 構造を作るタイプだ』

『壊すには、

 構造を歪める必要がある』

 ユウキは、顔を上げる。


「……歪める?」

『情報』

 一言。


『彼の正しさは、

 “外から見えない”ことに依存している』

『だから――』

 少し、間を置く。


『見せる』

 その時。


「それ、賛成」

 声がした。


 暗がりから、

 制服の少女が現れる。


 コンビニで会った、

 優先順位上書きの能力者。


「……いつから?」

「最初から」

 淡々。


「あなた達、

 目立ちすぎ」

 続けて、

 別の影。


 梁に座っていた少年――

 確率操作。


「俺もいるよ」

 にやにや。

「面白そうじゃん」


 ユウキは、目を見開く。

「……なんで?」


「理由?」

 少年は、肩をすくめる。

「生き残りたいから」


 少女も頷く。

「管理されるの、嫌」

 それだけ。


『集まったな』

 アローンが、静かに言う。


『これが、最初の“陣営”だ』

 ユウキは、深呼吸する。


「……作戦を、立てよう」

 初めて、

 自分から言った。

 アローンが、

 前に出る。


 でも、今回は――

 完全には出ない。


「目的は、三つ」

 ユウキの口から、

 整理された言葉が出る。


「一つ。

 サイトの実験を止める」

「二つ。

 一般人を巻き込ませない」

「三つ」

 一拍。


「能力者を、

 “集められない状態”にする」

 少年が、目を輝かせる。


「三つ目、いいね」

「どうやるの?」

 少女が、即座に聞く。


 現実的だ。

「壊さない」

 ユウキは、答える。


「潰さない」

「……無意味にする」

 アローンが、補足する。


『管理には、

 “対象”が必要だ』

『対象が散らばれば、

 管理は破綻する』

「つまり」

 ユウキが、続ける。


「能力者同士を、

 繋げない」

「情報を遮断する」

「接触したら、

 俺たちが先に入る」

 少年が、笑う。

「割り込み役か」

「そう」

「私の役目は?」

 少女。

「守る」

 即答。


「誰かが狙われたら、

 優先順位を上書きする」

 少女は、少し考えて、頷いた。


「合理的」

 ユウキは、

 拳を握る。


「戦争は、しない」

「でも……

 実験は、させない」

 アローンの声が、

 心の奥で響く。


『君は、

 集める側より厄介だ』

『彼は、力を管理する』

『君は、流れを殺す』

 夜風が、吹いた。


 小さな集団。

 名前もない。


 でも――

 確実に、動き出した。

 正しさを止めるために。

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